"16回の拒否" 第8話
ところが黒田には、みさ子が自分の写真に興を持ち始めたように見えた。
――やっぱり気になっているんだ。
では「載せないで」と言っていても、自分の写りを何枚も確認している。
ならば、本当は気に入っているのかもしれない。
黒田はそう受け取った。
みさ子は画面から目をした。
そして、黒田をまっすぐ見た。
「黒田さん」
「はい」
「私の写真はSNSに載せないでください」
黒田が返事をするに、みさ子は続けた。
「それから、もう黒田さんには個で写真を撮られたくありません」
かなりはっきりした言葉だった。
だが、それでも黒田は、みさ子が本気で自分を拒絶しているとは考えなかった。
SNSのことを気にしすぎて、しになっている。
今はそう言っていても、綺麗に撮れた写真を見れば落ち着く。
黒田にとっては、その程度の話だった。
ハイキングを終えたは、登くの休憩所へ戻ってきた。
代表の吉岡が参加者たちへ声をかける。
「今はお疲れ様でした。写真を撮った方は、で希望する方へ送ってあげてくださいね」
何かが頷いた。
藤本もスマートフォンを取りす。
「集写真は、写っている皆さんに送っても丈夫ですか?」
参加者たちは、それぞれ承した。
みさ子も集写真については、
「それなら丈夫です」
と答えた。
黒田はそのやり取りを聞きながら、当然のように言った。
広告
「僕の写真は枚数がいですから、サークルのSNSにまとめて載せた方がいですね」
みさ子がすぐに反応した。
「黒田さん、私が写っている写真は載せないでくださいね」
黒田は軽く笑った。
「丈夫ですよ。変な写真は選びませんから」
「変な写真かどうかではなくて、載せないでほしいんです」
みさ子は、言葉を変えなかった。
黒田は、またさせなければならないとった。
「名はしませんし、サークルのしか見ない所ですよ」
「誰が見るかではなくて、載せてほしくないんです」
「写真を見てから決めればいいじゃないですか」
「もう決めています。載せないでください」
黒田は議そうな顔をする。
「僕がきちんと選びますから、配しなくて丈夫ですよ」
みさ子は返事をしなかった。
これ以話しても、また同じところへ戻る。
黒田はその沈黙を、ようやく納得したものだと受け取った。
その夜。
黒田は自宅のパソコンへ、そのに撮った写真を取り込んだ。
葉。
。
集写真。
参加者たちのろ姿。
みさ子が落ち葉を持って笑っている写真。
事の途、隣の女性と話している写真。
本が撮られたことにさえ気づいていなかった横顔。
黒田は、そのからみさ子の写真を1枚きく表示した。
「やっぱり、よく撮れているな」
の入り方もいい。
背景の葉も綺麗だ。
広告
笑顔も作っていない。
みさ子は「載せないで」と言っていた。
それでも黒田のに、「だから投稿をやめよう」という考えは浮かばなかった。
本は、まだこの写真の良さを分かっていない。
実際に投稿され、周囲から褒められれば考えは変わる。
「こんなに綺麗に撮れていたんですね」
そう言って、載せてよかったとうはずだ。
黒田は本気でそう信じていた。
写真を選びながら、以使われた桜の写真をいす。
自分の写真はに選ばれる。
見たが価値をじる。
ならば、みさ子の写真も皆が見れば良さを分かってくれる。
黒田は、みさ子が写っている写真を数枚選んだ。
そしてサークルのSNSへ投稿した。
文章には、
「参加者の自然な表と、の景を撮りました」
と添えた。
投稿、しずつ反応が届いた。
「葉が綺麗ですね」
「皆さん楽しそうです」
「素敵な写真をありがとうございます」
黒田は満そうに画面を眺めた。
やはり自分の判断は正しかった。
みさ子もこの反応を見ればぶ。
そうっていた。
翌。
みさ子の元へ、同じサークルの女性から連絡が届いた。
「昨の写真、綺麗に写っていましたね」
その言で、みさ子は黒田が写真を投稿したことをった。
すぐにサークルのSNSを確認する。
画面をいた瞬、息が止まりそうになった。
自分が写った写真が何枚も並んでいる。
落ち葉を持った横顔。
事に笑っている姿。
歩いているの写真。
には、撮られていたことすららなかったものもあった。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
一万八千円の飯
