"妻のポーチから見つかった結婚指輪" 第15話
これで守るべきものは守られた。は私が全てを終わらせるだ。
曜の朝、空は気なほどに青くれ渡っていた。私は礼にを包み、吉田弁護士と待ちわせた駅へと向かった。 駅には黒いスーツを着た吉田弁護士がすでに待っていた。 「おはようございます、佐藤さん。準備はよろしいですか?」
「はい。証拠のファイルも全て鞄に入っています。」
私たちは緒に私のに乗り込み、母のいる方の施設へと向かった。施設で母を子に乗せ、実のくの寺へ移する。母は今は調子が良いのか、私の顔を見て穏やかに微笑んだ。 「誠、今はいいお気ね。」
「ああ、母さん、いい気だね。」 私は母のをしっかりと握り返した。このを、あの徹なに汚させるわけにはいかない。
午、寺の控えにはすでに私の叔父や叔母などほどの親族が集まっていた。皆久しぶりの再会をび、やかな空気が流れていた。 「誠、今は変だね。お母さんの具はどうだ?」 の叔父が声をかけてきた。
「ええ、今は落ち着いています。あ、皆様ご紹介します。こちらは今の母の財産管理などでお世話になっている弁護士の吉田先です。」
私が吉田弁護士を紹介すると、親族たちは「それはい」と丁寧にをげた。吉田弁護士も穏やかな笑顔で名刺を配り、完全にそのに溶け込んだ。
広告
計の針が分を差した、控えの襖が静かにいた。 「皆様、ご無汰しております。遅くなりまして申し訳ありません。」
そこにっていたのは、喪にを包み完璧な化粧でしげな表を作った妻の弓だった。親族たちは「弓さん、忙しいのにありがとうね」と温かく迎えた。
弓は私と目がうと瞬だけ角をわずかにげ、まるでれな夫を見すようなたい線を送ってきた。私は表を切崩さず、ただ静かに彼女を見つめ返した。
さあ、弓、おの完璧な演技の台はこれが最だ。私は鞄のの分いファイルにそっとを触れた。
「本当に義母さんには昔から優しくしていただいて、今は最の務めとしてしっかりご挨拶させていただこうとってまいりました。」
控の襖が閉まると同に弓は目元にハンカチを当て、声を詰まらせるような見事な演技を始めた。親族たちはそんな弓の姿に完全にを打たれていた。
「弓さん、泣かないで。誠、おもこんなに素らしい奥さんがいて幸せものだよ。」
おばが弓の肩を優しくさする。
弓は「はい、もったいないくらいの夫です」と答えながら、ハンカチのから私に向けて緩やかで勝ち誇った線を投げかけた。私は表を変えずにただ静かに頷いて見せた。
弓は今ので私をあざ笑っているだろう。
広告
この愚かで気のい夫は親族ので私の顔をてた、ひっそりと婚届けに判を押し、文無しで追いされるのだと。
しかし彼女はらない。私がこの数ただ黙って絶望していたわけではないこと。鞄のに入っている分いファイルには探偵と吉田弁護士が集めた証拠だけでなく、私を助けるため面でいてくれた方たちからの決定な切り札が納められているのだ。
をし遡る。の曜、私は吉田弁護士の指示で自分のメインバンクの支を訪れていた。応接で私を待っていたのは、私が代の頃から宅ローンや老資の相談に乗ってくれていた副代理の鈴だった。私と同代で実直で誠実な男だ。
「佐藤さん、急にお呼びてして申し訳ありません。実は佐藤さんの座のきについてどうしても気にかかることがありまして。」
鈴は周囲を気にするように声を潜めながら枚の取引細証を私に差しした。そこには数ヶから私の座から田名義の座へ自然に額の資が移されている記録が印字されていた。
「奥様がインターネットバンキングで操作されているようですが、最その田名義の座からさらに別の座へきな資が移し始めています。
振り込み先は株式会社キーコンサルティングという法です。」
広告
おすすめ作品
-
完結第23話
40.4℃の真実
40.4℃の高熱で救急搬送された、二十歳の女子大学生。 医師は最初、ただの重い感染症だと思っていた。 しかし、診察のために服を少しめくった、その瞬間――診察室の空気は凍りつく。 彼女の身体には、病気では説明できない痕跡が残されていた。 なぜ誰も気づけなかったのか。 彼女は誰にも助けを求められなかったのか。 そして、彼女が涙を流しながら口にした「脅迫されました」という一言が、事件を思いもよらない方向へ動かしていく。 真実を追う刑事。 娘を守ろうとする両親。 そして、権力と金を持つ一人の男。 ページをめくるたびに新たな疑惑が生まれ、最後まで真相が読めない医療サスペンスです。 あなたなら、この事件の真犯人が誰だと思いますか?人生逆転|真実|裡の顔|真相3.5萬字5 2 -
