"義母ATM、ハワイへ消ゆ" 第6話
「歩美さんは老も働くべきって言っていたでしょう。だったら、働いて貯めたおを老本が使うのも自由よね」
夫は声をてて笑った。私もつられて笑い、で旅用のスーツケースを玄関まで運んだ。その夜は興奮してなかなか眠れなかったが、より楽しみの方がしだけきかった。
1229午5。
まだ空が暗いうちに、私たちはをた。玄関のしい鍵をかけ、私は度だけ振り返ったが、そこに未練はなかった。タクシーの部座席でざかっていく自宅を眺めながら、これまで自分が「逃げる」ことを悪いことだとい込んでいたことに気づいた。
には逃げることが。
自分を守るために。
必なこともある。
成田空港へ着き、チェックインを済ませたのは午8過ぎだった。保検査へ向かおうとした、バッグのでスマートフォンが震えた。画面には歩美の名が表示されていた。
私は瞬、夫と目をわせた。
そして話にた。
「もしもし」
歩美の声は。
最初からっていた。
「お義母さん、今どこですか? の鍵、かないんですけど」
私は空港のきな窓の向こうに並ぶを眺めながら、できるだけ普通の声で「あら、もう来たの?」と尋ねた。もともと31と聞いていたはずだと伝えると、歩美は悪びれず、「昨LINEしたでしょう。
広告
みんな都がついたから今からにしたんです」と答えた。
話の向こうでは、複数のが話す声と子供の声がなっていた。どうやら本当に15い数ががのへ集まっているらしい。正也も緒なのだろうが、なぜか最初に話をかけてきたのは歩美だった。
「それより鍵、どうしたんですか? 正也さんの鍵が使えないんですけど」
「交換したのよ。しから鍵の調子が悪かったから」
私がそう答えると、話の向こうが数秒静かになった。「じゃあ、どうやって入ればいいんですか」と聞かれ、私はわず首を傾げた。そもそも持ち主がのに、当然のように入る方法を尋ねてくること自体がおかしい。
「入る必があるの?」
「何言ってるんですか。泊まりに来たんですよ、15で!」
歩美の声が段くなった。その瞬、夫が私の隣でさく笑いそうになり、元をで隠した。私は笑わないよう気をつけながら、「でも私たち、今はにいないの」と伝えた。
「どこにいるんですか?」
「成田空港よ。これからハワイへくところ」
話の向こうから。
何かを落としたような音がした。
「……は?」
それまで方に話し続けていた歩美が、初めて言葉を失った。私はチェックイン済みの搭乗券を見ながら、「12の便だから、もうししたら搭乗なの」と付け加えた。
広告
次の瞬、歩美の声が空港の雑音を突き抜けるほどきくなった。
「ハワイって何ですか! 私たち15、どうすればいいんですか!」
その叫びを聞いても、以の私ならじていたはずの罪悪は湧かなかった。代わりに浮かんだのは、数に見た〈老は働くべき〉〈ただ働き最〉という文字だった。私がどれだけ困るかを像せず笑っていたが、今は自分の予定が狂ったことで鳴っている。
私は「ホテルを探したらどうかしら」と答えた。すると歩美は、「末ですよ? 15ですよ? 急に取れるわけないでしょう」と言い返してきた。私はその言葉を聞き、数に彼女の母親から言われた「あと5もあるんだから準備できるでしょう」という言葉をいした。
「あなたのお母様は、5もあれば15分の準備はできるっておっしゃっていたわ。ホテルも今あれば見つかるんじゃない?」
歩美が黙った。
やがて「事は? おせちは? 布団は?」と続けて尋ねられたので、私はつずつ答えた。事は作っていない、布団も借りていない、おせちの材料は所のへ譲った。も予約していないし、お玉も準備していない。
「聞いてない!」
「ええ。私も15を泊めるなんて、相談された覚えはないもの」
その、話の向こうから男性の鳴り声が聞こえた。「どうなってるんだ」と言っているのは、歩美の父親らしかった。
しばらくして話を代わり、神崎修がい声で「さん、これはどういうことですか」と問い詰めてきた。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
形見を捨てた嫁の代償
