"義妹の投資話に判は押さない" 第1話
級老舗料亭「松崎」の個には、格式い檜のりと共に、どこか歪んだ緊張がち込めていた。
のには季節のけが飾られ、塗りの美しい会席料理が順々に運ばれてくる。今は浅野悦子の歳の誕を祝う還暦超えの寿宴だった。本来であれば穏やかな族の団らんがわれるはずのその所で、塗りのテーブルのに唐突に広げられたのは、祝いの品ではなく艶やかなフルカラーのパンフレットだった。
「お兄ちゃん、智さん。これ、本当にお母さんの将来を考えた最の特別提案なの。普通のに預けておくだけなんて、今の代は資産をドブに捨ててるのと緒だよ?」
声を弾ませて言ったのは、健太の妹である坂本莉乃だった。歳になる彼女は、自称「自由資産運用アドバイザー」として、普段からブランド物のバッグや派なアクセサリーをにまとい、自らの成功をアピールしている。今もの装飾がついたジャケットの袖を捲りげ、弁を振るっていた。
莉乃が差ししてきたのファイルには、『特別資産運用プラン・シニアライフパートナーシップ』と文字で印字されていた。
「利パーセントの確定運用。毎分配型だから、お母さんの補填にもぴったりでしょ?今回は特別ルートで枠が取れたの。
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本来なら最資額は千万円からなんだけど、私のコネで特別に百万円から参加させてもらえることになったのよ」
莉乃は慣れたつきで、ファイルのから枚の類を取りした。それはすでに莉乃の跡で部の記入が済まされている、の資座振替依頼と資申込だった。
「だからね、お兄ちゃんたちのところにある百万円の定期預、今ここで続きの同をしてほしいの。お母さんの座から直接すと税とか面倒な続きがあるから、度お兄ちゃんたちの座から指定座に振り込んでもらう形にするから。半には運用益がついて、元本もいつでも戻せるからして」
隣に座る義母の悦子も、目を細めて莉乃の肩を抱くようにしながらく頷いた。
「莉乃は本当に親いの良い子ねえ。自分の柄にしないで、こうやって私や族のことを番に考えてくれるんだから。ねえ健太、おも浅野の男なんだから、妹のこの素らしい提案にしっかり協力しなさい。男としての責任を果たすでしょう」
悦子の言葉を受けて、私の隣に座っていた夫の健太がを乗りした。健太の顔には、困惑と同に「母親の期待に応えたい」という焦りのが浮かんでいる。
「智……百万円なら、うちの定期預のにちょうどあるよな?子供の教育費と居の用に貯めてたやつだけど……おふくろの老資になって、しかも増えて戻ってくるなら、にて替えるのもありじゃないか?莉乃もこうやって専として言ってくれてるんだし」
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健太の線が、縋るように私へ向けられた。
私は静かに息を吐きし、膝のに置いていたハンカチを折りたたんだ。
私は堅建設会社で、財務と会計の現にを置いてきた。毎毎、膨な契約を精査し、資繰り表を確かめ、法リスクや決算の数字と向きい続けている。そんな私の目から見れば、今目ので繰り広げられている景は、あまりにもお粗末で、危険極まりない罠でしかなかった。
「莉乃さん」
私は静かだが、個の濁った空気を切り裂くような確な声で呼びかけた。
「何?智さん。もしかして、こういう投資の話って難しくてピンと来ない?まあ、智さんはな会社の経理事務だから、億単位のく資産運用の世界なんて馴染みがないかもしれないけど」
莉乃は馬鹿にしたような笑みを浮かべ、バサバサとしたつけまつげを揺らした。
私は莉乃の煽りには切乗らず、テーブルののパンフレットに差し指を滑らせた。
「このパンフレットに記載されている『同会社ジー・グローバル・アセット』という会社名、それと裏面にさく記載されている所と代表者名ですが……先週、私が会社の財務リスク管理の業務で確認した、融庁のWebサイトに掲載されている報と完全に致しています」