"四十九日、電話を切った妻" 第8話
「を利用価値でしか見ないには、同じようなしか寄ってこないの」
沈黙が落ちた。
そして、覇斗の声が震え始めた。
「実は……もう会社を辞めさせられた。サラにも、あなたみたいなとは価値観がわないって言われて、連絡が取れなくなった」
私は目を閉じた。
「そうでしょうね」
「借もすごいことになってる。宅ローン、クレジットカード、々あって……もうどうしていいか分からないんだ」
音だけが部に響いた。
「千尋、頼む。助けてくれ。おだけが頼りなんだ」
その言葉を聞いても、胸は揺れなかった。
「今さら何を言っているの? お母さんがあなたを必としていた、あなたはどこにいたの?」
「それは……俺は仕事で」
「仕事じゃなくて、サラさんとのデートでしょう」
話の向こうで、覇斗が息を詰まらせた。
「俺は……違っていた。本当に違ってた」
「何が違っていたの?」
「母さんを切にしなかったこと。おを馬鹿にしたこと。俺は、どうかしていた」
「気づくのが遅すぎたのよ」
私は静かに言った。
「でも、お母さんはいつも言っていたわ。は変わることができるって。ただし、それはに頼ることじゃない。自分の力でちがることから始まるの」
「自分の力で……」
「そうよ。今度は誰かのために何かをしてみて。見返りを求めないで、ただ相のことをって」
「でも俺には、もう何もない」
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「何もないからこそ、本当に切なものが見えるはずよ。おや位がなくても、をいやることはできるでしょう」
い沈黙があった。
やがて、話の向こうで覇斗がさくすすり泣く声が聞こえた。
「分かった。1から直してみる。今度こそ、本当にを切にできるになりたい」
私は窓のを見つめた。
「お母さんも、それを望んでいたとうわ」
「千尋……ありがとう。今は話してよかった」
「さようなら、覇斗。あなたが本当に変われたら、きっといつか誰かがあなたを必としてくれるわ」
私は静かに話を切った。
半の私なら、彼を憎み、復讐を望んでいたかもしれない。
でも今、胸にあったのは憎しみではなかった。
いしみだった。
1のが、これほどくのを見失いながらきてきたことへのしみ。
そして、義母が最まで信じようとしていた息子が、ようやく孤独ので何かに気づき始めたことへの、わずかな祈りだった。
それから2のが流れた。
私は相馬や剣造さんとの交流をめながら、穏やかな々を過ごしていた。
義母から相続したはもうない。けれど、義母の写真は私のしいの番るい所に置いてある。朝になると、窓から入るが写真てのガラスに反射して、義母がし笑っているように見える。
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私はその写真に、毎朝声をかけるようになった。
「お母さん、おはようございます」
初めの頃はし照れくさかった。でも今では、それが私のの始まりになっている。
相馬はその、の紹介で会った男性と再婚した。式は挙げず、親しいだけを集めたさな事会だった。私はそこに招かれ、剣造さんと並んで座った。
相馬のしい夫は、義母の話を聞くたびに、必ずこう言ってくれた。
「素らしい方だったんですね」
その言葉に嘘はなかった。
彼もまた、を切にすることのをっているだった。
剣造さんは々、義母のいを話してくれる。
「妹はいつも言っていたんだ。千尋は私の宝物だって。血の繋がりなんて関係ない。の繋がりこそが本当の族だってね」
その言葉を聞くたび、私は胸がくなる。
義母は私を守ってくれた。
きているも、くなったあとも。
私は義母の写真のに座り、静かに語りかけた。
「お母さん。あなたの優しさが、私を守ってくれました。あなたが教えてくれたのを、今度は私が誰かに伝えていきたいとっています」
義母の写真は、いつものように優しく微笑んでいた。
私はもう、誰にも自分の価値を決めさせないを選んだ。
おや位ではなく、の豊かさを切にしてきていく。
それが義母の願いだったのだとう。
窓のでは、義母がしていた桜のが満に咲いていた。が吹くたび、淡いびらが空にい、ののでゆっくり落ちていく。
毎この季節になると、私は義母のをよりくじる。
覇斗のことも、々考える。
彼が今どこで何をしているのか、私は詳しくらない。けれど、あのの夜の話以来、彼は度だけいを送ってきた。
そこには、たった数だけかれていた。
「母さんの墓参りにきました。何を言えばいいのか分かりませんでした。ただ、すみませんとだけ言いました」
私はそのを読んで、しばらく机のに置いたままにした。
返事はかなかった。
でも、破り捨てることもしなかった。
は変われる。
義母はそう信じていた。
私も、その能性だけは信じていたいとった。
しい族との卓で、私は義母から学んだことを静かに実践している。
相をいやること。
謝を忘れないこと。
そして、することを諦めないこと。
「お母さん」
私は写真に向かって、さく微笑んだ。
「あなたの娘としてきることができて、本当に良かったです」
血の繋がりなんて関係ない。
義母にされたこと。
義母を最まで見送れたこと。
義母が私を族として選んでくれたこと。
それが、私の最の宝物だった。
桜のびらが窓のでっている。
私は湯のみを両で包み、温かいお茶をんだ。
「ありがとう、お母さん。私は幸せです」
その言葉は、静かな部のにやわらかく溶けていった。
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