昭和41年春。15歳で集団就職のため上京した正一は、一年ぶりに山形の故郷へ帰る。成長した姿を家族に見せようと胸を弾ませていたが、駅に父の姿はなく、母の手紙には「父さんのことは、帰ってから話します」と記されていた。 家へ戻った正一が知ったのは、父の大怪我と、毎月送っていた仕送りが自分名義で貯金されていた事実。そして、弟・健二が進学を諦め、兄と同じ集団就職の道を選ぼうとしていることだった。 自分が働いた一年を否定せず、それでも弟には自分で人生を選んでほしい。正一の訴えをきっかけに、家族は一人へ負担を押しつけるのではなく、それぞれが支え合う道を探し始める。 故郷と東京、二つの居場所の間で少年が見つけたのは、離れることと失うことは同じではないという答えだった。集団就職の少年と家族の再出発を描く、昭和の成長物語。