自分の家族が経営する5つ星ホテルで、何気なく注文した一品の炊き込みご飯。 メニューでは1,800円に見えたはずなのに、会計明細には「18,000円」と記されていた。 帰国したばかりの後継者・小川優馬は、単なる表示ミスだと思い責任者を呼ぶ。だが、レストラン責任者は「社長が承認した価格です」と言い切った。 父が守ってきたホテルで、なぜ一杯のご飯が10倍の値段になっているのか。 優馬が調べ始めると、異常な価格変更、不可解な仕入れ、法人客への不自然な請求、そして継母・里見の影が浮かび上がっていく。 やがてその小さな違和感は、20年前に亡くなった実母・秋子の死、奪われた母方の財産、腹違いの弟の秘密、そして恋人だと思っていた女性の正体へとつながっていく。 始まりは、たった一杯の炊き込みご飯だった。 だが、その18,000円の明細は、運海ホテルに隠された20年越しの闇を開く鍵だった――。因果応報|修羅場1.7萬字5 715 -
完結第11話
断髪新郎の逆転婚礼
抗がん剤治療で髪を失った彩佳は、唯一の家族である兄・健太の結婚式に出席することになった。 両親を亡くしてから、兄妹2人で支え合って生きてきた彩佳。兄の幸せを心から願い、母の形見のスカーフを巻いて式場へ向かう。 しかし、兄嫁の母・礼子は、そんな彩佳を見た瞬間、冷たい言葉を投げつけた。 「その頭で親戚席に座る気なの?」 病気の妹は縁起が悪い。式に出るな。兄との縁も切れ――。 追い詰められた彩佳の前に現れた健太は、笑顔のまま静かに言い放つ。 「では、新郎ごと帰りますか?」 その一言で礼子の顔色は変わった。 だが本当の反撃は、披露宴で用意されていた“新郎新婦、最初の共同作業”から始まる。兄弟姉妹|修羅場1.7萬字5 3480 -
完結第8話
白タク墓参り
夫の命日、私は嫁と孫を連れて墓参りへ向かった。 帰り道、見知らぬ白いタクシーの運転手は、嫁と孫を墓地に残したまま、私だけを乗せて急発進する。 「お客さん、気づいてないの?」 そう言った運転手は、嫁が私の命を狙っていると告げた。けれど、話を聞くうちに私は小さな違和感を覚える。 なぜこの男は、孫の名前を知っているのか。 なぜ嫁の悪口を言いながら、何度も家の名義や権利書の話へ戻るのか。 逃げ場のない車内で、私は亡き夫の言葉を思い出す。 「困った時ほど慌てるな」 鞄の底に入れた携帯電話、孫が書き写した車の番号、そして嫁だけが気づいた不自然な話し方。 離れ離れになった家族が残した小さな手がかりが、やがて1本につながっていく――。因果応報|夫婦|修羅場1.2萬字5 897 -
完結第13話
消えた御曹司と500万の罠
高卒で、施設育ちで、ただの運転手。 橋本悠人は、恋人からそう見下され、父親になる資格さえ否定された。自分の過去も家族も分からない彼に残っていたのは、ただ真面目に働くことだけだった。 そんなある日、財閥会長・田中健造の専属運転手を任された悠人は、車内でかかってきた海外からの緊急電話に、とっさにスペイン語で応対してしまう。 習った覚えのない言葉。 なぜか知っていた金庫の暗証番号。 初対面のはずなのに、彼を見て泣き崩れた会長夫人。 20年前に失われた会長の息子と、記憶を失った運転手。 偶然にしては重なりすぎる謎の先で、悠人は自分が本当は誰なのかを知っていく。 しかし、その真実を誰よりも恐れる人物が、彼を静かに消そうとしていた――。人生逆転|第二の人生1.9萬字5 269 -
完結第11話
追放母の25億売却
お盆のため、長崎から東京の息子夫婦のペントハウスを訪れた田中春江。 亡き夫に手を合わせ、息子の好物を詰めた重箱を抱え、半日かけて上京した彼女を待っていたのは、温かな家族の食卓ではなかった。 嫁・里奈は春江の手料理を目の前で捨て、安いホテルの予約票を差し出す。さらに息子夫婦は、自分たちが旅行へ行く間、愛犬の世話だけを春江に押しつけようとしていた。 長年、息子のために働き続け、すべてを与えてきた母。だがその日、春江はようやく気づく。 自分は家族として呼ばれたのではない。ただ都合よく使われるために呼ばれただけだった。 その夜、春江は20年以上連絡を取っていなかった“ある人物”に電話をかける。 翌日、息子夫婦が暮らしていた天空の城は、静かに動き始めた――。人生逆転|親不孝|親子関係1.6萬字5 2200 -
