"北アルプスの0.5秒" 第9話
その2で姿を消す。
それが計画だった。
「でも、あの……」
の拳が震えた。
「森へ入った桜を追ったんです」
「なぜ」
「坂本に何かされるかとった」
は唇を噛んだ。
「途で桜を見つけました。でも……あいつ、話していた」
はのでを止めた。
桜はではない別の男と話していた。
笑っていた。
そしてが決して聞くはずのなかった言葉をにした。
「って男は子供も作れないのよ」
桜は笑った。
「ずっと私にくっついてくるから利用してるだけ」
の顔が歪む。
取調でも当のりが甦っているようだった。
「それから……」
佐藤が待つ。
はい声で続けた。
「さえに入れば、あの馬鹿な男も捨てるつもりだって」
は自分のことだとすぐ理解した。
坂本を騙しているとっていた。
自分と桜で坂本を利用している。
そう信じていた。
しかし実際には、桜は坂本だけでなくまで利用していた。
別の男と逃げるつもりだった。
「が真っになった」
は言った。
「話を切った、俺がていった」
桜は最初、笑顔を見せた。
それがビデオに残された、
「あなた、来たのね」
だった。
だがの表を見て、すぐに何かを悟った。
「全部聞いた」
が言った。
桜の笑顔が消えた。
「何のこと?」
「俺を捨てるって何だ」
「聞き違いよ」
「に男がいるのか」
桜は答えなかった。
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その沈黙が決定だった。
「俺を利用したのか!」
が腕を掴んだ。
桜は振りほどく。
「して!」
「3、緒にやってきたのに!」
「あなたが勝にそうってただけでしょう!」
その言葉で、の理性が切れた。
「俺を馬鹿にするな!」
く突きばした。
桜の体がろへよろめく。
そこが崖だと気づいたには遅かった。
桜のが空を踏んだ。
「……あっ」
瞬の表。
驚き。
恐怖。
そして姿が消えた。
鳴がへ落ちていった。
は崖の端へった。
遥か。
々のに桜の姿は見えなかった。
「殺すつもりじゃなかった」
取調では何度も繰り返した。
「ただ腹がったんだ。度押しただけだ」
佐藤は無言で聞いていた。
「でも落ちた、助けを呼ばなかった」
が黙る。
「警察にも言わなかった」
「……」
「鈴さんへ50万円を渡した」
「……」
「15、嘘をついた」
はを向いた。
「怖かったんです」
佐藤の声は静かだった。
「桜さんも同じだったでしょう」
は返事をしなかった。
の供述を基に、警察はアルプスで再捜索を始した。
2009当、形が険しすぎて分な確認ができなかっただった。
15で装備も技術もきく歩していた。
ロープ。
型カメラ。
位置報器。
崖へ入る専隊。
が示した点をに、表の状態を確認していく。
転落点のには、落や砂がにわたり堆積していた。
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「この辺りです」
捜索隊員が面を指した。
植物を除き、慎に掘りめる。
1目。
何もない。
2目。
類の部らしい繊維がた。
そして3目。
さ約1.5m。
作業員のが止まった。
「……あります」
現の空気が変した。
いを経た骨が見つかった。
くから。
アクセサリー。
登用品。
の鑑定で、それが伊藤桜本であると確認された。
15。
ようやく彼女はから帰ってきた。
らせを受けた族は警察署へ集まった。
母親は90歳くになっていた。
15の入院、体はったもののきていた。
娘が見つかったと聞くと、最初はを理解できないようだった。
「桜が?」
「はい」
「本当に?」
遺骨をにすると、母は震えるを伸ばした。
「遅かったね……」
声が漏れた。
「こんなにい、1で寒かったでしょう」
族は誰も言葉を返せなかった。
母は何度も、
「帰ってきたね」
と繰り返した。
その頃。
本輔の自宅にも連絡が入った。
「伊藤桜さんが見つかりました」
本は話を握ったままかなかった。
「犯は」
「健です。本が認めました」
本は子へ座った。
「……」
15。
自分が取調で話を聞いた男。
丁寧にをげ、
「社は桜さんに異常なほど執着していた」
と涙まで見せた男。
本は目を閉じた。
「俺は……」
坂本だけを見ていた。
だからの嘘を見抜けなかった。
鈴の沈黙にも踏み込めなかった。
資料の端に残っていたの通信記録も詳しく調べなかった。
「あの、もうし……」
悔が込みげる。
だが同に、15背負っていたいものがしだけほどけた。
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