"汚れた手と呼んだ義母へ" 第14話
あったのは、自分自のでしいを踏みしていくという、澄み切った解放だけだった。
がまり、京都の並みが鮮やかな葉に包まれる頃。
『グランドメゾン京都』には、京都府医療監督局からの厳な業務改善命令がされた。
違法な過剰投薬をっていた専任医師は業務止処分となり、施設は幅な体制見直しを余儀なくされた。計画の頓挫と億円の融資返済に追われた佐伯崇は、常務理事の辞任に追い込まれ、佐伯医療グループは幅な縮を余儀なくされた。
方、佐伯健郎は、恵子たちの配によって、公な認症専のケアホームへと無事転院を果たしていた。
そこは豪華な具こそなかったが、当たりの良い庭があり、あるスタッフたちが穏やかに寄り添う所だった。過剰な薬物から解放された健郎は、バッハのレコードを聴きながら、穏やかな笑顔を取り戻していた。
折訪れる恵子や美咲に対して、健郎は「いつも良い講義をしてくれてありがとう」と、謝の言葉をかけるのだった。
そして。
澄み切ったれの京都。
禅寺の疎沿いには、鮮やかな赤や黄に染まった葉のトンネルが続いていた。面には落ち葉が静かに浮かび、の柔らかながキラキラと反射している。
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その閣の沿を、の女性が並んで歩いていた。
坂本恵子と、美咲だった。
美咲は以の総病院を退職し、このから恵子と同じ域の「訪問護ステーション」で働き始めていた。
病棟ので械に業務をこなすのではなく、ひとりの活に寄り添い、そのらしいき方を支えるコミュニティ医療の現。そこで働く美咲の表は、とは見違えるほどききとしており、凛とした美しさが満ちていた。
「美咲、しい職にはもう慣れた?」
恵子が尋ねると、美咲は爽やかな笑顔を浮かべた。
「ええ、すごくやりがいがあるわ。昨もね、暮らしのおばあちゃんが『美咲さんが来てくれると、のがるくなる』って言ってくださって……お母さんがずっと切にしてきたもののが、今すごくよく分かるの」
「そう。それは良かったわね」
恵子は嬉しそうに目を細めた。
は疎沿いにある、さな古民の湯豆腐へとをめた。
入れのき届いた庭園を望む畳の席につき、運ばれてきた温かい湯豆腐となすの田楽に舌鼓を打つ。湯気がふんわりとちり、汁の優しいりが部を満たす。
「美しいわね、お母さん」
「ええ、本当に」
美咲はレンゲで豆腐をすくいながら、ふといしたようにの葉を見つめた。
「って、あっというね。
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あのは……本当に々なことがあったけれど」
「そうね」恵子は穏やかに微笑んだ。「でも、美咲。あなたは自分で自分のを選び取ったのよ。誰かの肩や資産にすがるのではなく、自分のでち、自分の誇りを守るを選んだ。私はそれを、誇りにっているわ」
「お母さんがいてくれたからよ」
美咲は真っ直ぐに母の目を見つめた。
「お母さんが、あの料亭で胸を張って『自分の仕事に誇りがある』って言ってくれたから。だから私も、自分を偽ってまでにわせるのが違いだって気づけたの。お母さんは、私の目標よ」
恵子はし照れくさそうに笑い、温かいお茶をに含んだ。
「さあ、めないうちにいただきましょう。午からは、とも訪問の予定が入っているんだから」
「はい!」
美咲はきく頷き、美しそうに湯豆腐をへと運んだ。
料亭で辱められた漆器の汁椀は、今、坂本の卓で毎切に使われている。職の技と温もりが込められたその器は、偽りの名の箱のよりも、ずっと誇らしく輝いていた。
をると、の澄んだ空から、あたたかな陽がの肩を優しく包み込んだ。
誰に媚びることもなく、誰に支配されることもなく。
自分たちの専性と誇りを胸に抱き、母と娘は、に満ちたしいへと、しっかりと歩みをめていった。