"母を逃がした電話" 第5話
声はしませんでした。
子さんは何も言わず、をそっと私のにねてくれました。2のは、同じように震えていました。
佐々に着いたのは午3半を過ぎた頃でした。
子さんは温かいほうじ茶を入れてくれました。私は湯呑みを両で包みました。指先の震えがしずつおさまっていきます。
「子さん、ごめんなさいね。こんな夜に」
「何言ってるの。臭いこと言わないで」
子さんは私の背をさすりました。
その、私のカーディガンの袖がずりがり、首が見えました。のあざが、古いものとしいものがなるように残っていました。
子さんは息をのみましたが、何も聞きませんでした。
今は聞くではないと分かってくれていたのです。
私はほうじ茶を半分ほどんで、ぽつりと言いました。
「ずっと話したかったの。子さんにも、田辺さんにも。でも話を取りげられて……」
「ってる。何度も話したし、訪ねたこともあるのよ。でも美さんに、お母様は体調が良くないのでって追い返されたの。もいたけど、届かなかったでしょう」
「通も見ていないわ」
子さんの目に涙が浮かびました。
「もっとく気づいてあげられなくて、ごめんね」
「いいのよ。こうして来られただけで」
そこまで言うと、体から力が抜けました。
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半ぶりのできる所でした。
誰かに監されていない夜。
好きなにがめる夜。
隣の部から美たちの笑い声が聞こえない夜。
私は布団に入ると、すぐに眠りに落ちました。
翌朝9、佐々に1台のタクシーが到着しました。
りてきたのは、70代半ばの紳士でした。髪をえ、グレーのスーツに紺のネクタイ。穏やかですが、芯の通った佇まいの物です。
田誠郎先でした。
「節子さん、お久しぶりです」
田先は私の姿を見た瞬、表をこわばらせました。
3に会ったの私は、背筋を伸ばし、葬儀のでも弔問客に丁寧にをげていたはずです。今の私は頬がこけ、首筋の骨が浮き、首にはあざがありました。
「ひどいことをされましたね」
田先はりを抑えるように言いました。
私はく微笑みました。
「先、私は丈夫です。見た目ほどってはいません」
そして、着の内側から折りたたんだの束を取りしました。
カレンダーの裏にき続けた記録です。
田先はそれを広げました。さく、けれど几帳面な字がびっしりと並んでいます。
「これをずっといていたんですか」
「はい。あのたちの会話を聞いたの夜から、毎晩」
田先はを持つを止め、私を見ました。
「節子さん、失礼を承で申しげますが、認症どころか、これは驚異な記憶力と判断力です」
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「ぼけたふりをしていた方が全でしたから」
私はそう答えました。
田先はく息を吐きました。
「あなたはただ耐えていたのではない。戦っていたんですね」
その、田先は調査結果を説してくれました。
祝井幸は、6に産会社の経営に失敗し、額の借を抱えていました。その額は分かっているだけで4000万円以。
美が優と会ったのは、ちょうどその頃でした。
さらに、認症の診断をした「そよメンタルクリニック」の黒田医師は、幸と古い関係がありました。産取引での接点も残っていました。
そして最も刻だったのは、私の座から1で計1200万円が引きされていたことです。
「窓での引きしです。伝票には節子さんのお名がかれていますが、跡はらかに別です。には防犯カメラ映像の保全を依頼しました」
私は膝ので拳を握りました。
正雄が残してくれたおです。
汗流して族のために働き、私が困らないように残してくれたおです。
それを、こんな形で。
田先は言いました。
「これは窃盗、詐欺、印私文偽造にあたる能性があります。さらに齢者に対する経済虐待としても追及できます」
そののうちに、田先は私を総病院へ連れてき、正式な認能検査を受けさせてくれました。
結果は確でした。
「田さん、認能に問題は切ありません。
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