みかん小説
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"存在しない孫" 第10話

普通の々。

そのに、々。

母の名てくる。

『直子は今も忙しそうだった』

『無理をして笑っている気がする』

『もっと自分のためにきてほしい』

私はページをめくった。

そして。

付のページにたどり着いた。

祖母がくなる

文字は震えていた。

織へ』

そこから先を読む。

『あなたがこれを読む頃、私はもうこのにいないでしょう』

胸が詰まった。

『拓の箱を見つけたなら、きっとあなたは驚いたといます』

祖母はっていた。

いつか誰かが見つけることを。

『変なことをしているとったかもしれません』

私はし笑った。

確かにった。

しないのために、荷物を残すなんて。

普通ではない。

『でも、私はあの子を待っていたわけではありません』

その文で、が止まった。

あの子。

『私は、直子が選ばなかったを忘れたくなかったのです』

ゆっくり読みめる。

『母親というものは、子どものためなら何でもできます』

『でも々、その優しさので、自分自をなくしてしまうことがあります』

祖母の言葉だった。

『私は直子が私のために残ったことを、嬉しいといました』

『同に、申し訳ないともいました』

『だから、私は別の像しました』

『もし直子が自由に羽ばたいていたら』

『もし違う所で暮らしていたら』

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『もし、そこで族を作っていたら』

『そこにも、確かに幸せがあったはずだとったのです』

私はページから目をした。

祖母は、母のを否定していたわけではなかった。

ただ。

失われた能性まで、切にしたかったのだ。

でも。

祖母は最にこういていた。

織』

『あなたは、私と同じ違いをしないでください』

胸がざわついた。

切なうことと、そのを決めることは違います』

私は息を止めた。

『私は直子をしていました』

『だからこそ、直子の選ばなかったまで抱え込もうとしてしまいました』

『それはだったといます』

『でも、正しいだったかは分かりません』

しばらく、文字が読めなかった。

涙が落ちそうになったからではない。

むしろ逆だった。

祖母は最まで、自分の違いを見ようとしていた。

織』

『あなたは、誰かのためにさくしないでください』

『そして、誰かのを、自分の願いで作り直そうとしないでください』

そこで記は終わっていた。

私は静かに閉じた。

には、計の音だけが響いていた。

私は母に話をした。

「もしもし」

「お母さん」

「うん」

「おばあちゃんの記、読んだ」

母はし黙った。

「そう」

る?」

「なんで?」

「勝に読んだから」

母はさく笑った。

「もう、おばあちゃんらしいね」

私は窓のを見た。

「お母さん」

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「なに?」

「拓の箱」

「うん」

「どうする?」

話の向こうで、母が考えている気配がした。

「……分からない」

その答えは、もう以とは違って聞こえた。

迷いではない。

自分で決めようとしているの声だった。

織は?」

母が聞いた。

「あなたはどうう?」

私はし考えた。

の私なら、処分するべきだとったかもしれない。

しないのためのもの。

に縛られるもの。

でも今は違う。

「残したい」

「え?」

「でも、そのままじゃなくて」

私は言った。

「拓のためじゃなくて」

「おばあちゃんと、お母さんのとして」

母は黙っていた。

「本にするの?」

版社で働いている私らしい答えだった。

でも。

「違う」

私は首を振った。

「誰かに見せるためじゃない」

「じゃあ?」

「名を変える」

私は言った。

「拓じゃなくて」

「お母さんの名で残す」

話の向こうで、母が息を吸った。

「直子の

「直子が選んだ

「それを残したい」

い沈黙。

そして。

母が言った。

「ありがとう」

その声は、今まで聞いたことがないくらいさかった。

祖母のの片づけが終わった。

個の箱は、そのまま捨てなかった。

でも、以のように「藤原拓」という名で並べることもしなかった。

私は理した。

毛布。

財布。

さな

作りのもの。

そこにしい名をつけた。

『藤原直子が歩いてきた

それは、しなかった孫の記録ではない。

の女性が選び続けたの記録だった。

私は祖母のの鍵を閉めるに、もう度だけ庭を見た。

梅のが揺れていた。

になれば、またが咲く。

祖母がいなくても。

母が昔選ばなかった未来が消えても。

は続いていく。

私は玄関の横に置かれたさな表札を見る。

そこにはもう、

藤原拓

という名はなかった。

代わりに。

母の名があった。

藤原直子。

私はその文字を見て、鍵を閉めた。

しなかった誰かのためではなく。

今ここにいるのために。

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