"七五三の不要人物" 第2話
莉都は撮のに、何度も私の方を見た。
そのたびに私はさくを振った。すると莉都も、い袖のからさなをして振り返してくれた。
その仕が胸に染みた。
武志がまれた頃のことをいした。
さくて、よく泣く子だった。夫と2で夜に何度も起き、をせば病院へった。
学費がりなくなったには、私は嫁入り具として持たせてもらった指輪を売った。学へかせるため、夫は腰を痛めても仕事を休まなかった。
それでも、私たちは苦労だとはわなかった。
親とは、そういうものだとっていたからだ。
けれど、目のの息子は、今も私を母親として見ているのだろうか。
それとも、必なに呼びせる財布として見ているのだろうか。
の準備が始まった頃、武志から頻繁に連絡が来た。
「母さん、写真館の予約だけ頼めないかな」
「莉都の装を、もうし良いものにしたいらしいんだ」
「瑠帆の両親も来るから、事会は恥ずかしくないにしたくて」
そのたびに私はの帳面をき、今ならいくらせるかを計算した。
仕て直しのは、見た目ほど儲かる商売ではない。縫いの仕事はがかかるが、をかけた分だけ料をげられるわけでもなかった。
それでも、莉都のためならとい、しずつを用した。
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「ありがとう、母さん」
武志は毎回そう言った。
けれど、瑠帆から直接礼を言われたことはほとんどない。
届くのは、注事項ばかりだった。
当は派なを避けてください。
勝に写真を撮らないでください。
事会では、こちらのにわせてください。
私はそのたびに、く返信した。
承しました。
画面に並ぶ自分の文字が、次第に使用の返事のように見えてきた。それでも私は、すべてをみ込んできた。
莉都のため。
その言が、私を黙らせる鍵になっていたのだ。
撮が続く、私は千歳飴の袋を抱えていた。
そのには、3晩かけて縫ったさな巾着が入っている。淡い桃の布に、莉都の名をの糸で刺繍した。
を閉めた、老鏡をかけ、かりを元へづけて針ずつ縫ったものだ。
渡したら、きっとんでくれる。
そうった、瑠帆の声が聞こえた。
「お母さん、その袋、写真に入ると雰囲気が崩れるので、見えないように持っていてください」
私は元を見た。
孫のために作った袋が、急に違いなものにえた。
いや、違う。
違いにされたのは、袋ではない。
私自だった。
「お母さん、そこにたれると画角に入ってしまいます」
瑠帆の声は、広い境内によく通った。
私はまた歩がった。
鳥居のかられ、差しの当たる参の端へ移る。
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の差しは柔らかいはずなのに、元だけが妙にたくじられた。
カメラマンが、申し訳なさそうにこちらを見た。
「お祖母様も、ほどご緒にお撮りしましょうか」
その言葉に、私はしだけ救われた気がした。
しかし、瑠帆は笑顔のまま遮った。
「が押しているので、今は丈夫です」
丈夫。
誰が丈夫なのか、説してほしいところだった。
武志は莉都の被布の袖を直すふりをしていた。私の方を度も見ようとしない。
昔から、都が悪くなると目をそらす子だった。
学の頃、障子を破ったもそうだった。
「で破れた」
そう言いながら、ずっと元を見ていた。あの頃はらしい嘘だったが、今の沈黙は母親を守らないための沈黙だった。
私はに持った千歳飴の袋を、そっと胸元へ寄せた。
袋越しに巾着の形が伝わってくる。針ずつ莉都の名を刺したの、糸の触までいせそうだった。
その巾着さえ、写真に入れば雰囲気が崩れると言われた。
私は笑った。
顔だけは、静かに笑った。
く客商売をしていると、笑顔にも種類があることが分かる。
嬉しい笑顔。
困ったに相をさせる笑顔。
そして、自分のを守るための笑顔。
そのの私は、3つ目だった。
撮が終わる頃、莉都が私の方へ駆け寄ろうとした。
「おばあちゃん」
しかし瑠帆がすぐにそのをつかんだ。
「莉都、履でらないの。次は絵馬ので撮るから」
莉都は連れていかれながら、何度も振り返った。