"「病院に行くな」と娘を閉じ込めた婿の本当の目的" 第9話
蜘蛛の巣は全て張り巡らされた。
あとは、健がを空ける決定な瞬が来るのを待つだけであった。
そして、が方したかのように、その千載遇の会は訪れた。
ある曜の夜のことだ。
夕をとっていた健が、話にると眉をひそめた。
通話を終えた彼は、私を見て言った。
「お母さん、の昼に阪支社で緊急の株主総会がかれることになり、急いでかなければならなくなりました」
彼は、しで説した。
「の夜には戻れるといます。さやかの流は保温ポットに分な量を入れておきました」
彼は、厳しい目で私を見た。
「私がいない、絶対にドアをけたり、さやかを呼んだりしないでください」
彼は、酷な嘘をついた。
「今回は薬をいものに変えたので、数ぐっすり眠らせないといけませんから」
私はご飯茶碗に顔を埋めたまま、臓がびしそうな興奮を抑え込んだ。
箸を握るが微かに震えたが、すぐに平静を装って顔をげた。
「そう、仕事が事よね」
私は、穏やかな笑顔を作った。
「のことはお母さんがちゃんとやっておくから、配せずにってらっしゃい」
私は、彼を気遣うふりをした。
「阪はがたいでしょうから、着をしっかり持っていくのよ」
翌朝、私は夜けに起きた。
肉をたっぷり入れたお吸い物を作って、完璧な朝を用した。
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きちんとしたスーツ姿で、スーツケースを引いて玄関をる義理の息子。
そのろ姿に、私は笑顔でを振って見送った。
健を乗せたタクシーがの角を曲がり、完全に界から消えた瞬。
私はの鍵をガチャリとかけた。
玄関のドアも、内側からにロックした。
のは、ゾッとするほど静まり返っていた。
私は、まっすぐキッチンへ向かった。
米びつの奥くにを突っ込み、たい鉄のバールを取りした。
そして、携帯話を取りした。
たけしに、たった文字のメールを送った。
『始』と。
私は、鉄の棒を握りしめた。
階段を、股で段ばしにがった。
もはや、も恐怖もなかった。
ただが子を救いすために、獄のを打ち破る準備ができた、獣のような母がいるだけであった。
に握った鉄のバールのたい触が、骨の髄まで伝わってきた。
私は、材のドア枠と、健がしく取り付けた真っ黒な子ドアロックを見た。
そのの極わずかな隙に、バールの平らな先端をねじ込んだ。
で階段をしっかりと踏みしめた。
で壁を蹴って、全体をかける体勢をえた。
奥歯をぐっといしばる。
ので度も使ったことのない、ありったけの力を振り絞って鉄の棒をねじった。
バキッ。
な枠が、鳴をげた。
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私は、を止めなかった。
バールを引き抜き、ヒビのある部分にさらにく差し込んだ。
全体をかけて、バールにぶらがった。
ドン、という破裂音がした。
数万円もする子ドアロックが丸ごと吹きび、に転がった。
いドアが、ゆっくりといた。
押し込められていた猛烈な空気が、私の肺を打った。
隙から嗅いだ匂いとは比べ物にならない。
脳を麻痺させ、胃をかき乱すほどの烈な悪臭であった。
いを見ていないカビの匂い。
乾き切った尿と、片付けられていない便の匂い。
そして何よりも烈な、肉が腐り落ちる臭。
私は息を止め、暗のへとを踏み入れた。
壁を探りで探し、灯のスイッチを入れた。
い蛍灯のが、部の真んに置かれた巨なベッドを照らしした。
そのには、ではなく、いのベルベットの布団がこんもりと盛りがっていた。
微かに、本当に微かに揺れているだけであった。
布団から突きたは、まばらに抜けた髪が枕にこびりつき、見るも無残な状態であった。
私は、震える声で呼びかけた。
「さやか、さやか。お母さんよ」
私は、涙声で言った。
「私のい子」
声は、々に散った。
私の声に、さやかの目がゆっくりといた。
健がませた正体の薬物に冒されている。
焦点がわず、濁ってぼやけた瞳であった。
私だと気づいた娘の瞳孔が、微かに震えた。
声にならない鳴をげるように、唇が醜く歪んだ。
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