完結第10話
勘違い常連の末路
51歳独身の佐々木博行は、結婚相談所を使うことに強い抵抗を持っていた。 「出会いは自然であるべきだ」 そう信じる彼は、自分から女性に近づくことはせず、いつか相手の方から気づいてくれるのを待ち続けていた。 そんなある日、駅前の書店で、女性店員・水野佳奈に声をかけられる。 探していた本を案内され、会計で笑顔を向けられ、前に買った本のことまで覚えていてくれた。佐々木にとって、それはただの接客ではなく、“自分だけに向けられた特別な好意”に思えた。 やがて彼は、何度も書店へ通い、佳奈だけを探すようになる。 しかし、彼女が伝えた「夫がいる」という一言さえ、佐々木の中では別の意味に変わっていく。 親切な接客。 覚えられていた注文。 何気ない笑顔。 それらを恋愛の始まりだと信じた男が、最後に見つけた“次の自然な出会い”とは――。真実|修羅場1.5萬字5 234 -
完結第8話
魚臭い嫁の30万円返し
寿司屋に嫁いだ私を、兄夫婦は新築祝いに呼ばなかった。 理由は「新しい家が魚臭くなるのは嫌だから」。それなのに兄は、当然のように電話でこう言った。 「祝い金だけ口座に入れろ。30万な」 あまりの非常識さに、私は兄からの連絡を無視することにした。 しかし1年後、兄嫁が突然、私の家の前で土下座してきた。見下していたはずの寿司屋に、どうしても入れてほしいと言うのだ。 その理由を聞いた時、私は兄夫婦が新築祝いで金を集めたかった本当の事情を知ることになる。 魚臭いと笑った仕事が、最後に兄夫婦の運命を大きく変えていく――。裡切られた|嫁姑|修羅場1.2萬字5 3803 -
完結第9話
喪服の隠し子
病弱だった妹・ユキが、結婚からわずか2年で突然この世を去った。 最愛の妹を見送る葬儀の最中、姉のサチは偶然、妹の夫・タクが誰かに電話している声を聞いてしまう。 「子供は大丈夫だ。バレてない」 ユキとタクの間に子供はいない。けれど亡くなる直前、ユキは確かにサチへ何かを伝えようとしていた。 「実家……子供がいる……」 妹が最後に残した謎の言葉。葬儀中に聞いた夫の不審な電話。そして、誰もいないはずの義実家にいた若い女性と幼い子供。 全てがつながった時、サチは初めて知る。 妹はただ病に倒れたのではない。夫とその家族に、何年も残酷な秘密を隠され続けていたのだ。 妹が最後まで伝えようとした真実を暴くため、サチは静かに動き出す。因果応報|人生逆転1.3萬字5 3502 -
完結第15話
残り物少年の奇跡
「残り物をください。そしたら、あなたに歩き方を教えます」 高級レストランでそう言ったのは、破れた靴を履いた8歳のホームレス少年・翔太だった。 相手は、事故で歩く力も家族も希望も失った大富豪・佐藤孝志。世界中の医師から「もう歩けない」と告げられ、人生を諦めかけていた男だった。 ただ食べ物を求めて現れたはずの少年は、なぜか孝志の心の奥に隠された絶望を見抜いていた。 毎晩8時の夕食。少年の小さな手が、動かない足に触れるたび、孝志の中で何かが少しずつ変わり始める。 これは奇跡なのか、それとも少年が見つけた“生きる理由”なのか。 残された一皿のサーモンから、壊れた家族と失われた人生が静かに動き出す――。人生逆転|金銭問題2.3萬字5 420 -
完結第14話
51%の警備員
30年間、大成グループ本社の正門に立ち続けた年老いた警備員・大川松蔵。 社員の名前を覚え、体調の悪い者にはそっとコーヒーを渡し、誰よりも深く頭を下げてきた男だった。だがある日、会長の息子である専務・大森貴彦は、そんな松蔵を社員たちの前で罵倒し、胸の名札を乱暴に引きちぎる。 「今すぐ出て行ってください」 松蔵は何も言い返さず、床に落ちた名札を拾い、静かに会社を去った。 しかし翌日、貴彦を代表取締役に選任する臨時取締役会に、松蔵は古い背広姿で現れる。 昨日まで誰もがただの警備員だと思っていた老人。その正体を知った瞬間、経営陣は一斉に立ち上がり、彼に向かって深々と頭を下げた。 なぜ、30年間ロビーに立ち続けた警備員が、会社の運命を左右できるのか。 そして、引きちぎられた名札に隠されていた本当の意味とは――。因果応報|人生逆転2.1萬字5 2324