"午前四時十三分" 第1話
母がんだの夜、私は初めて、母のスマートフォンの暗証番号をった。
りたいとったわけではなかった。
むしろ、最まで触れたくなかった。
きた母親ののに、自分がらないものがあることを認めるのが怖かったのだとう。
母――野由紀は、週に自宅の台所で倒れた。
発見したのは所にむだった。
暮らしになってからも、毎朝決まったにカーテンをけ、決まったに洗濯物を干し、決まったにスーパーへく。
そんなだった。
だから所のは、いつものになっても姿を見ないことを議にったらしい。
「お母さんらしい最だったわね」
葬儀の、親戚のがそう言った。
「最まで、自分のことは自分でしていたもの」
私は曖昧に笑った。
母らしい。
その言葉を聞くたびに、胸の奥がしだけざらついた。
母らしい。
几帳面で、真面目で、違いを嫌って、何でも先回りして決める。
私の。
学先。
付きう友達。
就職先。
母はいつも「あなたのため」と言った。
でも私にとって、その言葉は優しさよりもさにかった。
母の部を片付け始めたのは、葬儀から週だった。
私は京で版社の仕事をしている。
忙しいからという理由で、実に帰るを減らしてきた。
母が話をかけてきても、半分以は仕事だと言って切った。
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最に話したもそうだった。
「美咲、最ちゃんとべてる?」
「べてるよ」
「顔が悪いんじゃない?」
「丈夫」
「丈夫って言うほど――」
そこで私は遮った。
「お母さん、もう子供じゃないから」
話の向こうで、し沈黙があった。
その沈黙を、私は今でも覚えている。
った沈黙ではなかった。
しそうな沈黙だった。
でも当の私は、それに気づかないふりをした。
母の部には、驚くほど物がなかった。
も必最限。
器も分。
本棚には料理の本と、古い写真アルバムが数冊。
そのに、私の幼い頃の写真があった。
歳の運会。
学の卒業式。
の文化祭。
どの写真にも母がいた。
しれた所から、私を見ている母。
笑っている写真より、見守っている写真の方がかった。
昔からそうだった。
母はいつも私のしろにいた。
すぎるくらいくに。
スマートフォンを見つけたのは、机の引きしの奥だった。
黒いケース。
角がし擦れている。
最種ではない。
母は物をく使うだった。
充器につなぎ、源を入れる。
画面には、母が最に撮った写真が表示された。
それは何でもない写真だった。
朝の窓。
いカーテン。
まだ暗い空。
私はし眉をひそめた。
母はこんな写真を撮るではなかった。
なくとも、私のっている母は。
写真アプリをいた。
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そして、が止まった。
写真の枚数。
表示された数字を何度も見直した。
――842枚。
「……何これ」
独り言が漏れた。
旅写真でもない。
料理でもない。
景でもない。
ほとんど同じ写真だった。
部。
ベッド。
眠っている私。
最初の写真の付を確認した。
2007412。
私がまれた翌。
。
午413分。
私は眉にしわを寄せた。
偶然だとった。
最初の枚だけなら。
でも次の写真。
2007413。
午413分。
その次の。
2007414。
午413分。
さらに週。
か。
半。
全部。
午413分。
指がたくなった。
私は画面をスクロールした。
赤ん坊だった私。
幼児だった私。
学になった私。
学になった私。
になった私。
眠っている私。
机に突っ伏して眠る私。
ソファで眠る私。
をして横になっている私。
17。
母は毎朝、私を撮っていた。
も欠かさず。
「……なんで」
声が震えた。
りなのか、恐怖なのか、自分でも分からなかった。
母は何をしていたのだろう。
なぜ私に何も言わなかったのか。
なぜ毎朝、私が眠っているに。
なぜ413分なのか。
私は最の写真までスクロールした。
2024412。
午413分。
番しい写真。
そこに写っていたのは、37歳になった私だった。
実をて以経っている。
そのはずなのに。
写真のの私は、実の古い部で眠っていた。
私は息を止めた。
ありえない。
私はこの期、京のマンションにんでいた。
母のにはいなかった。
なのに写真には、私がいる。
画面を拡する。