"弁当箱の中の復讐" 第7話
けれど私は、その表を見逃さず、言葉を続けた。
「だけど、このにむの条件を忘れたわけじゃないわよね」
美の顔から、再び血の気が引いた。
「ゆりえの面倒を見る代わりに、費も活費も切なしでこのにんでいい。その条件だったわよね」
同居が始まった、久は言った。
「母さんの活を助けたい。俺たちも緒に暮らす代わりに、ゆりえの世話も伝うし、のこともやる」
美もそので頷いた。
「私もできることはします。お母さん1に任せきりにはできませんから」
だから私は、活費を取らなかった。費も、費も、賃にあたるものも求めなかった。若い夫婦が将来のためにおを貯められるなら、それでいいとった。
けれどそれは、美が族として、なくとも約束したことを果たす提だった。
「それが、どうかしたんですか」
美はさな声でそう言ったが、もう勢いはなかった。
「昨の夜、久にはあなたのことを話してあるの」
私は静かに告げた。
「今夜あたり、婚の話がるはずよ」
「え……」
美の顔が凍りついた。
「あの子は妹を事にしていたから、あなたの暴言は許せなかったみたいよ。葬儀のの音声はないから最初は半信半疑だったけど、会社のへの悪を言うあなたの声を聞いて、すっかり信用してくれたわ」
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「そんな、嘘でしょ」
「本当よ。事な息子だもの。こんな裏表のありすぎる嫁がそばにいるなんて配だから、忠告させてもらったわ」
美はそのにち尽くした。
「ありえない……義理の妹の悪を言ったら、そんなに駄目なわけ? もうこの世にいないんだから、どうでもいいじゃない」
その言葉で、私のに残っていたわずかなけが消えた。
「そっちが本性なのね。呆れたわ」
私は湯呑みを置き、ちがった。
「この世にいなければ、何を言ってもいいですって? あなた、自分が言ったことやしてきたことと同じことを、たとえば自分の両親がくなったに、姑や夫に言われたらどううの」
美は瞬、言葉に詰まった。
「それは……」
「毎毎、必に介護したお父さんやお母さんが、義理の族ので適当に介護されて、偶然かどうかも分からないままあっけなくくなってね。その葬儀で、汚い、気持ち悪い、迷惑だった、きてる価値がないって笑われたら、あなたはどううの」
美は黙り込んだ。
自分の親をそんなふうにくすことを像したのか、目に涙が浮かび始めた。
私はしだけ声を落とした。
「悪を言う嫁が駄目だと言っているんじゃないの。の痛みを像できないようなとは、族になれない。だから、嫁でいてほしくないと言っているのよ」
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美はに線を落とし、さく呟いた。
「すみませんでした」
その、美はしばらく自にこもった。
夕方、久が帰宅すると、族会議が始まった。久はすでに私から話を聞き、音声も確認していた。顔はえ切っており、普段の穏やかな息子とは別のようだった。
美は部から引きずりされるようにリビングに来た。
久はい声で言った。
「美、婚しよう」
美は力なく座り込んだ。
「待って、久……」
「待てない。ゆりえのことをあんなふうに言ったと、俺は緒に暮らせない」
久の声は震えていた。
りだけではない。妹を侮辱されたしみと、妻を信じていた自分への失望が混ざっていた。
「それに、ゆりえの面倒を見るという条件で、このに活費も費も入れずにんでいた。それを適当にしていたなら、その分は返してもらう」
久は淡々と続けた。
「これまでの費や活費に相当する額を精算して、にはをていってくれ」
美は気消沈していた。
「分かりました」
「何でもするから許して」でも、「あれは誤解」でもなかった。
ただ、何を言われても「分かりました」と返すばかりだった。正直なところ、会話になっていなかった。
けれどそのおかげで、美は久の提案を素直に受け入れた。
ほぼ言いなりの状態で、婚は決まった。
その夜、私は仏壇のに座り、ゆりえの写真を見つめた。
「これでよかったのよね」
写真ののゆりえは、いつものように静かに微笑んでいるように見えた。