"消された登山日誌" 第12話
本浩司が13守ろうとした秘密は、最には自分ので残した記録によって暴かれた。
そして、恵子はようやくに帰った。
族に見守られながら、今はらかに眠っている。
青峰の麓の町では、今でもになると葉を見に登者が訪れる。
登の入には、古いの板がっている。にさらされ、文字はしかすれているが、それでも「青峰登」と読める。
朝く、登者たちはリュックを背負い、靴紐を結び、へ入っていく。
誰もが美しい景を求めて歩く。
澄んだ空気を吸い、汗を拭い、頂を目指す。
恵子もそうだった。
が好きだった。
常ので妻であり、母であり、主婦であった恵子が、自分自のを持てる所。それがだった。
彼女にとって登は、族を捨てるためのものではなかった。むしろ族のもとへ戻り、見た景を話し、写真を見せ、緒にびを分かちうためのものだった。
だからこそ、最の朝の笑顔は本物だった。
「3には元気に帰ってくるから」
その言葉を信じて、誠と美穂は彼女を送りした。
13もの、その約束は宙に浮いたままだった。
なぜ帰ってこなかったのか。
どこでどうなったのか。
寒くはなかったのか。
怖くはなかったのか。
誠と美穂は何度も同じ問いを胸ので繰り返した。
その答えは、本浩司の引退と共に見つかった登誌のに隠されていた。
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「午3 岩にて 田さん 拒絶 私は……」
消された文字は、恵子の声なき証言だった。
田がその違に気づかなければ、佐藤刑事が諦めずに再捜査しなければ、青峰の底に眠っていた真実は、さらにくに沈んでいたかもしれない。
事件の、元の登ガイド協会では、全管理だけでなく、ガイドと客の距についても厳しく見直されるようになった。
信頼されるにある者が、その信頼を利用してはならない。
に入る、は命を預ける。
だからこそ、ガイドには技術だけでなく、としての誠実さが求められる。
本浩司は、をり尽くしていた。
候も、も、危険な所も、誰より分かっていた。
しかし、自分のの危うさだけは制御できなかった。
拒絶された瞬のりが、1の女性のを奪い、1つの族のを13止めた。
は美しい。
けれどは、のの醜さまで包み隠してしまうことがある。
だからこそ、真実を探し続けるのが必だった。
誠は晩まで、毎青峰を訪れた。
美穂も、子どもがまれてから度だけ、夫と共にそのを訪れた。まだ幼い子どものを引きながら、登のにち、母が歩いたを見げた。
「ここを、おばあちゃんが歩いたのよ」
美穂がそう言うと、子どもは議そうにを見げた。
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「おばあちゃん、が好きだったの?」
美穂はしだけ涙ぐみ、それでも笑って頷いた。
「うん。とても好きだったの」
その、美穂は頂までは登らなかった。登の入くに咲いていたさなを見つけ、そっとをわせた。
母が好きだった。
母を奪った。
その両方を、美穂は受け止めようとしていた。
が吹いた。
々の葉がさわさわと揺れた。
その音は、恵子がかつて族に語っていたの音と同じだった。
「いつか族3でに登りましょう」
叶わなかった約束は、形を変えて美穂のに残っている。
母のは途で断たれた。
けれど、母がしたもの、母が切にした族、母が見たかった未来は、残された々ので静かに続いていった。
青峰は今も変わらずそこにある。
になれば葉が燃えるようにを染める。登にはしい跡がつき、頂には誰かの歓声が響く。
その美しい景ので、田恵子という1の女性が確かにきていたことを、族だけは決して忘れなかった。
そして、真実がらかになった今、恵子の魂はようやく族のもとで静かに眠っている。