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"「貧乏神」と追い出された私、実家に帰ったら元夫一家が慌て始めました" 第1話

午分。 い取りでオートロックを抜け、自宅マンションの玄関ドアをけた瞬、佐々智美(ささき・ともみ、歳)の腔をくすぐったのは、自分が朝仕込んでいったはずのスパイスのり――ではなく、ツンとを突く級な檀の線と、独特の化粧品の匂いだった。

(……また、来てる)

胃の奥がキュッと縮みがる。 靴を脱いで廊へむと、リビングの煌々としたLED照の、ソファの央にふんぞり返った義母・悦子(歳)が、待ち構えていたように目を眇めた。には、智美が事に使っていた欧製のマグカップ。には勝に淹れられた級コーヒーが湯気をてている。

「あら、智美さん。ずいぶん遅かったじゃないの。主婦が夜の過ぎまでほっつき歩いて、体どこで油を売ってたのかしらねえ?」

「……お疲れ様です、お義母さん。今期末の棚卸しと決算作業で、課全体で残業だったんです。蓮(れんと)さんも同じ部署ですから、ごのはずですが」

智美が努めて穏やかに答えると、寝からスウェット姿の夫・蓮(歳)がスマホを片にてきた。同じ会社で社内結婚した先輩であり、夫であるはずの男は、智美を庇うどころかヘラヘラと笑いを浮かべた。

「おいおい、智美。母さんに答えすんなよ。男の残業と女の残業じゃが違うだろ? 俺は疲れてに帰ってきてんだよ。

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なのに晩飯もできてないってどういうこと?」

「蔵庫に、朝作ったチキンカレーのお鍋が入っているはずです。温めればすぐべられるように……」

そこまで言いかけた瞬、キッチンからガチャンと乱暴に鍋の蓋をける属音が響いた。 義母が蔵庫から勝に鍋を引きずりし、を覗き込んでげさに顔を顰めている。

「これよ、これ! 私が言いたいのは! めた事を温め直して旦さんにべさせるなんて、私の辞にはあり得ないわ。事は作りてが番美しいの。妻のっていうのはね、帰ってきた夫のためにのにって、来てを差しす温もりを言うのよ。にも言ったのに、どうして覚えられないのかしら?」

「お義母さん、カレーはし寝かせた方がが染みますし、私もフルタイムで働いて計を支えています。毎晩から作るのは物理に無理です」

たった言、理然と事実を述べただけだった。 だが、その瞬、義母の眉が吊りがり、ヒステリックな甲い声がリビングに炸裂した。

「言い訳ばっかり! だけはね! 私はね、仕事をするなとは言ってないの。主婦としての本分を疎かにしてまで働くなんて本末転倒だって言ってるのよ! だいたい、スーパーの来いの惣菜を卓に並べるなんて言語断だし、ミールキット? あんな野菜を切るすら惜しむ抜き料理、がこもるわけがないじゃない! 男の働く欲は、妻の笑顔と来ての料理で湧いてくるの。

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そうでしょ、蓮?」

「そうそう。母さんの言う通りだよ。智美はさ、なんか全体にがこもってないんだよな。もっと庭になれよ」

蓮は蔵庫から缶ビールを取りし、ソファにく腰掛けた。 智美の元で、限界まで張り詰めていたの糸が、ギリギリと鳴をげていた。

智美と蓮が結婚したのは、。 世界を未曾の染症が襲い、誰もがマスクを着け、制限をいられていた期の真っ只だった。 結婚式や披宴は切挙げず、役所に婚姻届を提しただけの静かなスタート。互いの両親の顔わせすら、染拡を恐れた義母のい望により、画面越しのオンライン通話で済ませていた。

当、暮らしだった義母・悦子は「万が、染したら誰が病してくれるの!」と異常なほど怯え、自宅に引きこもっていた。 智美はそんな義母を気遣い、週に何度も話をかけて愚痴を聞き、買いしの代を申しるなど、できる限りの配慮を尽くしてきたのだ。

だが――世のの自粛ムードが解禁され、社会が常を取り戻し始めたヶ。 突如として、悪のような々が幕をけた。

『智美さん、何かあったのために、鍵を持っておくのが族の常識でしょ?』 そう言って半ば引に奪い取っていった鍵を使い、義母は週に〜回、智美たちが仕事でのマンションへ昼堂々とがり込むようになったのだ。

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