"「お前はただの手伝いだ」" 第17話
自由にお断りいただけます
夕暮れのが、社のブラインドの隙から差し込み、机のの類を赤く染めていた。
株式の半分。専務の子。
昨までなら、私がの労働の対価として、喉からがるほど求めていたはずの正当な権利だった。
私は類に線を落とした、ゆっくりと顔をげた。
「修司」
「ああ」
「静さんが私に遺したのは、あのの葬儀の全権よ。私のこれからのを、あなたやこの会社に差しすことまで遺言にかれていたわけじゃないわ」
修司の表が凍りついた。
「千……お、まだっているのか? 真奈美のことはさっき解雇の続きを取った。俺が悪かった。おが裏でどれだけ支えてくれていたか、おふくろがんで初めて――」
「ってなんかいないわ」
私は首を横に振った。
「ただ、分かったのよ。私はこの、あなたのやり方に傷つきながら、それでも『このには私が必なんだ』とい込むことで、自分のプライドを満たしていただけだったの。静さんのにあった通りよ。私はあなたの共犯者だった」
私はちがり、持参していた黒いトートバッグを持った。
「あなたとやり直すことも、この会社で専務になることも、結局は同じことよ。私はもう、誰かの罪滅ぼしのためにきるのも、誰かの暴をで繕うのも、輪際ごめんなの」
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「千!」
ちがろうとする修司を、私は穏やかな差しで制した。
「さようなら、修司。……お母さんを、ちゃんと送れてよかったわね」
私は度だけ軽くをげ、社のドアノブにをかけた。
振り返ることはしなかった。
廊を抜け、自ドアをくぐると、の夕暮れのたい空気が全を包み込んだ。空には番がく輝いていた。
、ずっと私の肩にい込んでいたい枷が、音をててれていくのをじていた。
ヶ。
隣町の古びた商の片隅に、ほどのさな事務所があった。
『千葬儀相談』
板には、会社名ではなく、私の名だけが控えめにかれていた。スタッフは私と、定退職した元納棺師の女性のだけだ。
午の柔らかなが差し込む相談で、私は向かい側に座る若い女性にお茶を淹れていた。
代半ばの彼女は、黒いカーディガンを固く握りしめ、机のに広げられた葬儀社の見積を見つめながら、今にも泣きしそうな顔をしていた。昨、父親をくしたばかりだという。
「……千さん」
女性の声が、震えていた。
「親戚のたちに言われたんです。この万円の檜の棺と、万円の祭壇をつけないと、お父さんが成仏できないって……。でも、私、派遣切りに遭ったばかりで、そんなおどこにもなくて……。
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私、親孝ですよね……?」
私は湯呑みを彼女のに静かに置いた。
そして、赤のボールペンをに取ると、見積の最段にある額なオプションの欄に、本の横線をすっと引いた。
「いいえ、全くそんなことはありませんよ」
私は彼女の張った目を見つめ、微笑みかけた。
「この部では、誰かに向けて何かを証する必なんてないんです。……まずは、お父様がどんなご飯が好きだったか、どんなに笑うだったか、そこからゆっくりお話しを聞かせていただけますか?」
女性の目から、堰を切ったように涙が溢れした。彼女は両で顔を覆い、く頷いた。
その頃、キロほどれた倉岡葬儀社の本社ビルでは、修司が、社でしいパンフレットの最終正に目を通していた。
広げられたカタログの表には、最の設備と、清潔なホールの写真が並んでいる。
修司は万をに取り、すべての価格表の最部、これまで何もかれていなかった余を指先でなぞった。
そこには、しく印刷された、さな黒いゴシック体の文字が刻まれていた。
『※当社の提示するすべての推奨項目およびオプションは、ご遺族のにより、自由にお断りいただけます』
修司は窓のを見げた。
ひとつないれの空を、からのいが吹き抜けていく。
彼は汚れていないしいワイシャツの袖をしだけ捲り、再び静かにペンをらせ始めた。