"夫の葬儀で別の男を父と呼んだ息子" 第16話
列ろの拍
季節は巡り、の澄み渡る青空が広がっていた。
公学の広いグラウンドには、とりどりのクラス旗がはためき、メガホンを叩く徒たちの歓声が響き渡っていた。
季体育祭。
学になった悠斗は、陸部に入り、学選抜リレーのアンカーを任されていた。
私は保護者席の最列で、ビデオカメラを構えていた。
隣の席の母親たちが「次、選抜リレーよね」「誰がアンカーるのかしら」と賑やかにプログラムをめくっている。
ふと気になって、私は列ほどろの、観客席の最段に目を向けた。
になったパイプ子の端に、なウインドブレーカーを着た佐伯が座っていた。
首から双鏡をぶらげ、周囲の保護者たちに迷惑をかけないよう、ひっそりと背筋を縮めて座っている。
先週、悠斗が自分から佐伯にをいたのだ。
『今度の曜、体育祭でリレーのアンカーをります。もし暇だったら、見に来てください』
話番号もメールアドレスもっているのに、悠斗はあえて便箋にペンでき、切を貼ってポストに入れた。
それが、悠斗なりに見つけた「誠おじさん」との距だった。
佐伯は私と目がうと、さく、慮がちにをげた。
私もまた、ごく自然に会釈を返した。
隣に座ることはない。族の輪のに入り込むこともない。
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だが、そのを拒絶する必も、もうどこにもなかった。
「各選、位置について――」
アナウンスが流れ、グラウンドの喧噪が瞬で静まった。
ピストルの鋭い破裂音とともに、第者がびしていく。
バトンが第者、第者へと渡り、悠斗が待つアンカーゾーンへとづいてくる。
悠斗のクラスは位。トップとはメートルほどの差があった。
「悠斗――っ! いけ――っ!」
私はわずちがり、カメラを構えたまま叫んでいた。
バトンを受け取った悠斗が、爆発な加速でを追う。
コーナーを曲がり、ホームストレートへ入る。
抜きり、トップの徒の背に並びかける。
歯をいしばり、だけを見据えて腕を振る息子の姿は、かつて補助輪をすのを怖がって泣いていた幼い子供とは、完全に別のき物だった。
ゴールテープを胸で切った瞬、歓声が爆発した。
同着に見えるほどの僅差。だが、判定は悠斗のクラスの着だった。
仲たちが駆け寄り、悠斗の背を叩いて抱きっている。
悠斗は息を切らしながら、顔をげて保護者席を見げた。
そして、私の姿を見つけると、満面の笑みを浮かべて観客席へとってきた。
「お母さん!」
フェンス越しに駆け寄ってきた悠斗は、汗だくの額を拭いながら、誇らしげに胸を張った。
「勝ったよ! 抜いた!」
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「見たわ! すごかった、悠斗、本当にかっこよかった!」
私はフェンス越しにを伸ばし、息子の汗で濡れたをわしゃわしゃと撫でた。
悠斗は照れくさそうに笑い、それから私の肩越しに、列ろの客席へと線を向けた。
佐伯がっていた。
双鏡を胸元にろし、両をく掲げて、力く拍を送っていた。
その顔は、涙でぐしゃぐしゃだったが、これ以ないほどれやかに笑っていた。
悠斗はフェンスから歩がり、佐伯に向かってをく突きげた。
掌をきく広げた、ハイタッチの図。
佐伯もまた、満面の笑みで同じようにを掲げ、力く空を打った。
言葉はなかった。
抱きうことも、父親と名乗ることもない。
ただ、空を隔てたその乾いた拍とのひらのに、が積みねてきた確かながしていた。
拓也。
あなたが、このを許せなかった気持ちは、今でも分かる気がする。
でもね、あなたのした息子は、誰かを憎み続けることで自分を証するような子にはならなかった。
つのいを抱えたまま、この子は自分ので、を向いてっている。
の爽やかなが、グラウンドの煙を優しく吹き抜けていった。
私はカメラの録画ボタンを止め、青く澄み切った空を、く、く見げた。