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"「名前を書くな」公害病の申請を止めた父と、娘の「息がしたいだけ」" 第11話

「これも捨てなかったんだ」

「捨てようとったことはある」

「どうして残したの?」

忠雄はし考えた。

「忘れたら、昔の俺に戻る気がしたからかな」

「昔のお父さん?」

「分からないことを、分からないまま見ないふりしてた頃の俺」

忠雄は帳を閉じた。

「あのの設備と、おの発作が関係あったかは今でも分からん。たぶん分からん。でも、分からないなら何もしなくていいってことにはならない。それだけはから分かった」

美紀は父の横顔を見た。

49

申請に。

父は娘へ言った。

「名くな」

あの

美紀は。

父が自分より会社を選んだ。

そうった。

けれど。

本当は。

忠雄自

どちらかを選べと言われたようにじていたのだ。

族を養った

息を苦しそうにする娘。

仕事への誇り。

活への

会社への恩。

設備を止めなかった記憶。

になれば。

もっといいところへめるという希望。

どれかつだけなら。

簡単だった。

でも。

全部が。

に。

本当だった。

公害という問題のには。

民。

加害と被害。

という言葉だけでは。

簡単に分けられないたちもいた。

で働き。

夜は咳をする子どもの背をさする父親。

町の空気を配しながら。

その町のから料を受け取る族。

会社に謝しながら。

会社へ改善を求めなければならない作業員。

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忠雄も。

そのだった。

だからこそ。

申請への署名は。

会社を捨てるためのものではなかった。

娘の苦しさを。

会社への恩義より。

さく扱わないためのものだった。

美紀は古い申請を箱へ戻した。

そのは父と母と。

昔話をしながら夕べた。

帰り際。

玄関で靴を履いていると。

忠雄が聞いた。

「最、ぜん息はどうだ」

「だいぶいいよ」

「苦しいは?」

「薬あるから丈夫」

するなよ」

美紀は振り返った。

の頃。

何度も。

聞きたかった言葉だった。

でも。

今は。

笑って答えられる。

「分かってる」

499、公害健康被害補償制度の本格な運用が始まり、気汚染の著しい指定域では、定の件を満たした気管支ぜん息などの患者が認定・補償の対象となっていった。こうした制度は患者の治療や活を支える方、公害と産業の狭で暮らしていた族に、それまで言葉にできなかった矛盾を突きつけるものでもあった。

は。

町を支えていた。

に。

町の空気について。

問われるでもあった。

そこに勤めるは。

単純な悪ではない。

病気になったも。

を憎みたいわけではない。

にとって。

枚の申請が変えたのは。

空のではなかった。

美紀の病気が。

突然治ったわけでもない。

忠雄が。

を辞めたわけでもない。

ただ。

族ので。

つだけ。

変わった。

苦しいが。

「苦しい」

と言った

その声を。

ほかの事より先に。

聞くようになった。

それだけだった。

けれど美紀にとっては。

それこそが。

あの

父に名いてほしかった。

本当の理由だった。

※本作は、昭49(1974)当の公害健康被害に対する認定・補償制度や、臨帯周辺で暮らした々の社会状況を背景として構成した創作です。登物・企業名・庭内の来事は創作です。

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