"消えた花嫁の名札" 第9話
その声は、かすかに乾いていた。
「そう。織、あなた本当に丈夫? 声がしおかしいけど」
「丈夫。気にかけてくれてありがとう」
通話はく終わった。
話を切った、織は自宅の寝にち尽くした。
部には価な具が並び、窓辺にはいレースのカーテンが揺れていた。訪問護ステーションの事業は軌に乗り、再婚した夫との活も表向きは順調だった。
だが、彼女の指先は細かく震えていた。
織はゆっくりとチェストのへ歩いた。
1番の引きしをける。
そこには、6に押し込んだ写真てが入っていた。桜ので、美緒が結婚予定の男性と並んで笑っている写真だった。
織は写真てを取りし、裏の留め具を爪で慎にした。
写真と台のには、く折りたたまれたが1枚挟まれていた。
青いボールペンで、自分自のでいたい文章が数残っているだった。
織はそれをにしたまま、洗面所へ向かった。
便器のへを投げ入れ、を流す。
しかし、古く折りたたまれていたは、の勢いだけではなかなかほぐれなかった。排管のどこかで引っかかったのか、がさく渦を巻き、自然な振が元に伝わってきた。
織は息を詰め、もう1度を流した。
はようやく見えなくなった。
けれど、それで何かが消えたわけではなかった。
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同じ頃、織の自宅のには、黒いセダンが静かにまっていた。
再捜査チームがき始めて4目の夜だった。
内では、刑事が織宅の灯りを見げていた。
カーテンの奥に、が揺れる。
8、あまりにもいすぎた声で妹の失踪を届けた女。
その女は今、らかに追い詰められ始めていた。
科学捜査研究所から最初の鑑定結果が届いたのは、再捜査始から数の朝だった。
会議の机のに、3枚の鑑定が並べられた。
鑑識課は封筒をけ、く淡々とした声で読みげた。
「ネームプレート裏の茶い円形の染みから、微量の血反応が検されました」
内の空気がしくなった。
「母系遺伝子鑑定の結果、苅田美緒本のものと確認されました」
誰もすぐには声をさなかった。
8、名札の裏で乾き固まっていた茶い染み。
それは美緒の血だった。
鑑識課は続けた。
「さらに、名札のクリップ内側から微量の皮細胞が検されました。この細胞は美緒本のものではありません。ただし、美緒と同じ母から受け継いだ遺伝子系列が確認されます」
刑事の1がゆっくり顔をげた。
「苅田織と致する系列ということですか」
「現段階では、その蓋然性が極めていと判断されます」
2枚目の鑑定は跡鑑定の結果だった。
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児科ロッカーから見つかった自メモの跡は、美緒の病院勤務誌の署名、そして6ヶの宝くじ当選にいた礼状の跡と致した。偽造の痕跡はなかった。
3枚目は微細繊維の分析だった。
のネックレスの表面に残っていた繊維は、病院で当使用されていたアイボリーのカーディガンのと同じものと判定された。さらに、その繊維は織が夜勤に着用していたカーディガンと同系統の織り目を持っていた。
会議の沈黙はくなった。
端の席に座っていた加茂が、静かに顔をげた。
「8のあの、美緒さんの名札は、織さんのカーディガンに触れていたということですね」
誰も答えなかった。
だが、答えが必な面ではなかった。
次に再捜査チームが取りかかったのは、織のアリバイ崩しだった。
1999613の夜、織は病院で夜勤をしていたと主張していた。夜0半の病棟巡回、110分の302号のナースコール対応、2の引き継ぎ。勤務誌にも記録は残っている。
しかし、再捜査チームはその記録を1つずつ洗い直した。
当緒に夜勤についていた輩護師が呼びされた。30代半ばになっていたその女性は、会議の子に座ると、そうに膝のでを組んだ。
「8の夜110分のコールのことです。覚えていますか」
刑事が尋ねると、彼女はし考えてから頷いた。
「はい。覚えています」
「そのコールに対応したのは苅田織さん、という記録になっています」