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完結第10話
多摩川に沈んだ食堂
2001年、東京の外れにある古びた商店街で、小さな食堂を営んでいた脱北女性・李恩淑が突然姿を消した。 財布も通帳も店に残されたまま。厨房はいつも通りきれいに片づけられ、まるで翌日も店を開けるはずだったように見えた。けれど、彼女だけがどこにもいなかった。 町の人々に温かい食事を出し、孤独な老人たちの心の支えにもなっていたオンスク。だが、彼女の過去を知る者は少なく、警察の捜査もやがて「自ら姿を消したのではないか」という見方に傾いていく。 それから13年後。 多摩川の護岸工事中、土の中から錆びついた手下げ金庫が見つかる。中に入っていたのは、古い鍵と、李恩淑の名前が書かれた一冊の手帳だった。 手帳に何度も記されていた謎の文字「K」。 失踪前、彼女は何に怯えていたのか。なぜ町の人々は、ある男の存在を語ろうとしなかったのか。 13年間沈黙していた小さな商店街の記憶が、今、静かに動き出す。ミステリー|真実1.4万字5 628 -
完結第6話
犬吠埼に消えた三人
1994年元旦。初日の出を見に銚子・犬吠埼へ向かった50代の同級生3人が、旅館に荷物を残したまま忽然と姿を消した。財布も身分証も部屋に置かれ、携帯電話の信号は午前5時10分、3台同時に途絶えていた。 事故か、家出か、それとも事件か。 警察の捜査は難航し、事件は8年間、未解決のまま時が過ぎていく。だがある春の日、1人の同級生が警察署を訪れたことで、沈黙していた真実が動き出す。 初日の出の海で、彼女たちに何が起きたのか。 そして、夫が8年後に明かした“本当の罪”とは――。ミステリー|真実|真相8.6千字5 904 -
完結第6話
骨壷に眠る花嫁
結婚式の2日前、山田晴恵は突然姿を消した。 婚約者との口論、消えた財布、荒らされた形跡のない部屋。警察は彼女を「結婚を恐れて逃げた花嫁」と判断し、事件は自発的失踪として処理された。 家族は世間の冷たい視線に耐え、婚約者は“残された新郎”として同情を集めたまま、時間だけが過ぎていく。 しかし6年後、群馬県の国道18号線沿いで排水設備の交換工事中、コンクリート製の雨水桝から異様な包みが見つかる。 中にあったのは、人間の頭部。 歯科記録の照合により、それは6年前に消えた晴恵のものだと判明した。 彼女は逃げたのではなかった。 では、誰が彼女を殺し、なぜ道路脇のコンクリートの中に隠したのか。 “逃亡した花嫁”という嘘が崩れた時、婚約者が守り続けた6年間の沈黙が、静かにほころび始める――。ミステリー|夫婦|真実|真相9.1千字5 699 -
完結第5話
八年目のインタビュー
1999年、静岡市で有名アナウンサー・高橋正弘の妻、純子が忽然と姿を消した。 夫はカメラの前で涙を流し、「今でも妻の帰りを待っています」と訴えた。世間は彼を、妻を失った悲劇の夫だと信じて疑わなかった。 しかし8年後、未解決事件を扱う番組の収録中、切り忘れられたピンマイクが、正弘の“ある独り言”を拾ってしまう。 「純子……あの時、お前が黙ってさえいれば――」 その一言から、眠っていた事件は再び動き出す。 失踪前夜の不可解な通話記録、消えた保険証書、純子が残した日記。そして、自宅の庭に隠されていたもの。 8年間、悲劇の夫を演じ続けた男の仮面が、一本の音声によって剥がされていく――。ミステリー|真相7.0千字5 5161