"親友に夫を譲った日" 第7話
その話を、私は義母から聞いた。
婚も、私は義母の施設へ会いにっている。
友幸とはになったが、義母が葵の祖母であることは変わらない。
義母もまた、私と葵を族として迎え続けてくれた。
「私の育て方が悪かったのかしらね」
ある、義母は寂しそうに呟いた。
「お母さんのせいではありません」
「でも、証拠もないのに子さんの言葉を信じて、弥さんに介護を押しつけた。息子があんなになっていることにも気づかなかった」
「私だって、い気づかなかったんです。子のことも、友幸のことも」
私は義母のを握った。
「だから、もう自分を責めるのはやめましょう」
義母は目を潤ませ、さく頷いた。
婚から1が過ぎた。
葵はいよいよ学受験を控えている。
仕事から帰った私がリビングへ入ると、葵は問題集をいたまま、何度も同じページを見直していた。
「お母さん」
「どうしたの?」
「私、本当に私学を受験してもいいの? お、丈夫?」
私は葵の隣へ座った。
「もちろんよ。お母さんも頑張るから、葵も自分がきたい学を目指しなさい」
「無理してない?」
「してないよ。あなたが頑張りたいとっていることを、応援したいだけ」
葵はしばらく私を見つめたあと、嬉しそうに笑った。
「じゃあ私も、お母さんみたいになれるように頑張る」
「私みたいに?」
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「うん。誰かに頼らなくても、自分で考えてけるになりたい」
その言葉を聞き、胸がくなった。
私はい、自分には何もできないとい込んでいた。
子がいなければ付きいもできない。
友幸がいなければ活できない。
妻である自分がしなければ、族は壊れてしまう。
けれど、本当は違った。
私は事をし、育児をし、介護をし、パートで働きながら、婚の準備まで1でめてきた。
何もできないではなかった。
ただ、そうい込まされていただけだ。
そのい込みから救ってくれたのは、美さんだった。
そして、私がちがる理由を与えてくれたのは葵だった。
葵がいたから、私は5を耐えられた。
葵がいたから、のままにびさず、未来のために準備できた。
葵がいたから、本当の親友にも会うことができた。
「お母さん、今度の曜、おばあちゃんのところへこうよ」
「そうね。しい問題集を見せてあげたら、きっとぶわ」
「格したら番に報告する」
「まだ試験も受けてないでしょう」
2で顔を見わせ、笑った。
友幸とのにいた頃、こんなふうにから笑うことはほとんどなかった。
今のは以より狭い。
級な具も、きなテレビもない。
それでも私には、ここがどんなよりも温かくじられた。
会社の仕事もしずつ軌に乗っていた。
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私は投資判断や顧客管理を担当し、美さんは営業やとの調を担っている。
正反対の性格だからこそ、互いにりない部分を補いうことができた。
子も、昔は私たちが正反対だから親友なのだと言った。
けれど、子との関係は対等ではなかった。
子は私をに置くことで、自分の価値を確かめていただけだ。
方、美さんは私が迷っている、答えを押しつけなかった。
浮気を発見したも、すぐに婚しろと命令するのではなく、私自が決められるよう寄り添ってくれた。
「弥さん、最ちゃんと休んでる?」
仕事、美さんがコーヒーを置きながら尋ねた。
「休んでるわよ」
「昨も夜まで資料を確認してたでしょう」
「葵の塾のお迎えまでがあったから」
「またそうやって無理する。今はく帰りなさい」
「でも、この資料だけは」
「続きは私がやるから」
美さんは私のパソコンを閉じた。
「親友なんだから、慮しないの」
その言葉に、胸が温かくなった。
子が言っていた「してあげる」とは違う。
美さんは私に恩を着せるためではなく、困っているは互いに助けるのが当然だとっている。
「ありがとう、美さん」
「どういたしまして。今度、葵ちゃんの受験が終わったら、みんなで事にこう」
「ええ。葵もぶわ」
私は窓のへ目を向けた。
夕方の空は淡いオレンジに染まり、き交う々のがく伸びている。
では葵が、将来のために勉している。
施設では義母が、しい友たちと穏やかに暮らしている。
私には仕事があり、信頼できる仲がいる。
夫も、きなも、かつて親友だとっていた女も失った。
けれど、失ったのではない。
私を縛りつけていたものから、ようやく自由になったのだ。
「美さん」
「何?」
「私、婚して本当によかった」
美さんは驚いた顔をしたあと、柔らかく笑った。
「ってる。今の弥さん、よりずっと楽しそうだもの」
私も笑った。
これから先、苦しいことがないとはわない。
葵の受験も、会社の経営も、義母のことも、考えなければならないことはたくさんある。
それでも、もう怖くなかった。
誰かに価値を決めてもらう必はない。
自分のは、自分で選び直すことができる。
葵のためなら、私は何度でもちがれる。
そして今度は、私自の幸せのためにも歩いていこう。
私は机のの資料を片づけ、葵が待つへ帰る準備を始めた。