"湯殿床下の女将日記" 第11話
その言葉を聞いた瞬。
彦は母のに膝をついた。
「俺は……何もらなかった」
「母さんが、そんないで……」
沢子は息子の肩にを置いた。
昔と変わらない温かいだった。
「親というのはね」
「子供が幸せなら、それだけでいいの」
からが吹いていた。
いを越えて。
母と息子を包むように。
その。
彦は何度も母を訪ねた。
すぐに緒に暮らすことはしなかった。
沢子にも、この町で築いた静かな活があった。
しかし、2のに失われた6を埋めるがしずつ増えていった。
塚は、事件記録を理した。
そこにはこう記された。
糸女将失踪事件。
事件性なし。
本のによる所変更。
しかし、塚はっていた。
これは単なる失踪事件ではない。
1の母親が。
自分のをかけて。
子供を守った記録だった。
そして。
もう1。
助の造。
彼もまた、この物語の切な主公だった。
40以仕えた旅館。
そこで会った女将との約束。
誰にも話せない秘密。
普通なら、誰かに伝えたくなる。
助けを求めたくなる。
しかし、造は違った。
ただ黙って守った。
6。
誰にも理解されないまま。
「女将さんは優しい方でした」
あの言葉の本当の。
それは、逃げるための嘘ではなかった。
守るための沈黙だった。
平成11。
温泉で消えた女将。
の朝に突然姿を消した女性。
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誰もが議にった。
なぜ財布も持たず。
なぜ何も残さず。
なぜ誰にも告げず。
しかし、その答えは。
事件でも。
事故でも。
劇でもなかった。
そこには。
母親のがあった。
そして。
1の男が涯守り抜いた約束があった。
現。
糸の建物はもう残っていない。
4階建ての造旅館。
賑やかな宴会。
女将の駄の音。
すべて消えてしまった。
しかし。
温泉を訪れる々は今も語る。
昔、この町には。
自分のを犠牲にして子供を守った女将がいたこと。
そして。
その秘密を6守り続けた助がいたこと。
のる夜。
温泉に灯るかり。
川からちるい湯気。
その景ので。
失踪した女将の物語は、今も静かに語り継がれている。
のに消えたがいた。
しかし最には。
そのはれた。
残ったものは。
母の。
との約束。
そして、を越えて届いたつのいだった。