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"10年目のボイラー室" 第8話

裁判は2003に始まった。

佐藤は法廷で何度も涙を流した。

「あの、119番へ話していればよかった」

「怖くなってしまいました」

弁護側は、当の旅館経営が刻な状態にあり、佐藤が突然の来事で正常な判断を失ったと主張した。

しかし、それだけでは説できないことがあった。

事故の直に隠しただけではない。

警察の捜査が始まっても真実を話さず、10も沈黙していた。

にまで嘘の説をし、何もらない従業員にを塞がせていた。

その結果、田疑いの対象となった。

そして田を々は、10きているのかくなっているのかさえ分からないを過ごした。

田には族がほとんどいなかった。

裁判にはい親戚が席した。

「もしかしたら、どこかできているんじゃないかとっていました」

親戚の1はそう話した。

「いつか突然帰ってくるんじゃないかと」

しかし、田はくへっていたわけではなかった。

先の旅館。

族も警察も何度も訪れた、その建物のにいた。

判決は2003に言い渡された。

懲役7

佐藤は控訴しなかった。

「受け入れます」

それだけを話した。

法廷をていく佐藤の背は、10よりずっとさく見えた。

髪はくなり、腰も曲がっていた。

妻は傍聴席に座ったまま泣いていた。

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夫が刑務所へ送られた、妻は1でスーパーを続けようとした。

しかし事件がらかになると、元の々の線は変わった。

しずつのいた。

約1

妻はスーパーを閉めた。

そのどこへ移ったのか、詳しくる者はいなかった。

佐藤夫婦は青龍旅館を失い、も失った。

静かに迎えるはずだった老も失った。

全ては1992のあの、佐藤が119番へ話する代わりに、田を隠すことを選んだところから始まっていた。

も無傷ではなかった。

10、周囲から田の失踪に関わったのではないかと疑われ続けた。

酒癖。

曖昧な証言。

それだけで「田が何かしたのではないか」という噂が消えることはなかった。

真相がらかになり、田に罪がなかったと分かっても、失われた10まで元に戻るわけではない。

より数が減り、付きいを避けるようになったという。

「あまりと関わりたくない」

には、それだけ話した。

田誠は名古へ戻った。

きてではなかった。

見つかった遺骨は葬され、親戚のもとへ引き取られた。

さな葬儀には親戚数と、かつて同じ会社で働いていた同僚たちが集まった。

田を鮮に覚えているは、もうくなかった。

35歳でが止まったまま、11くが過ぎていた。

同僚の1は、遺を見ながら静かに話した。

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「本当に普通のだったんです」

仕事を終え。

週末に1で旅た。

葉を見て。

川沿いを歩き。

鮎の塩焼きをべた。

になれば会社へ戻る。

ただそれだけの旅だった。

青龍旅館があった所には、そのしいペンションが建った。

古い造建築とは違う、るく清潔な建物だった。

になると今も観客が訪れる。

曽川沿いの々は赤く染まり、朝になれば川つ。

川魚を焼くりも、昔と変わらず町のを漂う。

そこを訪れる々のくは、そのにかつて古い旅館があったことさえらない。

まして、そのボイラーで、10も1の旅客が眠り続けていたことなどるはずもない。

事件は終わった。

佐藤は逮捕され、真実もらかになった。

しかし、取り戻せないものはあまりにもかった。

もし、あのすぐに119番へ話していたら。

もし、宿泊料を巡って争わなければ。

もし、恐怖から逃げるために嘘をねるのではなく、最初に起きたことを正直に話していたら。

何度考えても、答えはない。

過ぎったに「もしも」はしない。

残されたのは、1つの判断を隠すためにねられた10の沈黙と、その沈黙によってを変えられた々だけだった。

1992

田誠は、葉を見るために曽へ来た。

35歳の会社員が、週末を静かに過ごすために選んだ、ごく普通の1旅だった。

彼は旅館から姿を消したのではない。

旅館をることができなかった。

そして10

古びたボイラーが撤され、セメントで封じられていたが初めてかれた、その事実はようやくの世界へ戻ってきた。

曽川は、それからも変わらず流れ続けている。

1992も。

真実が見つかった2002も。

そして事件をなくなった今も。

何事もなかったかのように、同じ々のを静かに流れ続けている。

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