"27枚目の真実" 第4話
「なぜ話してくれなかったんだ」
は失踪の数か、確かに変わっていた。夜も眠れないようで、ぼんやりしていることが増えていた。それなのに健は、の仕事に追われ、「丈夫」という言葉をそのまま信じてしまった。
その夜、健はの友である子に話をかけた。子は代からの親友だった。
「が最、何か言っていませんでしたか。おのこととか」
話の向こうで子はしばらく黙った。
「実は、1かほどにから話がありました。誰かに脅迫されているって。おを返さなければならないけれど、方法がないって」
健のが震えた。
「誰に脅迫されていたんですか」
「それは教えてくれませんでした。ただ、もうすぐ終わるから配しないでって」
その言葉も、のでが呟いた言葉と同じだった。
もうすぐ全部終わる。
は、何かを終わらせようとしていた。
健は再び帳をいた。
95。
「おを返さないと族にらせると言われた」
915。
「最に50万円を渡した。もう渡すおはない。あのはっていた。怖かった」
916。
「もう方法は1つしかない。証拠を集めなければ。警察に通報しなければ。そうすればこの悪は終わる」
健は机を拳で叩いた。
は詐欺に遭い、脅迫され、それでも1で証拠を集めようとしていた。
だから、カメラを持っていたのかもしれない。
広告
失踪当、彼女は誰かを撮ろうとしていたのかもしれない。
そうった瞬、健ので点と点がしずつ結ばれ始めた。
20002、警察はの失踪事件の捜査を事実打ち切った。
担当刑事は話で言った。
「申し訳ありません。これ以の捜査は困難です。防犯カメラの映像も鮮で、目撃証言もはっきりしません。借の状況から、奥様が自発に姿を消した能性もあります」
健は受話器を握りしめた。
「妻は逃げたんじゃありません。詐欺の被害者です」
「それは承しています。しかし証拠がありません」
話が切れた、健は壁にもたれ、に座り込んだ。
警察でさえ諦めてしまった。
を探すのは、自分しかいない。
健は探偵を雇った。田武という男を探してほしいと頼み、契約と帳を差しした。しかし1か、探偵は首を振った。
「痕跡が完全に消されています」
田の方は分からなかった。
そのにも、借の督促は続いた。健は父から譲り受けたを売る決をした。売却代は250万円だった。借を全て返すにはりなかったが、急はしのげた。
契約に印を押す、健は涙を流した。
父親は静かに肩にを置いた。
「おは何も悪くない」
だが健は、自分を責め続けた。
もっとく気づいていれば。
もっとく聞いていれば。
広告
は1で苦しまずに済んだのではないか。
所の噂は消えなかった。は借を作って男と逃げた。そう言うもいた。健はりをみ込み続けた。
「はそんなじゃない」
その言葉だけが、健を支えていた。
は流れた。
両親はくなった。父は16に、母は11にこの世をった。2とも、を見つけられないまま目を閉じた。
2025、が消えてから26が経っていた。
健は61歳になっていた。髪にはいものが混じり、顔にはい皺が刻まれていた。かつてを経営していた彼は、今ではタクシー運転として計をてていた。
毎朝5に起き、名古の町をり回る。12以ハンドルを握るもあった。
それでも、助席のサンバイザーにはの写真を挟んでいた。信号待ちのたびに、健はその写真を見た。
周囲から再婚を勧められたこともあった。
だが健はいつも同じように答えた。
「私はまだ既婚者です」
ある夜、健はテレビのニュースを見ていた。
「柄サービスエリアが規模なリニューアル事に入ります。築30くになる老朽化した施設を全面に建て替え、最式のサービスエリアにまれ変わる予定です」
画面には事現が映っていた。
ショベルカーが面を掘り、作業員がき回っている。
健のが止まった。
柄サービスエリア。
が最にいた所。
26、健のを止め続けていた所が、変わろうとしていた。
翌、健は営業を休んで柄サービスエリアへ向かった。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
飛騨の農家に消えた嫁
1995年、岐阜県飛騨地方の山あいにある和牛農家へ嫁いだ27歳のゆき子。 よく働き、誰にも逆らわず、慣れない村で必死に暮らしていた彼女は、ある冬の日、牛舎へ向かったまま姿を消した。片方だけ残された長靴。消えた青いジャンパー。そして、家族が語った「自分から出て行った」という言葉。 警察は深く調べることなく、失踪は家出として処理された。 それから8年。村では何事もなかったように季節が巡り、義父の幻蔵は“誠実な畜産農家”として周囲から慕われ続けていた。 しかし、牛舎裏の堆肥の山から見つかった人骨が、止まっていた時間を動かす。 長年誰も近づけなかった壺のそば。夜ごと繰り返された寝言。真冬の洗車場で執拗に洗われた軽トラック。 誰も探さなかった若妻は、8年間どこにいたのか。 そして、家の体面を守るために義父が隠し続けたものとは――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 88 -
完結第11話
6秒の着信
