"母が消える直前の電話は、警察宛てだった" 第13話
母の々しい指が、私のをぎゅっと握り返した。
「公正証遺言と緒に、信託の貸庫に預けてあったのよ。『美奈が歳になる、または私がしたに、部の監査関と検察へ自示される』という条件をつけてね」
のを、たいが通り抜けた。
「じゃあ……あのに縫い込んであったのは」
「壊れて使えなくなった、ただのダミーよ。お父さんが、万がのに敵の目を欺くために用していた囮だったの。……私は、あの、野寺が現でその囮を盗みしたことをっていた」
母は、泣きしそうな笑顔を浮かべた。
「あの着を捨てられなかったのはね……いつか、あの男がの嘘に気づいて、本物を奪いに来るんじゃないかって、ずっと怯えていたからなの。私が元に着を置いておけば、あの男の目を引きつけておけるとっていたのよ」
母は、自分を盾にしていたのだ。 、たったで。 父の遺志を守り、娘の命を守るために、空っぽの罠を抱きしめ続けていた。
「バカだよ、お母さん……」 私の目から、止めどなく涙が溢れた。 「でそんなこと抱えて……んじゃったらどうするのよ」
「なないわよ」 母はさく笑った。 「曜に、美奈と肉じゃがをべる約束、してたんだから」
サイレンを鳴らしながら、救急は夜の国を内へとっていった。
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週。
のは、の終わりを告げるたいに濡れていた。 元の朝刊面には、さくない見しが躍っていた。
『佐藤物流社・野寺誠容疑者を逮捕 の未成者略取教唆および横領の疑い』
会社の裏スキームはのに晒され、関連企業の取引先は斉にを引いた。 あれほど世体を気にしていた男の会社は、民事再法を申請するもなく事実の倒産に追い込まれた。
午、私は退院した母に付き添い、署を訪れた。
活全課ではなく、捜査課の取調。 テーブルのには、透な証拠品用のビニール袋に入れられた、あのロイヤルブルーのウインドブレーカーが置かれていた。
「佐藤さん、これらは正式に裁判の証拠品として領置(りょうち)させていただきます」 担当の検察事務官が、々とをげた。
母はその青いを、名残惜しそうに指先で度だけ撫でた。 、母の暗を閉じ込めていた。 でも、もうこのに怯える必はない。
「よろしくお願いします」 母は迷いのない声で言った。
警察署をると、はすっかりがっていた。 の切れから、夕暮れの柔らかな差しが、赤の肌を黄に染めげている。
並んで歩く母の取りは、まだし覚束なかったけれど、その背は分の荷をろしたように軽やかだった。
県営宅のアパートに戻り、え切っていたキッチンの換気扇を回す。
コンロにをつけると、青い炎がシュボッと音をてて燃えがった。 鍋ので、醤油とみりんの甘辛い匂いがふわりとちる。 油の浮いていた肉じゃがが温め直され、鍋の底でコトコトとよい音をて始めた。
「美奈」
エプロンをつけた母が、鉢に盛り付けた々の肉じゃがを卓に置きながら、私を見て穏やかに微笑んだ。
「次の曜も、ご飯べに来る?」
私はコートを脱ぎ、パイプ子を引いて腰をろした。 湯気の向こうにある母の笑顔を、しっかりと見つめ返した。
「うん。絶対に来るよ」