"存在しない306号室" 第14話
危険区域として指定され、周囲には頑丈なフェンスが張り巡らされている。 砂崩れを起こした肌には、県によってしい擁壁事が始まっていた。
京の自宅に戻ると、リビングの障子から柔らかなの差しが差し込んでいた。
、閉め切られていた姉の部のドアがいている。 母が、埃を払った机のに、さな遺を置いていた。
歳の、制姿の姉。 その横に、野県から届いたばかりの、真しい桐箱が置かれていた。
箱のに入っていたのは、の付を跨いで発された、枚の証。
『卒業証 普通科 宮本織』
に押された印の横に、さく付記された文があった。 『平成付をもって、本の全課程を修したことを証する』
「……遥」
母が、震える指先でその証をそっと撫でた。 髪が増え、さくなった母の背。
「お姉ちゃん……最期まで、派だったんだね」
「うん」 私は母の隣に座り、姉の写真を見つめた。
「怖かったとうよ。寒くて、真っ暗で、痛くて……すごく怖かったはず」
嘘の慰めは言わなかった。 あのピットのたさを、私は自分の目で見てっていたから。
「でもね、逃げしたんじゃないよ。誰かの悪を言って諦めたんでもない。最まで、みんなでをつないで、助けようとしてた」
母が、写真を胸に抱きしめて、声を殺して泣いた。
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、世の目を恐れて流せなかった涙が、母の胸元を温かく濡らしていく。
窓ので、かすかにが鳴った。
スマートフォンをくと、ネットニュースの片隅にさな記事が掲載されていた。 『野・失踪事案 県教委が調査報告を全面訂正 徒名に名誉卒業証を授与』
コメント欄には、かつて姉たちを罵倒していたのと同じ無責任な言葉が、今度は学批判へと形を変えて並んでいる。 世なんて、所詮そんなものだ。 になれば、またしい事件に群がり、姉たちの名なんて忘れてしまう。
でも、それでいい。 がどう記憶するかじゃない。
姉のきたが、そしてあの夜の最の選択が、正しい言葉で記録された。 それだけで、私たちが歩んできたの暗は、ようやく終わりを迎えることができたのだから。
私はちがり、姉の部の窓をいっぱいにけた。
流れ込んできたのたい空気が、私の頬を優しく撫でて通り過ぎていった。