2019年10月、紅葉の雪岳山を訪れた若い恋人、ジフンとアリン。 翌年に結婚を控えた2人は、記念写真を残すために山へ向かった。登山口の防犯カメラには、笑い合いながら歩く幸せそうな姿が映っていた。 しかし午後3時過ぎ、2人は分岐点でなぜか正反対の道へ進む。 そして、そのまま山の中から忽然と姿を消した。 大規模な捜索が行われても、足跡も荷物も見つからない。事故なのか、失踪なのか、それとも誰かが2人を誘い込んだのか。真相が分からないまま、3年の月日が流れていく。 やがて2022年、登山道近くの泥の中から、アリンの携帯電話が発見される。 そこに残されていたのは、最後に撮られた1枚の写真と、わずか6秒間の通話記録。 「そのまま来てください。彼も着きました」 その短すぎる声が、3年間“山で消えた”と思われていた恋人たちの、本当の行き先を暴き始める――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 64 -
完結第12話
壁の中の13年
平成3年、埼玉の小さな町で、妊娠8か月の美智子が突然姿を消した。 財布も出産準備の品も家に残されたまま。昼にはスーパーで買い物をし、公衆電話から誰かへ電話をかけ、その後、背の高い男と歩く姿を目撃されたのを最後に、彼女の行方は分からなくなる。 夫の誠、東京にいたはずの兄・茂、そして美智子を追い詰めていた山田家の沈黙。 警察は夫を疑い、町は噂に揺れたが、決定的な証拠は見つからないまま、事件は13年の時に埋もれていく。 しかし平成16年、再開発で古い家が解体された時、寝室の壁の内側から、長年隠されていたものが見つかった。 あの日、美智子は誰に電話をかけたのか。 そして、壁の中に封じられていたのは、彼女の行方だけではなかった――。ミステリー|真相1.8萬字5 511 -
完結第14話
10年目のゲームボーイ
1991年、8歳の誕生日会の最中に、篠原恵美の息子・直樹は忽然と姿を消した。 公園には多くの親子がいた。ほんの数分前まで、直樹は青いゲームボーイを手に友達と遊んでいたはずだった。だが、気づいた時にはどこにもいない。目撃者も、手がかりも、残された物もなかった。 それから10年。 息子を見失った母の時間だけが、あの日のまま止まっていた。 そんなある日、友人に連れられて訪れたフリーマーケットで、恵美は古い玩具の山の中から一台の青いゲームボーイを見つける。そこには、直樹が自分で貼ったはずの3枚のシールが、記憶のまま残されていた。 それを売っていたのは、かつて地域で信頼されていた元警察官の男。 なぜ、消えた息子の持ち物が10年後にそこへあったのか。 そして男が思わず口にした「息子」という言葉が、隠されていた10年の闇を少しずつ暴き始める――。ミステリー|裡の顔2.1萬字5 189 -
完結第13話
消えた23人の観光団
2025年9月29日、福岡に約2700人の団体観光客が一斉に降り立った。 その日を境に、日本各地で不可解な失踪が相次ぎ始める。タクシー運転手、配達員、宿泊施設の関係者――いずれも夜、一人で行動することの多い男性たちだった。 やがて糸島の海岸で発見された身体の一部が、事件の扉を開く。 捜査を進める刑事・鈴木健二は、失踪した観光客、黒いワゴン車、古い倉庫、医療機器販売会社、そして横浜港へ向かう冷凍コンテナという、ばらばらに見えた点を追い始める。 これは単なる失踪事件ではない。 観光の人波に紛れ、日本の空き倉庫や港を利用して動いていた国際犯罪組織。その裏には、人間を“商品”のように扱う恐ろしい取引が隠されていた。 救える命はまだ残っているのか。 そして、海へ消えた男と「王」と呼ばれる人物の正体とは――。 福岡から始まった小さな違和感は、やがて日本全体を揺るがす闇へとつながっていく。ミステリー|真相2.0萬字5 202 -
完結第12話
床下の小さな指輪
1991年、群馬県山川町の古い油屋で、嫁の佐藤美優が幼い息子を残して姿を消した。 家族は「男と駆け落ちした」と証言し、町にもその噂は広まった。働き者で、息子を誰より大切にしていたはずの美優は、いつしか“子供を捨てた母親”として語られるようになる。 それから6年後。 借金で差し押さえられた油屋の離れを壊した時、床下のセメントの奥から、人骨と小さな金の指輪が見つかった。 美優は本当に家を出たのか。 なぜ姑は、離れを壊すことだけを必死に止めたのか。 そして彼女が最後まで握りしめていた指輪は、誰のためのものだったのか――。ミステリー|真相1.8萬字5 159 -
完結第12話
膨腹の老人ホーム
長野県郊外の老人ホーム「日和の里」で、ある日を境に高齢女性たちの腹部が次々と異常に膨らみ始めた。 82歳の梅香、78歳の静江、85歳の時子。三人は同じフロアで暮らし、夜になるたびに何かを恐れるような表情を見せていた。介護士の佐藤美咲は異変に気づき、医師への連絡を求めるが、主任の神崎さゆりは「ただの便秘」と取り合おうとしない。 やがて美咲は、三人が夜中に小さな包みを飲まされていたことを知る。 家族との面会は制限され、記録は改ざんされ、施設長と主任は何かを隠している。誰も声を上げられない閉ざされた老人ホームで、美咲だけが真実を追い始める。 しかし、彼女が証拠に近づいた時、今度は美咲自身が地下の暗い部屋へ閉じ込められてしまう。 高齢者たちのお腹に、一体何が入れられていたのか。 そして、すべての真相を知った瞬間、あれほど冷酷だった主任・神崎は、その場に崩れ落ちた――。真相|介護1.8萬字5 560