妻の三回忌の日、68歳の竹内正男は、久しぶりに帰ってくる息子一家のため、亡き妻がよく作っていた煮物と甘い卵焼きを用意していた。 孫に妻の思い出を伝えようと、正男は40年間大切に使われてきた花柄のエプロンを見せる。それは妻が家族のために台所に立ち続けた証であり、正男にとって何より大切な形見だった。 しかし嫁の彩花は、そのエプロンを何のためらいもなくゴミ袋へ放り込む。 「古いものは整理した方がいいですよ」 その一言で、正男の中の何かが静かに崩れた。 ところがその後、彩花は仏壇の横に置かれた一通の封筒を見つける。そこに書かれていたのは、マンション2棟と預金3000万円、そして遺言書という文字。 次の瞬間、さっきまでゴミ扱いしていた形見を、嫁は突然「大切にします」と言い出した。 形見の本当の価値は、金で測れるものなのか。 亡き妻が残したエプロンをめぐり、家族の本音が静かに暴かれていく。親不孝|親子関係1.5萬字5 93 -
完結第12話
タダ宿の代償
64歳の佐々木敦子のもとに、久しぶりに長男・大輔から電話がかかってきた。 連休に家族で帰ってくるという話に、最初は孫に会える喜びを感じた敦子。だが大輔は、当然のようにこう言った。 「母さんの家に泊まるから。ホテル代もかからないし」 しかも泊まりに来るのは、息子一家だけではなかった。嫁の両親、妹夫婦、友人夫婦まで含めた総勢10人。食事、布団、タオル、駐車場、留守番まで、敦子の家はいつの間にか“無料の宿”として扱われていた。 それでも家族のためならと我慢しかけた敦子だったが、旅行の三日前、切れていなかった電話の向こうから、息子夫婦の本音を聞いてしまう。 「母さんの家使えばタダじゃん」 「お母さんってちょろいよね」 その瞬間、敦子の中で何かが静かに切れた。 この家は、3500万円を出して自分が買った家。誰かが当然のように使っていい場所ではない。 翌日、敦子は弁護士へ相談し、玄関の鍵を替える。 そして連休当日。何も知らずに10人で家の前へやって来た息子夫婦を待っていたのは、もう開かない玄関だった――。親不孝|親子関係1.9萬字5 79 -
完結第11話
保険金つき同居
夫を亡くし、一人暮らしを続けていた70歳の渡辺みよ子。 息子夫婦から「もう一人で頑張らなくていい」と言われ、長年暮らした家を売り、その1500万円を新居の購入資金に充てて同居を始めた。 最初は、家族に囲まれた穏やかな老後が始まるはずだった。 しかし2ヶ月も経たないうちに、生活費の負担、食事の制限、通帳の管理要求……みよ子の居場所は少しずつ奪われていく。 そんなある日、ゴミの中から見つけたのは、自分を被保険者にした生命保険の書類だった。 そして深夜1時。 二階の寝室から聞こえてきた息子夫婦の会話で、みよ子はすべてを知る。 家族だと思っていた人たちは、いつから自分の老後ではなく、自分の財産を見ていたのか。 震える手で録音ボタンを押したその夜から、70歳の母の静かな反撃が始まった。人生逆転|親子関係1.7萬字5 282 -
完結第10話
真っ暗な部屋の退学届
姉を突然亡くした39歳の孝太郎は、残された高校生の姪・美緒を引き取ることを決めた。 母を失ったばかりなのに、泣き言ひとつ言わず、家事も勉強もこなす美緒。孝太郎は「しっかりした子」だと思い、少しずつ二人の生活は形になっていく。 だがある夜、仕事から帰ると部屋は真っ暗だった。 美緒の部屋を開けた孝太郎が見たのは、床に並べられた荷物、通帳、求人誌、そして一枚の退学届。 母を亡くした少女は、本当は何を抱えていたのか。 その夜、亡き姉が残した一通の手紙が、二人の止まっていた時間を静かに動かし始める――。第二の人生|親子関係1.4萬字5 318 -
完結第13話
止まったカードと空の家
夫の正文が「会社の旅行」と言って家を出た朝、私はすべてを知っていた。 行き先で待っているのは会社の同僚ではなく、高校時代からの親友・美津。しかも夫は、私名義のクレジットカードを勝手に使い、親友との食事や買い物にまで手を出していた。 泣いて問い詰めることはしなかった。証拠はすでにそろっている。娘も、父親の異変に気づいていた。 「引っ越すよ」 夫が浮気旅行を楽しんでいる間に、私は娘と新しい家へ向かった。そして夫のカードを止め、彼の荷物を“ある場所”へ送りつける。 旅行先で支払いができなくなった夫。荷物を受け取った親友の家。そして、空っぽの部屋へ戻ることになる裏切り者。 夫と親友を同時に失った私が、娘と本当の人生を取り戻すまでの物語。夫婦|親子関係|不倫1.9萬字5 11894 -
完結第9話
ブサ婿の正体
