"十一時八分の「家に着きました」" 第1話
分の
の、私はスマートフォンの番号を変えた。
の番号には、婚した元夫の親戚や、もう度と顔をわせたくない仕事関係の連絡先が幾にもこびりついていたからだ。歳という途半端な齢でを仕切り直すには、指先つで関係をリセットするのが番っ取りかった。
しい番号をに入れた翌の夜だった。
画面の計が分を指した瞬、くバイブレーションが震えた。
メッセージアプリではなく、番号宛てのいSMSだった。
『に着きました。』
それだけだった。
差は登録のない桁の数字。
違いメールだろうとった。誰かがしい族か恋に、帰宅をらせるつもりで数字を桁押し違えたのだ。私はそのまま画面を伏せ、ベッドに入った。
翌の夜、分。
『今もに着きました。』
また同じ番号からだった。
その翌も、そのまた翌も届いた。
文章は決して増えなかった。
「疲れた」とか「はい」とか、相の私活を匂わせる愚痴は切ない。
ただ、夜遅くに「に着きました」という報告だけが、無質に画面へ浮かびがる。
はがかったが、によっては分のこともあれば、夜を回ることもあった。
度だけ、曜の夜にこんな文面が届いた。
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『今はし遅くなりましたが、無事です。』
何度も「番号をお違えではありませんか」と打ち込んで、送信ボタンので消した。
返信をすれば、相は恐縮して謝るだろう。そして連絡は途絶える。それが普通の分別あるの対応だ。
けれど、私はどうしても送信ボタンを押せなかった。
に婚したとき、私は誓ったのだ。
自分から引き受けていない責任には、指本触れないでおこうと。
元夫との暮らしは、頼まれもしない責任の押し付けいだった。
「真理子はしっかりしているから」
「真理子に任せておけばだから」
そう言われて義父母の介護の段取りを押し付けられ、計の穴埋めをさせられ、最には疲れ果てた元夫のの受け皿にまでされた。
だから決めたのだ。
約束していないことは、私の仕事ではない。
返事をしないということは、関係を持たないということだ。
私はただの、違えて波を受け止めてしまっただけの無関係な端末にすぎない。そう自分に言い聞かせていた。
そうして、が過ぎた。
いつのにか、私は夜のを過ぎると、無識にスマートフォンの画面を確認するようになっていた。
画面が点灯し、あのいが表示されると、どこかで胸の奥がさく息を吐く。
どこの誰かもらないが、今夜もどこかの玄関ドアをけ、靴を脱ぎ、部のかりをつけたのだと確認して、私は眠りにつく。
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それは会話ではなく、ただの夜の気配のようなものだった。
異常が起きたのは、の肌寒い曜だった。
を過ぎても、画面は暗いままだった。
分。
半。
付が変わってになっても、通は来なかった。
仕事のトラブルだろうか。あるいは同僚とみにって、終を逃しただけかもしれない。
そんなことはのに何度かあった。そういながら毛布を引きげたが、結局その夜は浅い眠りを繰り返した。
翌朝、に目が覚めて番に確認したスマートフォンにも、しい通は件も届いていなかった。
通勤の吊り革に掴まりながら、私は指先を震わせていた。
こんなことは私の領分ではない。
相が誰であれ、見ずらずのの活だ。事故に遭っていようが、携帯を落としていようが、私には何の関係もない。
分。
会社の最寄り駅のホームにりったとき、私はできずに、通話履歴にも残っていないその桁の番号をタップした。
で、初めてのことだった。
に当てた受話から、たい子音が規則正しく鳴り響いた。
プルルル、プルルル。
回鳴っても、回鳴っても、相がる気配はなかった。
やがて「波の届かない所にあるか、源が入っていないため……」というアナウンスが流れ、私は逃げるように通話を切った。