"四枚の余った名札" 第17話
コサージュと最の席
の旬、野県のから簡易留が届いた。
桜の封筒のに入っていた『格通』を、結は居の窓際で何度もに透かして見ていた。
からの寮活に向けて、部の片隅にはしずつダンボール箱が積みがり始めていた。
に入ったあるの夕、結がダイニングテーブルに枚のプリントを置いた。
『第回 卒業証授与式のご案内』
部には切り取り線があり、保護者の欠票がついていた。
以なら、私はプリントを見ることもせず、「もちろんるわよ」と請けっていただろう。
だが、今の私は違った。
私はペンを握るに、スマートフォンを取りし、会社のカレンダーをいた。
、曜。
午の配送スケジュールと、の繁忙期に向けた員配置を確認する。すでに森副課と調し、そのの午は完全にバックアップ体制が組まれていた。
「……よし」
私は帳を閉じ、欠票の『席』の文字に、赤ペンで丁寧に丸をつけた。
保護者氏名欄に『美』と署名し、切りしたを結に渡した。
結はを受け取り、じっと見つめた。
「本当に、来られる?」
しだけ悪戯っぽく笑いながら尋ねる娘に、私は胸を張って答えた。
「ええ。午はずっと、体育館の保護者席に座っているわ」
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「遅刻もしない?」
「分には着く予定よ」
結はくすっと笑い、欠票を通学カバンに仕った。その笑顔には、もうあの凍りつくような緊張も、諦めもなかった。
。の朝の空気は、まだ肌寒かったが、空はどこまでも青く澄み渡っていた。
体育館の入りで、受付のPTA役員からさなのコサージュを渡された。胸につけると、全ピンのみがよくスーツの襟を引っ張った。
保護者席は、クラスごとにパイプ子が然と並べられていた。
私は指定された組の列のほど、通側の席に腰をろした。
周囲の保護者たちが、カメラの準備をしながら談笑している。
ふと、列斜めの席に、見覚えのある紺のスーツ姿を見つけた。
野寺織だった。
隣には夫らしき男性が座り、娘の奈々を待っていた。
織がふと振り返り、私と目がった。
彼女は驚いたように目を見張り、それから柔らかく微笑んで、静かにをげた。
私もまた、胸のコサージュにを当て、くお辞儀を返した。
彼女の胸にも、自分の娘を見送るための、本物の名札が揺れていた。
なピアノの音が鳴り響き、体育館の扉がいた。
「卒業、入」
拍の、制姿の徒たちが背筋を伸ばして歩いてくる。
組の列の先から番目。結が歩いてきた。
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髪をすっきりと結び、をしっかりと見据えた横顔は、いつのにか幼さを脱ぎ捨て、凛とした女の顔になっていた。
結の線が、保護者席を流れていく。
最列にいた織と目がい、結はさく会釈した。
そして、その線は迷うことなく、ほどの列へと向けられた。
私と、結の目が真っ直ぐにぶつかった。
結は歩みを止めることはしなかった。
けれど、私の姿を捉えた瞬、その元がふっと緩み、微かな笑みがこぼれた。
驚きはなかった。
そこに母親がいることが、まるで最初から決まっていた世界の法則であるかのように、結はただ静かに、当たりのように私を見つめていた。
私は膝ので両を揃え、娘に向かってさく頷いた。
名札のいらない所。
の名を借りる必のない、たったつの席。
私はそこに座り、旅っていく娘のろ姿を、ののでいつまでも見つめ続けていた。