毒親に支配され、家の借金を返すための道具として生きてきた長嶋咲。 父は恐怖で縛り、母は涙で罪悪感を植えつける。進学も、仕事も、お金も、すべて親の都合で奪われてきた咲は、ついに資産家の息子・御堂剛との結婚まで勝手に決められてしまう。 相手は地味で冴えない男性。愛情などない、ただの取引結婚――咲はそう割り切るしかなかった。 しかし結婚初夜、2人きりになった途端、剛は静かに口を開く。 「実は俺、7年前からあなたのことを知っていました」 差し出されたのは、両親の借金に関する書類。そして、咲自身も忘れかけていた冬の夜の記憶だった。 利用するつもりだった結婚相手は、本当に咲を縛る人間なのか。 それとも、初めて彼女を自由にしてくれる人なのか。 これは、誰にも見てもらえなかった2人が、遠回りの果てに互いを選び直す物語。夫婦|親子関係1.4萬字5 1995 -
完結第11話
追放母の25億売却
お盆のため、長崎から東京の息子夫婦のペントハウスを訪れた田中春江。 亡き夫に手を合わせ、息子の好物を詰めた重箱を抱え、半日かけて上京した彼女を待っていたのは、温かな家族の食卓ではなかった。 嫁・里奈は春江の手料理を目の前で捨て、安いホテルの予約票を差し出す。さらに息子夫婦は、自分たちが旅行へ行く間、愛犬の世話だけを春江に押しつけようとしていた。 長年、息子のために働き続け、すべてを与えてきた母。だがその日、春江はようやく気づく。 自分は家族として呼ばれたのではない。ただ都合よく使われるために呼ばれただけだった。 その夜、春江は20年以上連絡を取っていなかった“ある人物”に電話をかける。 翌日、息子夫婦が暮らしていた天空の城は、静かに動き始めた――。人生逆転|親不孝|親子関係1.6萬字5 3522 -
完結第10話
夕焼けの後継者
差し押さえ寸前の修理店を守るため、26歳の佐々木満は、財閥会長の豪邸にある小劇場の照明修理を引き受ける。 母を知らず、亡き父が残した工具と古いノートだけを頼りに生きてきた満。だが、屋敷の照明設備は、なぜか父のノートに記された特殊な配線と完全に一致していた。 さらに修理を終えた満は、廊下に飾られた古い写真の中に、若き日の父の姿を見つける。 「あれ……これ、僕のお父さんの写真だ」 その一言で、財閥会長夫妻の表情は一変する。30年前に消えた息子、隠された事故、偽られた死、そして満の出生に関わる秘密。 やがて一通の鑑定書が開かれた時、豪邸に閉じ込められていた長い嘘が崩れ始める――。兄弟姉妹|親子関係1.5萬字5 981 -
完結第6話
七五三の不要人物
孫娘の七五三の日、69歳のすみは、亡き夫が褒めてくれた着物を着て神社へ向かった。 写真代、衣装代、食事会の費用まで出したのは、すべて孫の晴れ姿を祝いたかったから。けれど当日、息子夫婦から告げられたのは、あまりにも冷たい一言だった。 「家族だけで撮るから」 カメラの前に並ぶのは、息子と嫁と孫の3人だけ。すみは輪の外に立たされ、食事会でも末席に座らされる。 それでも孫のために黙っていたすみだったが、後日、写真館から届いた連絡で、彼女はすべてを知る。 自分は写真に入れなかっただけではない。写り込んだ姿さえ、“不要人物”として消されようとしていたのだ。 その夜、すみは古い帳面を開く。 そこに残されていたのは、息子夫婦へ渡してきた数々の援助記録。積み重なった金額と、消された祖母の証拠を前に、すみはついに静かな決断を下す。祖父母と孫|親子関係8.5千字5 3300 -
完結第17話
母の墓に立つ母
10歳の少年・ハルトは、3年間、亡き母の墓に通い続けていた。 しかし、イギリスへの養子縁組が決まったある日、最後の別れを告げるために訪れた墓前で、彼は見知らぬ女性と出会う。 その女性は、母と同じ顔をしていた。 「……お母さん?」 震える声で呼びかけた瞬間、女性の顔色が変わる。彼女もまた、ハルトの顔に信じられないものを見ていた。 なぜ、亡くなったはずの母と同じ顔の女性が墓の前にいたのか。 なぜハルトは、突然海外へ送られようとしているのか。 そして、彼の出生に隠された真実とは何なのか。 10年前に引き裂かれた恋、双子の姉妹、山奥で守られ続けた小さな命。 すべての秘密が動き出した時、少年は初めて、自分を守るために誰が何を犠牲にしてきたのかを知ることになる。人生逆転|兄弟姉妹|親子関係2.6萬字5 480