"16回の拒否" 第5話
代表の吉岡が腕計を見る。
「黒田さん、予定よりし遅れています。そろそろみましょう」
「ああ、あと1枚だけです」
その「あと1枚だけ」という言葉は、このすでに3度目だった。
撮が終わり、が再びみ始める。
しばらくすると、黒田は先くを歩いていた女性参加者へ追いつき、歩きながら液晶画面を差しした。
「これ、見てください」
「何ですか?」
画面には、先ほど休憩所で撮ったみさ子の横顔が映っていた。
「さんです。よく撮れているでしょう」
女性はしだけ画面を見てから、すぐへ線を戻した。
「ご本にはお見せになったんですか?」
「もちろん、で見せますよ」
黒田は写真を拡する。
「本は自分の良さを分かっていませんからね」
女性は、それ以何も言わなかった。
黒田は次にろを歩いていた男性のところへき、同じ写真を見せた。
本のいない所で、本の写真がからへ見せられていく。
黒田にとっては自ではなく、「いい写真を紹介している」つもりだった。
いい写真を見てもらうことは、撮られた本のためにもなる。
そう考えていた。
しろを歩いていたみさ子は、そのやり取りには気づいていなかった。
やがてがしけた。
みさ子は先ほどとは別の赤い落ち葉をに取り、隣の女性と話していた。
何か面いことを言われたのか、ふっと自然に笑う。
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黒田は数メートルれた所から、レフを構えた。
カシャッ。
みさ子がシャッター音に気づいて振り返る。
黒田はもう液晶画面を確認していた。
「黒田さん」
みさ子がづいた。
「今、私を撮りましたよね」
「ええ。とても自然な笑顔でしたよ」
「その写真も、SNSには載せないでください」
黒田は議そうな顔をした。
「まだ写真を見ていないでしょう」
「見ていなくても、載せないでほしいんです」
「でも、載せるかどうかは写真を見てから決めればいいじゃないですか」
みさ子の表がくなった。
「私はもう決めています。私が写っている写真は載せないでください」
それでも黒田は、撮も公も拒否されたとは受け取らなかった。
みさ子はまだ写真の来をらない。
自分がどれだけ綺麗に写っているかを見れば、考えは変わる。
そう信じていた。
「まず写真を見てください」
黒田は液晶画面を差しした。
「ほら。いい表でしょう」
みさ子は画面へ目を向けなかった。
「来の話ではありません」
「でも綺麗に撮れているんですよ」
「綺麗かどうかではなくて、載せないでください」
「名も所もしません」
「そういう問題ではありません」
「限定公にすれば、サークルのしか見ませんよ」
みさ子は、そこで黒田を見た。
「このサークルには100以参加されていますよね。今ここに来ているのは10ほどです。
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会ったこともないにまで写真を見られるのは嫌なんです」
黒田には、なぜそこまで拒むのか理解できなかった。
危険なことをしようとしているわけではない。
むしろ、みさ子の魅力を綺麗に残し、皆にも見せようとしている。
黒田はからそうっていた。
「さんは、し配しすぎですよ」
笑いながら続ける。
「それに、本気で嫌なら顔を背けるはずですよ。さっきも普通に笑っていたじゃないですか」
みさ子が黒田を見る。
確かに笑っていた。
だが、それは黒田に向けた笑顔ではない。
隣の女性と話していたから笑っていただけだ。
しかし黒田には、その違いが分からない。
「僕の写真は、から選ばれる写真ですから」
みさ子はさく息を吐いた。
黒田にはその表さえ、まだ写真の良さを分かっていないの戸惑いにしか見えていなかった。
昼、は展望広へ到着した。
にはが広がり、その向こうにい々がなっている。参加者たちはベンチや敷物に座り、それぞれ持参した弁当を取りし始めた。
「やっとお昼ですね」
「朝から歩いたから、お腹が空きました」
やかな声ががる。
1の女性が弁当の蓋をけ、箸をに取った。
そのだった。
「ちょっと待ってください」
黒田の声が響いた。
女性のが止まる。
「べるに、お弁当も緒に撮りましょう」
何かが顔を見わせた。
けれど黒田はすでにカメラを準備している。
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