みかん小説
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"飛騨の農家に消えた嫁" 第11話

渡辺は捜査本部で何度も見た、ゆき子の最の写真をした。

赤いゴム袋。

柿の枝。

恥ずかしそうな笑顔。

その写真を撮った、ゆき子は自分が数かにこのからられなくなるなど像していなかったはずだった。

へ帰りたい。

ただそれだけだった。

母親のところへ戻りたい。

辛い活かられたい。

それをにしたことが、蔵にとっては「の恥」だった。

での評判。

としての信用。

られたくないという体面。

蔵が守ろうとしたものは、どれもの命より切なものではなかった。

それでも彼は、その瞬にはそう考えることができなかった。

ゆき子が姿を消した蔵の言葉を信じた。

警察もとして扱った。

夫の健く追及しなかった。

周囲の々も、見たことやじた違にしなかった。

1つ1つの沈黙がなり、8というになった。

しかし完全に消すことはできなかった。

伊藤は牛舎裏で何かを引きずる蔵の姿を覚えていた。

本は「ドン」という音を覚えていた。

の主は異様に丁寧な洗を覚えていた。

茂夫はの分からない止め話を覚えていた。

ゆみは、蔵が夜ごと堆肥置きのそばへっていた姿を覚えていた。

そして涼子は、娘が81度も連絡を寄こさないことだけは絶対におかしいと信じ続けていた。

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誰にもつながらなかった記憶が、堆肥のから骨が現れたことで1つにつながった。

はかかった。

あまりにもすぎるだった。

それでも、ゆき子は「を捨てた嫁」のまま終わらなかった。

誰にも告げず夫を捨てた女でもなかった。

母親を忘れた娘でもなかった。

27歳で命を奪われ、8見つけてもらえなかった女性だった。

その事実が、ようやく彼女の名とともに残った。

、伊藤はの庭の柿を見るたび、あの写真をすと話した。

「ゆき子さん、あのは笑っとったんです」

差しので、伊藤は枝を見げた。

「本当は富へ帰りたかったんやな」

が吹き、熟した柿の葉が揺れた。

牛舎の方から牛の鳴き声が聞こえていた。

8、堆肥のは何も語らなかった。

そのではが伸び、り、が積もった。

蔵は毎そのそばを歩いた。

族もも、そのに何があるのからずに暮らした。

だが、隠されたものが消えたわけではなかった。

ゆき子の母が諦めなかったように。

たちの記憶から、さな違が完全には消えなかったように。

真実もまた、でなくなることはなかった。

2003

町役の職員が何気なく差し込んだ1本のシャベルが、8止まっていたかした。

そしてようやく、田ゆき子という1の女性は、誰かの「嫁」

ではなく、自分自の名で故郷へ帰ることができた。

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