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"廃墟旅館の双子と初恋の再会" 第20話

守の息子もまた、父親の背を追って同じホテルで支配を目指して修を積んでおり、専学代から親交のあった千尋と自然と恋に落ち、結ばれることとなったのだ。 同業社のトップのに嫁ぐ以、千尋がうちの旅館に残るわけにはいかない。守の息子なら、性も誠実さも百点満点であり、して娘を任せられる相だった。 ……だが、父親としては、やはり寂しいものは寂しかった。

「ううっ……千尋がお嫁にっちゃったら、お父さん、寂しくて毎晩枕を濡らしちゃうかも……」 フロントのカウンターで俺がめそめそと愚痴をこぼすと、隣で請求をチェックしていた結菜と菜が、容赦のないややかなツッコミを浴びせてきた。

「泣くなら、夕飯の配膳指示をし切ってから泣いてよねー。伝票がわなくなるから」 「そうそう。だいたい、お父さんって優しくするとすぐ調子に乗ってベタベタしてくるんだから、このくらい厳しく扱ってちょうどいいのよ」 「おい! 実の父親に対する態度か、それが!」

「ふふっ、そんなこと言ってると、陽菜子(ひなこ)ちゃんに嫌われちゃうわよ?」

奥の厨から、割烹着を着た絵里が、悪戯っぽく笑いながら顔をした。 そのには、今歳になったばかりの、らしい女の子が抱かれていた。

俺と絵里のに、にまれたしい命――女の陽菜子だった。

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千尋が名付け親となってくれたその子は、祖父母である俺の両親や、の姉たちからぬほど甘やかされ、すくすくと元気に育っていた。

「陽菜子がいれば、千尋ちゃんがお嫁にっても、また『板姉妹』が復活できるもんね!」 結菜が陽菜子のぷくぷくの頬を突っつくと、菜も腕を組んで頷いた。 「そうね! それに、千尋ちゃんが旦さんと喧嘩したらいつでも戻ってきて、堂々の『板姉妹』になっても全然いいんだから!」

「ちょっと、とも! まだ結婚式も挙げてないのに、縁起でもないこと言わないの!」 千尋が奥からバタバタと駆け込んできて、双子の背をピシャリと叩いた。 だが、千尋はすぐに絵里のへと歩み寄り、おしそうに陽菜子のを撫でると、絵里の目を見つめて微笑んだ。

「……でも、絵里さん。本当に、いつでも遊びに帰ってきてもいい?」

絵里は目を潤ませ、抱いていた陽菜子を抱き直すと、千尋の体を優しく片腕で抱き寄せた。 「当たりじゃない。ここはあなたのなんだから、いつでも帰ってきていいのよ。……千尋ちゃんは、私の事な、事な女なんだから」

「お母さん……!」

極まった千尋が、絵里の胸に顔を埋めて涙をこぼす。 の歳をかけて本物の母娘となったが、抱きって涙を流す景。 俺は胸を打たれ、わず涙ぐみながら、をまとめて両腕で力いっぱいに抱きしめようと歩み寄った。

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「おお……! 俺のする娘と妻よ……!」

だが、俺が腕を伸ばした瞬。 からガシッ!と鋼のような力で、俺の両首が掴まれた。

見ると、結菜と菜が、酷な仁王ちのまま俺の腕を万力のように締めげていた。

「「お父さん、邪魔しないで。空気読みなよ」」

「……えっ!? 俺、邪魔なの!? 父親なのに!?」

ギャーギャーと騒ぐ俺たちの姿を見て、千尋と絵里が顔を見わせ、吹きすように笑いした。 抱かれた陽菜子も、真似をするようにさなをパチパチと叩いてケラケラと笑っている。

こんなに、族のではいつだって雑に扱われ、いじられがちな俺のポジションだけど――。

玄関の簾の向こうからは、今もしくやってきた観客たちの、楽しげな駄の音が響いてくる。 かつてすべてを諦め、朽ち果てていたこの所は、今や族全員の、そしてこの町を訪れるすべての々の、温かな『帰るべき所』として、力く息づいていた。

俺はこのおしい族の笑顔と、この切な旅館の簾を、命の続く限り守り抜いていく。 差し込む柔らかなので、俺は未来に向かって、静かに、けれど誇らしげに微笑んでいた。

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