"23年尽くした妻の追放✕四十九日の愛人親子" 第1話
最のを乗せたタクシーの赤いテールランプが、夜のに消えていった。
義父の法が終わった、まさにその直だった。 親戚たちへ配る仕し弁当の片付けを終え、え切った台所で湯呑みを洗っていた私の背に、玄関の引き戸が乱暴にく音が響いた。
入ってきたのは、夫の健司だけではなかった。
見慣れない、淡いベージュのコートを着た若い女。 そして、その女のを引く、まだランドセルを背負うくらいのさな男の子。
女はコートを脱ぐことすらためらうように、玄関のがり框をじっと見ろしていた。 のかおりがち込める古い平の空気に、甘ったるいの匂いが混ざり込む。 喉の奥が、かっとくなった。
「……健司さん、その方は?」
私がゴム袋をしながら尋ねると、夫は悪びれる様子もなく、むしろの荷をろしたかのように笑いを浮かべた。
「理恵と、息子の悠斗だ。今からここで暮らすから」
言葉のを脳が処理するよりく、夫は居のテーブルへ向かった。 そこには、緑のラインが入った類がすでに広げられていた。 私の名をく欄だけが、ぽっかりとく残されている。
「おとは婚する。もう決めたことだ。荷物は今夜にていけ」
臓が、の奥で激しくねた。
23。 このに嫁いでから、私が費やしてきた歳だ。
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義父が脳梗塞で倒れてからの、の世話から毎の流作り、病院の送り迎えまで、すべて私がで担ってきた。 夫はその、何をしていたか。 仕事だと嘘をついて週末ごとにし、義父が危篤に陥った夜ですら、酒の匂いをさせてけ方に帰ってきた男だ。
その義父がくなり、ようやく忌けを迎えたそのの夜に、この男は別の族を連れてきた。
「……お義母さんは、ごじなんですか」
私の声は、自分でも驚くほどく震えていた。 奥の仏から、すりの音が聞こえた。 現れた義母の子は、喪の胸元を直しながら、度も私の目を見ようとしなかった。 そして、玄関のに、黒いゴミ袋をつ、無造作に放り投げた。
ドサリと、い音がした。
「あんたの普段着と着よ。季節のものは、またで送ってあげるから」
義母はえたお茶をすすり、さも当然だという顔で言い放った。
「23、あんたもこのにタダでませてもらったんだから、いい潮でしょう。健司だって、いつまでもで気な女と顔を突きわせてちゃ、息が詰まるわよ」
息が詰まる。 タダでんでいた。
指先から血の気が引いていくのが分かった。 台所の油汚れも、義父のシーツについた汚物も、すべて私ので洗ってきた。 それを、このたちは「タダでまわせてやった」
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の言で片付けようとしている。
私の背で、理恵と呼ばれた女が部を見回していた。 仏壇の横に置かれた私の鏡台や、使ってきたタンスに目を留め、わずかに眉をひそめる。
「健司さん、この寝、あの奥さんが使ってた部なの? ベッド、くダブルのに買い換えてよ。の使ったやつなんて気持ち悪い」
「ああ、にもカタログ見て注文しよう。理恵の好きなやつでいいからな」
夫は猫撫で声をし、女の腰にを回した。 そのやり取りを、男の子――悠斗が、きな目でじっと見げていた。 そして、そうに母親の袖を引いた。
「ママ、ぼくのしい部、本当にずっとぼくの部なの?」
理恵は屈み込み、子どものを撫でた。
「もちろんよ。おばあちゃんも、健司おじちゃんも約束してくれたでしょ。悠斗の部を作ってあげるって」
私は、目を伏せている義母を真正面から見据えた。
「お義母さん。あのに、何を約束したんですか」
義母の肩がピクリとねた。 だが、線は泳いだまま、元の湯呑みを弄ぶだけだった。
「これからのことは、おには関係ないんだよ」
夫が私の肩を乱暴に押し、玄関へと追いやった。
「ぐずぐずするな。所の目があるんだ。夜のうちにていけ」
鳴り散らして暴れることなら、いくらでもできた。 だが、その瞬、私のので何かがたく、完全に凍りついた。
ここで泣き叫べば、彼女たちのう壺だ。 「発狂した元妻」として、警察を呼ばれて放りされるのがオチだ。