完結第18話
浴室の鍵
「どうして、お風呂のたびに鍵をかけるの?」 その小さな違和感が、家族のすべてを壊す始まりだった。 認知症の母を介護する専業主婦・ゆみ子は、夫の紹介で甥の達也に介護を手伝ってもらうことになる。 礼儀正しく、優しく、介護の知識も豊富な達也。 誰もが彼を信頼していた。 だが、浴室の鍵が閉まるたび、母の表情は恐怖に変わり、身体には説明のつかない痣が増えていく。 誰にも信じてもらえない中、ゆみ子は密かに証拠集めを始める。 そこで明らかになったのは、高齢者虐待だけでは終わらない、家族の欲望と裏切りだった。 最後に暴かれる真実は、あなたの想像を超える。真実|裡の顔|真相|親子関係|介護|修羅場2.7萬字5 82 -
完結第9話
霧の峠に消えた後継者
1995年秋、長野の霧深い峠道で、1台の黒塗りの高級車が見つかった。 車内には鞄と別荘の鍵だけが残され、運転していたはずの男の姿はどこにもなかった。行方不明になったのは、東京・銀座の名門財閥の3代目後継者、総一郎。28歳の若さで一族の未来を背負うはずだった青年だった。 誘拐か、事故か、それとも自らの失踪か。 身代金の要求もなく、遺体も見つからないまま、事件は長い年月の中に埋もれていく。やがて一族では、総一郎の従兄・涼介が新たな当主となった。 しかし15年後、時効が目前に迫ったある日、総一郎の妹・佐和子は古い資料の中に小さな違和感を見つける。 車に残されていたはずの「別荘の鍵」。だが、それは兄がいつも持ち歩いていた本物の鍵入れではなかった。 消えた鍵入れはどこへ行ったのか。 そして、霧の峠で総一郎は本当に何者かに消されたのか。 時効前日、佐和子と元刑事・沢田は、すべての答えが眠る軽井沢の別荘へ向かう。そこで見つかった一冊の手帳が、15年間閉ざされていた財閥一家の真実を静かに暴き始める――。ミステリー|真実1.3萬字5 87 -
完結第5話
志摩の海に沈んだ母
1994年、三重県志摩の小さな漁村で、70歳を過ぎても海に潜り続けていた海女・高島梅野が突然姿を消した。 その朝、海は穏やかだった。仲間の海女たちは確かに梅野の姿を見ていた。けれど日が高くなっても、彼女だけが水面に戻ってこなかった。捜索は続いたが、亡骸も道具も見つからない。 事故なのか、失踪なのか。 梅野には3人の息子がいた。東京に住む長男、大阪で商売をする次男、そして島に残って母の近くで暮らしていた末の息子・正斗。やがて警察は、梅野が持っていた土地と、息子たちの金銭問題に目を向ける。 だが決定的な証拠はなく、事件は海に沈むように忘れられていった。 それから16年後。 東京・港区で、行方不明のはずの梅野名義の「3億円ビル」が見つかる。しかも名義移転は、彼女が姿を消した後に行われていた。 誰が、母の名義を使ったのか。 古い家に残された血痕、かまどの灰から出てきた金の指輪、そしてタンスの奥に隠されていた一通の遺言書。 志摩の海に消えたはずの真実が、16年後、静かに浮かび上がる――。ミステリー|真実7.7千字5 24 -
完結第4話
トランクの中の9年
2015年、熊本市の公園で、5歳の少年・岡田匠が突然姿を消した。 父・悟と一緒に散歩へ出かけ、砂場で遊んでいたはずの匠。父がほんの一瞬目を離した時、息子の姿はどこにもなかった。公園にいた人々も、周辺の防犯カメラも、匠がどこへ行ったのかを捉えていない。 警察は大規模な捜索を行ったが、手がかりは見つからず、事件は未解決のまま時間だけが過ぎていく。母・美咲は息子の帰りを待ち続け、父・悟は疑いと沈黙の中で少しずつ壊れていった。 そして9年後。 森の違法投棄現場で見つかった一台の古いトヨタ。その車は、かつて悟が所有していたものだった。 錆びついたトランクを開けた時、警察官たちは息をのむ。 中に隠されていたのは、9年前に消えた少年の記憶と、父親が最後まで語らなかった恐ろしい秘密だった――。ミステリー|真実6.4千字5 77