"消えた花嫁の名札" 第7話
プラスチックの表面には、うっすらと茶の染みがついていた。
はそれを蛍灯のにかざした。
「児科病棟 苅田美緒」
刻まれた名を読んだ瞬、の指先が止まった。
彼は施設管理課で20く働いていた。8、児科病棟から失踪した護師の名を、ぼんやりとだが記憶していた。
「これ、まさか……」
名札の裏を返すと、茶に変した染みが円形に広がっていた。乾き固まって久しいが、形ははっきり残っている。
は名札を箱のにそっと置き、さらにを確認した。
箱のには、あと3つのものが入っていた。
半分壊れたコンタクトレンズケース。
いのネックレス1本。
そして、古い布片のようなもの。
ネックレスの留め具は力任せに引きちぎられたように歪んでいた。
はしばらくけなかった。
どのような箱なのか、なぜこの所にあるのか、施設管理の常識では説できなかった。
けれど直だけは、すでに答えをっていた。
自分は、けてはならなかった何かをけてしまった。
彼は箱をそのままにして、階段を駆けがった。
「部、今すぐまでりてきていただけますか」
「何事だ」
「言葉で説するのが難しいです」
30分、病院の総務部が倉庫の階段をりてきた。40代半の彼は、キャンバスの箱と名札を確認した、しばらく何も言わずにっていた。
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「これ、8に失踪したあの護師の持ち物ではないのか」
「私も、そう見えます」
「警察に連絡するしかない」
そのの夕方、京渋区のその総病院には、2台のい鑑識両が静かに到着した。
けれど、この事件の決定な物証は、倉庫の箱だけでは終わらなかった。
同じ週の半、病院の事管理部では、倉庫の備とは別に、放置されていた個ロッカーの理をめていた。
児科病棟の女子ロッカーだった。
美緒がに使っていたロッカーは、失踪何もの封印されたまま残っていたが、5に叔母の千鶴へが引き渡され、内部は空になっていた。
けれど、ロッカー本体はまだその所に残っていた。
備担当の職員がロッカーの棚板をしたのことだった。
「ここに何かある」
ロッカー部の内側、井と棚板のの狭い隙だった。
誰かがわざわざ折りたたんで押し込んだようない封筒が、そこに挟まっていた。
封筒は古くなり、端が黄く変していたが、湿気に触れた跡はなかった。
職員は封筒を取りし、事部にすぐ届けた。
封筒の表面には、青いボールペンでい文がいてあった。
「万のは、この封筒をけてください」
苅田美緒。
事部は封筒をにしたまま、い黙った。
「これも、倉庫の件で来ている警察に緒に渡すべきですね」
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「はい。そうするのがよろしいでしょう」
封筒はそのの夜、倉庫のキャンバスの箱と共に、世田警察署の刑事課の事務机のに並べて置かれた。
取調で、担当者がい袋をはめ、慎に封筒を封した。
には2枚のA4用が入っていた。
1枚目は、美緒の跡でかれた結婚式の招待客名簿の試案だった。職の同僚、学の同級、叔母の名が順に並んでいた。
問題は2枚目だった。
同じ跡で、しかしもっと急いでいた跡が残る数だった。
「613午8、姉が最に話しおうと持ちかけてきた。通帳の返却問題。これまで何度話しっても、姉が引きがらない。今は病院の倉庫の方へ来いという。静かなところで話そうと。理由は分からないが、なんだか怖い。怖いなら、このが残るだろう。美緒」
担当者はを見つめたまま、しばらくくことができなかった。
同じ刻、会議では確保された物証がきなホワイトボードのに理されていた。
キャンバス箱ののネームプレート。
のネックレス。
コンタクトレンズケース。
そして、児科ロッカーからてきた美緒の自メモ。
資料に目を通した刑事課が、い声で言った。
「これは、8のあの失踪が失踪ではなかったというだ」
別の刑事が続けた。
「妹が姉のにおびきされたという自の文がてきた。
そして呼びされた所が、そのままこの病院のだ。