"7年前に失踪した夫は、12年前から目が見えない" 第11話
参列者は、私と悠真、そして盲目の宮本修司と玲子のだけだった。 世体を気にする義理の親戚も、噂好きの所のも誰も呼ばなかった。
本堂の央に置かれた、い骨壺。 そのには、コンクリートの底から救いされた、たい直の遺骨が眠っていた。
読経が終わり、線の煙が静かにちる、修司が悠真にを引かれて焼台のにみた。
盲目の義兄は、震える両を宙に伸ばし、骨壺のい布を探り当てた。 たい陶器の触を確かめるように、指先をわせる。
「……直」
修司の喉から、絞りすような慟哭が漏れた。
「すまなかった……俺のせいで、おのを……すまなかった……!」
涙が、修司の焦点のわない瞳から溢れ、骨壺を包む布のに落ちて染みを作った。 玲子もまた、ろで声を殺して泣き崩れていた。
誰も、責めなかった。 の事故から始まった狂った歯は、あまりにもくのものを奪いっていったけれど、直が最期まで守ろうとしたものは、確かにここに残っていた。
アパートへ戻ると、がリビングの畳を赤く染めていた。
私は、クローゼットの奥くにしまい込んでいた段ボール箱を取りした。 底から引っ張りしたのは、のシンプルな写真て。
の、族でかけた公園で撮った写真。
広告
歳の直が、青いジャージを着た歳の悠真の肩を組み、照れくさそうに笑っている。 その隣で、代の私が笑っている。
布巾で、ガラスに積もったい埃を丁寧に拭き取った。
、この写真を見るのが怖かった。 私を捨てて逃げた男の顔を見るたびに、胸の奥が焼けるように痛んだから。
でも、もう違う。
あのは逃げてなどいなかった。 あの、をていった背は、私たち母子を命懸けで守り抜くための、たったの戦へ向かう背だったのだ。
写真てを、リビングの最も陽当たりのいい棚の、さな瓶の隣に置いた。
が写真のガラスに反射して、直の笑顔をかく照らししている。
「母さん、夕飯どうする?」
キッチンから、エプロンをつけた悠真が顔をした。 久しぶりに聞く、伸びやかな、歳の青の声だった。
「そうね。直が好きだった、肉じゃがにしようか」
私は写真のの夫に向かって、ので静かに語りかけた。
もう、で寒がらないでいい。 もう、誰もあなたを責めない。
おかえり、直。 私たちは、ちゃんとを向いてきていくよ。