"十年介護を捨てた日" 第2話
流をさなスプーンですくい、むせないようにずつ元へ運ぶ。
の薬をませ、の周りを拭き、ベッドの角度を戻す。
それだけで1くかかった。
台所へ戻ると、噌汁はしめていた。
私は急いで温め直し、勝のにした。
勝は聞を広げたまま椀を取り、ひとすすった。
次の瞬、箸を乱暴に置いた。
「この噌汁、すぎるだろ」
私はを止めた。
「ごめんなさい。お母さんの薬のがなって……」
勝は聞から目もげなかった。
「介護で忙しいって、抜きの言い訳か」
その言葉に、胸の奥がきゅっと縮んだ。
私はまだ自分の朝にもをつけていなかった。
それでも、反論すれば余計に空気が悪くなることは分かっていた。
「次から気をつけるわ」
そう言って、私は自分の分の茶碗をに取った。
しかし勝はさらに続けた。
「俺は仕事で疲れてるんだ。せめて事くらいまともに作れ」
私は茶碗を持ったまま、しばらくけなかった。
仕事で疲れている。
その言葉を盾にされるたび、私は黙るしかなかった。
私だって、1休みなくいている。
夜も2おきに起きている。
腰も膝も痛い。
けれど勝ので、介護は仕事ではなかった。
嫁が当然やるもの。
それだけだった。
あるの午、私は義母をベッドから子へ移そうとして、腰に鋭い痛みをじた。
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息が止まった。
そのに膝をつき、しばらくけなかった。
義母がそうにこちらを見ていた。
「丈夫ですよ」
私はそう声をかけたが、ちがろうとしても腰に力が入らなかった。
その夜、私は痛み止めをんで、何とか夕を用した。
勝が帰宅した、私は台所の子に座り込んでいた。
「お母さんのおむつ、今だけ伝ってもらえない?」
声にすだけでもけなかった。
それでも、このままでは本当にけなくなるとった。
勝は着を脱ぎながら、骨に顔をしかめた。
「俺には無理だ」
「今だけでいいの。腰が痛くて……」
「汚い仕事は嫁がやるものだろう」
その言に、私は言葉を失った。
勝はネクタイを緩めながら続けた。
「腰が痛いくらいで甘えるな」
私は何も言わなかった。
言えば泣いてしまいそうだった。
その夜も、痛み止めを追加でみ、壁にをつきながら義母のおむつを替えた。
義母は私の顔をじっと見て、さく唇をかした。
声にはならなかった。
けれど、申し訳ないと言っているように見えた。
私は首を振った。
「丈夫です」
そう言った自分の声が、ひどくくに聞こえた。
経済な負担も、私の肩にのしかかっていた。
介護用品、薬、通院のタクシー代、訪問護の自己負担。
に10万円を超えることも珍しくなかった。
それなのに勝がに入れる活費は、たった5万円だった。
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ある夜、私は計簿を広げ、卓を叩いていた。
数字は何度計算しても赤字だった。
勝が呂がりにリビングへ入ってきた。
「何してるんだ」
「今の介護費用がしりなくて」
私がそう言うと、勝は蔵庫から缶ビールを取りしながら言った。
「活費は折半だ。おもをもらってるんだから当然だろう」
「でも、介護費用はほとんど私が……」
「それはおが勝にやってることだ」
私はを疑った。
勝は缶ビールをけ、当然のようにソファへ座った。
「俺の母親なんだから、嫁として当然の義務だろう」
義母の介護費用は私がす。
活費もす。
事もする。
介護もする。
それでも勝にとって私は、謝すべきではなかった。
都よく使えるだった。
ある、鏡ので髪を結んでいると、勝が背から私を見た。
「お、最老けたな」
私はを止めた。
勝は悪びれもせず続けた。
「もうしなりに気を使ったらどうだ」
「美容院にくも、おもないの。分かってるでしょう」
「言い訳ばかりだな」
勝はで笑った。
「だから友達もいないんだ」
友達がいなくなったのではない。
私が会えなくなったのだ。
義母の介護を優先して、約束を何度も断った。
同窓会も、元同僚との事も、全部諦めた。
それでも、いつか勝が分かってくれるとっていた。
だが、勝は分かるどころか、さらに私を踏みにじった。
「おには謝してるよ」
ある夜、酒の匂いをさせて帰ってきた勝が、く笑った。
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