"月3万で罵られる妻と、私の会社から50万貰う秘書" 第16話
が過ぎ、が過ぎた。 事件からが経った、〇、。
私は京のエリア、町のが残る私鉄沿線のにいた。 駅から徒歩分の、築の鉄骨マンション。 賃万千円の、こぢんまりとした1LDKだ。
ベランダからは、さな商の通りが見ろせる。 当たりがよく、通しのいい、私だけのだった。
婚届は半に正式に受理され、私の戸籍からは「」の文字が消えた。 旧姓に戻った私は、さな専版社の制作管理として、契約社員の職を得ていた。
は取りで万円。 決して贅沢ができる額ではない。
けれど、結婚に培った印刷の見積もりや程管理の識、そしてこのの獄ので叩き直した簿記の識は、現で驚くほど役にった。 「真由さんの作る表は、の配から製本まで狂いがないから助かるよ」 職の編集にそう言われた、帰りのので、に界が滲んだ。
誰かの嫌を伺うためではなく。 自分の識と労働が、正当に評価され、対価として座に振り込まれる。 その当たりの事実が、どれほど私の凍りついた自尊を温めてくれたか分からない。
のたくなったの黄昏。 私は仕事帰りに、駅のスーパーにち寄っていた。
買い物カゴを腕にかけ、鮮品の売りを歩く。
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平飼い卵のパック、松菜、鶏もも肉、そして筑煮用の根菜のパック。
「ごぼう、今は百円か。しいわね」
指先で野菜のみを確かめ、ので今週の自炊のメニューを組みてる。 卓を叩くように、自然と予算が計算されていく。
かつて、あので怯えながらやっていた計算とは、まるで違っていた。 「万円を超えたら鳴られる」「りないと言えば無能だと罵られる」という恐怖の計算ではない。
今の賃、費、通信費。 先取り貯に回す万円。 そして、今週の費として設定した千円のから、今使う千百円。
すべて、私が決めた数字だ。 私の汗で稼ぎ、私の志で配分し、私の命を養うための、正当な予算。
レジで会計を済ませ、レシートを受け取る。 千百円。
財布にレシートを丁寧に収め、エコバッグを肩にかけた。
の噂で、元夫と義母のそのの暮らしをにした。
修は執猶予付きの罪判決を受けたものの、額の損害賠償債務を抱えて自己破産を申してた。 当然、まともな企業への再就職などできるはずもなく、今はのツテで紹介された産業廃棄物の収集運搬で、雇いにい形で働いているという。
がを寄せているのは、埼玉県内のバスでしか通えない、築の造アパートの2DKだそうだ。
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階段のりりだけで義母の膝は鳴をげ、所付きいも世体も、すべて失われた。
ある、現から疲れて帰ってきた修が、テーブルのに使い古した千円札を何枚か叩きつけたらしい。
『おい、これでヶの飯をなんとかしろ。俺の稼いだだぞ。無駄遣いするなよ』
投げされた封筒のに入っていたのは、たったの万円だったという。
『修、これじゃお米とお肉を買ったら、私の湿布代も残らないわよ……』 泣きつく義母に、かつての息子は吐き捨てるように鳴り返したそうだ。
『うるせえ! 根のある部にまわせてもらって、飯のやりくりつできないのか! が悪すぎるんだよ!』
その景を像した、私の喉の奥から、乾いた息がつ漏れただけだった。
自分がにいてきた獄のさを、は自分がその底に落ちて初めてるのだ。 けれど、もう私には関係のない世界の来事だった。
アパートの部に戻り、鍵をかける。 静かな、よい静寂が私を迎えてくれた。
キッチンのかりをつけ、買ってきたばかりのエプロンをにつける。 あの女から投げつけられた派なものではない。 無印良品で見つけた、飾りのない、清潔な成りの麻のエプロンだ。
鍋にをかけ、汁をとる。 醤油とみりんのばしい匂いが、さなキッチンいっぱいにちっていく。
コトコトと煮物が煮える音を聞きながら、私はテーブルのに計簿をいた。
お気に入りのボールペンで、今使った千百円をき込む。
窓のを見げると、群青の夜空に、凛としたのが浮かんでいた。
私のは、し回りをしてしまったかもしれない。 けれど、奪われたものはすべて取り戻した。
私の名も。 私の稼いだおも。 そして、の朝、自分が何をべてどうきるかを決める、私自の尊厳も。
湯気のつお椀を運び、をわせる。
「いただきます」
静かな部に響いた私の声は、どこまでも澄んで、力かった。