"12年目の虫かご" 第3話
夫は困ったような笑顔を浮かべた。
「資材が積んであって危ないです。子供たちはここにはいません。川の方をもっと探した方がいいといます」
私であり、当は制にち入れるだけの根拠もなかった。
刑事は入周辺だけを確認した。
そのだった。
しく打たれたコンクリートの基礎の端で、さな属がった。
刑事はを止めた。
しゃがみ込んで指先で触れると、爪ほどのきさの属片がコンクリートにい込んでいた。形から見て、腕計のバンドの部にも見えた。
刑事は帳を取りした。
「しいコンクリート基礎。縁に属片。計バンドの能性」
そうき残した。
さらに先ほどの跡についても、向きと靴底の模様を細かく記録した。
しかし、その点で刑事ができたのはそこまでだった。
になってらかになることだが、5はその朝、虫取りへ向かう途で本の作業へ入っていた。
普段ならからづくなと言われている所だった。それでもへ抜けるとして敷を横切ろうとしたのだ。
そこで翔太は、面に置かれた境界の標識に気づいた。
本来とは違う所へ移された標識だった。
悟が帰省して相続の確認をするに、しでもくの林を自分側へ取り込もうと考えた夫が、密かにかしていたものだった。
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翔太は標識のへしゃがみ込んだ。
「これ、所が違わない?」
幼い頃から何度も本へ来ていた翔太には、何か違があったのかもしれない。
の4もづいた。
その面を、作業を終えて戻ってきた夫が見た。
夫はを止めた。
目のには、兄の1息子。
そして同じの4の子供。
誰か1だけなら、ごまかせたかもしれない。
だが5が見ていた。
翔太が父親へ話せば、境界標識を勝にかしていたことがられる。相続どころか、任されてきた林管理の正まで調べられるかもしれなかった。
夫は子供たちを呼び止めた。
「暑かっただろ。これんでからきな」
渡したのはラムネだった。
しかし、そのには作業で物を扱う際に使用していた麻酔薬が混ぜられていた。
の供述によれば、夫は「し眠らせるだけのつもりだった」と話している。
5は何もらずに瓶を受け取った。
しばらくすると、1がふらついた。
続いてもう1。
やがて5全員がそのへ倒れた。
夫はかなくなった子供たちを見ろした。
そこで引き返せばよかった。
助けを呼べばよかった。
しかし、彼は別の選択をした。
作業の片隅には、数から組まれていた型枠があった。
夫は5をそこへ運んだ。
そして、からコンクリートを流し込んだ。
しい倉庫の基礎を造ったように見せかけるためだった。
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その途、翔太の腕計のバンドが何かに引っかかってちぎれた。
さな属片だけが、夫にも気づかれないまま基礎の縁へ残った。
その破片を、3に刑事が目にすることになる。
夫は虫かごや網、靴、翔太の腕計本体などを集めた。きな袋にまとめ、自宅へ持ち帰ると、板の部を持ちげ、そのにある収納へ押し込んだ。
真夜。
夫は翔太の母親へ話をかけた。
「義姉さん、の朝からまた川の方を探してみます」
話の向こうで、義姉のすすり泣く声が聞こえた。
「丈夫です。きっと見つけますから」
夫はそう言った。
同じ頃。
自宅のに隠した袋の隙から、虫かごに残っていたさなクワガタが1匹いしていた。
暗い板のを、虫だけがゆっくりといていた。
5が消えて1かが過ぎても、警察は決定な掛かりを掴めなかった。
1990代半、こののには防犯カメラなど1台もなかった。携帯話もまだ分に普及しておらず、子供たちがどこを通ったのかを記録から追うこともできなかった。
残された能性はきく2つだった。
誰かに連れられた。
あるいはから川へ転落し、流された。
そして夫は、特に者をく主張していた。
「5ともへったんです。川をもっと流まで調べるべきです」
捜索会議でも率先して見をし、をまとめた。
その姿を見て、誰が疑うだろう。
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