"ただの送金係にされた母親" 第17話
【17】「まだ決めてない。ただ、先にらせておくよ」
ゴールデンウィークの初、私のさなアパートの郵便受けに、枚の絵葉が届いていた。
差は翔太と彩さん。
写真には、緑が眩しい信州の並みが写っていた。
『ハネムーンの代わりに、で泊だけの温泉旅に来ています。緑が綺麗です』
裏面には、彩さんの几帳面な字と、その横に翔太のし癖のある字で『母さんも体調に気をつけて』とき添えられていた。
ハワイのような派な旅ではない。
節約した活費のから、で計画をてて面した、ささやかな旅。
私はその絵葉を、蔵庫の側面にマグネットで留めた。
そのの午、ベランダで洗濯物を取り込んでいると、リビングのテーブルのでスマートフォンがく振した。
画面を見ると、翔太からのLINEだった。
『母さん、今ちょっといいか?』
臓が瞬だけさくねた。
の習慣で、胸の奥に微かな警戒が芽える。
また何かトラブルがあったのか。
借が発覚したのか、それとも正弘の容態が急変したのか。
画面をくと、翔太からのメッセージが続いていた。
『親父のことで連絡。
目の内障がしてて、来術を受けることになった。
保険は効くけど、自己負担分が万円ほどりないらしい』
画面を見つめたまま、私の指が自然とキーボードのをき始めた。
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『万円なら、お母さんが振り込もうか?』
かつての私なら、迷わずそう打ち込んで送信ボタンを押していただろう。
息子を困らせたくない。
元夫へのけをかけてやりたい。
そして何より、「頼れる母親」のポジションに収まりたいという、無識の支配欲から。
だが、私は指を止めた。
打ちかけた文字を、文字ずつ、バックスペースで消していく。
その、画面が更され、翔太から続けて通のメッセージが届いた。
『費用のことは彩にも全部話した。
俺たちの来の費とレジャー費を削って、なんとか面する予定。
ただ、術の当に誰かが付き添わなきゃいけなくて、俺が仕事を休むか、を使うか、まだ決めてない』
そして、最の。
『どうするかはまだ決めてない。ただ、先にらせておくよ』
その文字を読んだ瞬、私の目から、すっといものが零れ落ちた。
「全部解決したから配しないで」ではない。
「をしてくれ」でもない。
困っている現実をそのまま提示し、妻と共し、自分の責任の範囲で解決策を探りながら、ただ事実として母親に報告する。
そこには、誰かを欺くための目隠しも、誰かの顔を伺うための忖度もしなかった。
歳になった息子が、ようやく私と対等な「の独した」として、言葉を交わしてくれたのだ。
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私は涙をの甲で拭い、画面に返信を打ち込んだ。
『解しました。決まったらまた教えてね』
送信ボタンを押す。
数秒、既読がつき、翔太からい返信が届いた。
『うん、分かった』
それだけだった。
私はスマートフォンをテーブルのに置き、く、く息を吸い込んだ。
部の窓から、の柔らかなが吹き抜けていく。
、私たちを縛り続けていた、目に見えない嘘の鎖は、もうどこにもなかった。
私たちは族をやり直したのではない。
それぞれが自分のでち、自分のを引き受けるための、しい境界線を引き直したのだ。
その境界線の向こうで、息子は息子の庭を築き、元夫は元夫の老いをき、そして私は、私だけの確かなを歩んでいく。
私はマグカップをに取り、淹れたての温かいお茶をに含んだ。
静かな部に、壁掛け計のカチカチという規則正しい音が響いている。
それは、誰にも邪魔されることのない、私の本物の常の音だった。