"月2万円の老後" 第7話
あのは、俺たちも余裕がなくて……でも、言っていいことじゃなかった」
良子は健を見つめた。
「親のを、子どもの都でかしていいとってはいけないわ」
「うん」
健は素直に頷いた。
「お母さんが自分で選べてよかったとってる」
しばらくして、恵子も訪ねてきた。
「お母さん、今度緒に買い物にこう。無理のない距で」
良子は頷いた。
「ありがとう。でも、私の予定も聞いてね」
恵子は瞬驚き、それから笑った。
「そうだね。お母さんにも予定があるもんね」
その言葉を聞いた、良子はし胸が温かくなった。
子どもたちとの関係は、以とは変わった。
頻繁に頼ることはなくなった。必以に期待することもやめた。
けれど、それは寂しいだけの変化ではなかった。
互いを1のとして見るための距だった。
ある夕方、良子は机の引きしを理していて、昔の帳を見つけた。
赤いペンでかれた言葉が目に入った。
子どもに経済な主導権を渡さないこと。
独した空を確保すること。
子どもに頼らず、自分の老は自分で責任を持つこと。
良子はその文字を指でなぞった。
30から分かっていたはずの言葉だった。
けれど本当に理解したのは、自分が当事者になってからだった。
窓のでは、公園の々が夕に染まっていた。
良子はゆっくりちがり、すりを頼りに窓辺へ歩いた。
膝はまだ痛む。けれど、その痛みさえ自分の体の部として受け止められる気がした。
老ホームでもない。
子どものでもない。
額な介護士に支配される活でもない。
2万円のさな部で、良子はようやく自分の老を自分のに取り戻した。
老に必なのは、豪華な施設でも、子どもへの過度な依でもなかった。
必なのは、自分で選べる所。
自分のおを自分で管理する力。
そして、子どもに頼りきらずにきるための準備だった。
良子はさく息を吐き、静かに微笑んだ。
「私は、荷じゃない」
誰に聞かせるでもなく、そう呟いた。
「私は、私のをきている」
夕暮れのが部のにく伸びていた。
そのので、良子は初めて、老を恐れずにを迎えられる気がした。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
真っ暗な部屋の退学届
姉を突然亡くした39歳の孝太郎は、残された高校生の姪・美緒を引き取ることを決めた。 母を失ったばかりなのに、泣き言ひとつ言わず、家事も勉強もこなす美緒。孝太郎は「しっかりした子」だと思い、少しずつ二人の生活は形になっていく。 だがある夜、仕事から帰ると部屋は真っ暗だった。 美緒の部屋を開けた孝太郎が見たのは、床に並べられた荷物、通帳、求人誌、そして一枚の退学届。 母を亡くした少女は、本当は何を抱えていたのか。 その夜、亡き姉が残した一通の手紙が、二人の止まっていた時間を静かに動かし始める――。第二の人生|親子関係1.4萬字5 206 -
完結第13話
止まったカードと空の家
夫の正文が「会社の旅行」と言って家を出た朝、私はすべてを知っていた。 行き先で待っているのは会社の同僚ではなく、高校時代からの親友・美津。しかも夫は、私名義のクレジットカードを勝手に使い、親友との食事や買い物にまで手を出していた。 泣いて問い詰めることはしなかった。証拠はすでにそろっている。娘も、父親の異変に気づいていた。 「引っ越すよ」 夫が浮気旅行を楽しんでいる間に、私は娘と新しい家へ向かった。そして夫のカードを止め、彼の荷物を“ある場所”へ送りつける。 旅行先で支払いができなくなった夫。荷物を受け取った親友の家。そして、空っぽの部屋へ戻ることになる裏切り者。 夫と親友を同時に失った私が、娘と本当の人生を取り戻すまでの物語。夫婦|親子関係|不倫1.9萬字5 8390 -
完結第9話
ブサ婿の正体
毒親に支配され、家の借金を返すための道具として生きてきた長嶋咲。 父は恐怖で縛り、母は涙で罪悪感を植えつける。進学も、仕事も、お金も、すべて親の都合で奪われてきた咲は、ついに資産家の息子・御堂剛との結婚まで勝手に決められてしまう。 相手は地味で冴えない男性。愛情などない、ただの取引結婚――咲はそう割り切るしかなかった。 しかし結婚初夜、2人きりになった途端、剛は静かに口を開く。 「実は俺、7年前からあなたのことを知っていました」 差し出されたのは、両親の借金に関する書類。そして、咲自身も忘れかけていた冬の夜の記憶だった。 利用するつもりだった結婚相手は、本当に咲を縛る人間なのか。 それとも、初めて彼女を自由にしてくれる人なのか。 これは、誰にも見てもらえなかった2人が、遠回りの果てに互いを選び直す物語。夫婦|親子関係1.4萬字5 1592 -
完結第11話
追放母の25億売却
お盆のため、長崎から東京の息子夫婦のペントハウスを訪れた田中春江。 亡き夫に手を合わせ、息子の好物を詰めた重箱を抱え、半日かけて上京した彼女を待っていたのは、温かな家族の食卓ではなかった。 嫁・里奈は春江の手料理を目の前で捨て、安いホテルの予約票を差し出す。さらに息子夫婦は、自分たちが旅行へ行く間、愛犬の世話だけを春江に押しつけようとしていた。 長年、息子のために働き続け、すべてを与えてきた母。だがその日、春江はようやく気づく。 自分は家族として呼ばれたのではない。ただ都合よく使われるために呼ばれただけだった。 その夜、春江は20年以上連絡を取っていなかった“ある人物”に電話をかける。 翌日、息子夫婦が暮らしていた天空の城は、静かに動き始めた――。人生逆転|親不孝|親子関係1.6萬字5 3433 -
