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完結第6話
崖下に残された声
2018年秋、北アルプスの断崖下で、田中優人とその母・よしえの遺体が発見された。 唯一生き残ったのは、優人の妻・渡辺彩佳。彼女は泣き崩れながら「写真を撮ろうとして、2人が足を滑らせた」と証言した。現場の状況も事故として説明でき、警察はやがて悲劇的な同時滑落事故として処理する。 だが、若い刑事・伊藤健二だけは、彩佳の表情に違和感を覚えていた。 葬儀では悲劇の未亡人を演じ、8億円の保険金を受け取った直後、彩佳は姿を消す。事件はそのまま忘れられていくかに見えた。 それから7年後。 解体される田中家の旧宅の壁の中から、黒いタブレット端末が発見される。そこには、死んだはずの夫が残した音声、日記、監視の記録、そして事件前日の恐怖が克明に保存されていた。 「私は明日死ぬかもしれない」 夫が最後に残したその言葉が、完璧だったはずの事故を崩し始める。 愛なのか、支配なのか。 北アルプスの紅葉の下に隠された、女のもう1つの顔が暴かれていく――。ミステリー|人生逆転|真実8.4千字5 2849 -
完結第10話
多摩川に沈んだ食堂
2001年、東京の外れにある古びた商店街で、小さな食堂を営んでいた脱北女性・李恩淑が突然姿を消した。 財布も通帳も店に残されたまま。厨房はいつも通りきれいに片づけられ、まるで翌日も店を開けるはずだったように見えた。けれど、彼女だけがどこにもいなかった。 町の人々に温かい食事を出し、孤独な老人たちの心の支えにもなっていたオンスク。だが、彼女の過去を知る者は少なく、警察の捜査もやがて「自ら姿を消したのではないか」という見方に傾いていく。 それから13年後。 多摩川の護岸工事中、土の中から錆びついた手下げ金庫が見つかる。中に入っていたのは、古い鍵と、李恩淑の名前が書かれた一冊の手帳だった。 手帳に何度も記されていた謎の文字「K」。 失踪前、彼女は何に怯えていたのか。なぜ町の人々は、ある男の存在を語ろうとしなかったのか。 13年間沈黙していた小さな商店街の記憶が、今、静かに動き出す。ミステリー|真実1.4万字5 628 -
完結第6話
犬吠埼に消えた三人
1994年元旦。初日の出を見に銚子・犬吠埼へ向かった50代の同級生3人が、旅館に荷物を残したまま忽然と姿を消した。財布も身分証も部屋に置かれ、携帯電話の信号は午前5時10分、3台同時に途絶えていた。 事故か、家出か、それとも事件か。 警察の捜査は難航し、事件は8年間、未解決のまま時が過ぎていく。だがある春の日、1人の同級生が警察署を訪れたことで、沈黙していた真実が動き出す。 初日の出の海で、彼女たちに何が起きたのか。 そして、夫が8年後に明かした“本当の罪”とは――。ミステリー|真実|真相8.6千字5 904 -
完結第6話
骨壷に眠る花嫁
結婚式の2日前、山田晴恵は突然姿を消した。 婚約者との口論、消えた財布、荒らされた形跡のない部屋。警察は彼女を「結婚を恐れて逃げた花嫁」と判断し、事件は自発的失踪として処理された。 家族は世間の冷たい視線に耐え、婚約者は“残された新郎”として同情を集めたまま、時間だけが過ぎていく。 しかし6年後、群馬県の国道18号線沿いで排水設備の交換工事中、コンクリート製の雨水桝から異様な包みが見つかる。 中にあったのは、人間の頭部。 歯科記録の照合により、それは6年前に消えた晴恵のものだと判明した。 彼女は逃げたのではなかった。 では、誰が彼女を殺し、なぜ道路脇のコンクリートの中に隠したのか。 “逃亡した花嫁”という嘘が崩れた時、婚約者が守り続けた6年間の沈黙が、静かにほころび始める――。ミステリー|夫婦|真実|真相9.1千字5 699 -
完結第6話
港の消失船長
1994年9月15日、橫浜港の霧深い埠頭で、貨物船の船長・木村俊助が突然姿を消した。 船長室には書類も鞄も殘されたまま。車も港內で見つかったが、本人だけがどこにもいない。最後に彼を呼び出したのは、妻の弟・佐藤健二だった。 事故か、失蹤か、それとも事件か。 真相が分からないまま7年が過ぎ、妻のゆき子は5億円の生命保険を受け取る。さらに、その一部は弟の健二へ渡り、2人は豊かな暮らしを手に入れていった。 しかし20年後、橫浜港の再開発工事で、コンテナの下から一體の遺骨が見つかる。 地下3メートルに埋められていた船長。 そして、止まった腕時計が示していたのは、失蹤當日の朝だった――。真実|裡の顔|行方不明9.3千字5 740 -
完結第5話
金庫に眠る遺言
1995年9月、東京・麻布の高階住宅で、70代の老夫婦が忽然と姿を消した。 玄関の鍵は內側からかかり、室內に荒らされた形跡はない。財布も攜帯電話も外出用の靴も殘されたまま。監視映像には、室內履きのままエレベーターに乗る2人の姿が映っていたが、その後、どこからも外へ出た記録はなかった。 消えた夫婦は、総資産8億円を超える不動産資産家。殘された3人の子どもたちは、それぞれ確かなアリバイを主張し、事件は真相にたどり著けないまま迷宮入りしていく。 やがて失蹤宣告が下され、莫大な遺産は3人の子どもたちへ分配された。麻布の住宅、銀座の商業ビル、箱根の別荘。すべては靜かに受け継がれ、事件は人々の記憶から薄れていった。 しかし25年後、銀行の貸金庫から見つかった一通の手紙が、止まっていた時間を再び動かす。 これは、親の愛と子どもの慾望が壊れていく、25年越しの家族ミステリー。相続|真実|行方不明|金銭問題7.2千字5 2576