完結第10話
夕焼けの後継者
差し押さえ寸前の修理店を守るため、26歳の佐々木満は、財閥会長の豪邸にある小劇場の照明修理を引き受ける。 母を知らず、亡き父が残した工具と古いノートだけを頼りに生きてきた満。だが、屋敷の照明設備は、なぜか父のノートに記された特殊な配線と完全に一致していた。 さらに修理を終えた満は、廊下に飾られた古い写真の中に、若き日の父の姿を見つける。 「あれ……これ、僕のお父さんの写真だ」 その一言で、財閥会長夫妻の表情は一変する。30年前に消えた息子、隠された事故、偽られた死、そして満の出生に関わる秘密。 やがて一通の鑑定書が開かれた時、豪邸に閉じ込められていた長い嘘が崩れ始める――。兄弟姉妹|親子関係1.5萬字5 964 -
完結第15話
残り物少年の奇跡
「残り物をください。そしたら、あなたに歩き方を教えます」 高級レストランでそう言ったのは、破れた靴を履いた8歳のホームレス少年・翔太だった。 相手は、事故で歩く力も家族も希望も失った大富豪・佐藤孝志。世界中の医師から「もう歩けない」と告げられ、人生を諦めかけていた男だった。 ただ食べ物を求めて現れたはずの少年は、なぜか孝志の心の奥に隠された絶望を見抜いていた。 毎晩8時の夕食。少年の小さな手が、動かない足に触れるたび、孝志の中で何かが少しずつ変わり始める。 これは奇跡なのか、それとも少年が見つけた“生きる理由”なのか。 残された一皿のサーモンから、壊れた家族と失われた人生が静かに動き出す――。人生逆転|金銭問題2.3萬字5 619 -
完結第8話
消えた仕送り720万円
真冬のある日、55歳の富代は、母の暮らす古いアパートを訪ねた。 部屋の中は外と変わらないほど冷え切り、母は暖房もつけず、毛布にくるまって震えていた。冷蔵庫にはわずかな食材しかなく、長年仕送りをしてきたはずの富代は胸を痛める。 「もっと仕送りを増やすね」 そう告げた瞬間、母は不思議そうに首をかしげた。 「仕送り? 知らないけど」 12年間、毎月5万円。合計720万円。 母のために送っていたはずのお金は、どこへ消えていたのか。疑念を抱いた富代が口座を調べ直すと、そこには夫と義家族が隠し続けていた信じがたい事実があった。 仕送り先を本来の口座に変えた日から、義母、夫、義姉の態度は一変する。 なぜ彼らはそこまで焦ったのか。 凍える母の部屋から始まった違和感は、30年の結婚生活を揺るがす真実へとつながっていく――。因果応報|人生逆転|金銭問題1.2萬字5 2752 -
完結第6話
七五三の不要人物
孫娘の七五三の日、69歳のすみは、亡き夫が褒めてくれた着物を着て神社へ向かった。 写真代、衣装代、食事会の費用まで出したのは、すべて孫の晴れ姿を祝いたかったから。けれど当日、息子夫婦から告げられたのは、あまりにも冷たい一言だった。 「家族だけで撮るから」 カメラの前に並ぶのは、息子と嫁と孫の3人だけ。すみは輪の外に立たされ、食事会でも末席に座らされる。 それでも孫のために黙っていたすみだったが、後日、写真館から届いた連絡で、彼女はすべてを知る。 自分は写真に入れなかっただけではない。写り込んだ姿さえ、“不要人物”として消されようとしていたのだ。 その夜、すみは古い帳面を開く。 そこに残されていたのは、息子夫婦へ渡してきた数々の援助記録。積み重なった金額と、消された祖母の証拠を前に、すみはついに静かな決断を下す。祖父母と孫|親子関係8.5千字5 3275 -
完結第8話
愛人旅行の代償
定年の日、美和は36年間支えてきた夫・秀治のために、好物の夕食を用意して待っていた。 しかし帰宅した秀治が連れてきたのは、見知らぬ若い女性だった。 「退職金で香織と海外旅行へ行く。帰ってきたら離婚届に判を押せ」 夫はそう言い放ち、さらに美和に家を出て行くよう命じる。長年守ってきた家庭も、妻としての時間も、すべてなかったもののように扱われた美和。 だが、彼女は泣かなかった。 旅行へ向かう夫と愛人を静かに見送り、ただ一つだけ確認する。 「この家のことは、私が決めていいのね」 数日後、海外旅行から戻った秀治を待っていたのは、見慣れた玄関ではなく、ロープで囲まれた更地と「売却済み」の看板だった。 夫が知らなかった、この家の本当の持ち主。 そして美和が36年の結婚生活の最後に下した、静かな決断とは。夫婦|金銭問題1.2萬字5 8305 -
完結第17話
母の墓に立つ母
10歳の少年・ハルトは、3年間、亡き母の墓に通い続けていた。 しかし、イギリスへの養子縁組が決まったある日、最後の別れを告げるために訪れた墓前で、彼は見知らぬ女性と出会う。 その女性は、母と同じ顔をしていた。 「……お母さん?」 震える声で呼びかけた瞬間、女性の顔色が変わる。彼女もまた、ハルトの顔に信じられないものを見ていた。 なぜ、亡くなったはずの母と同じ顔の女性が墓の前にいたのか。 なぜハルトは、突然海外へ送られようとしているのか。 そして、彼の出生に隠された真実とは何なのか。 10年前に引き裂かれた恋、双子の姉妹、山奥で守られ続けた小さな命。 すべての秘密が動き出した時、少年は初めて、自分を守るために誰が何を犠牲にしてきたのかを知ることになる。人生逆転|兄弟姉妹|親子関係2.6萬字5 475