"母を捨てた凍夜" 第4話
はる子は玄関にったまま、2のが見えなくなるまでじっと見つめていた。
「武志……」
さく息子の名を呼んだが、は振り返ることなくの先へ消えていった。
施設での活が始まった。
はる子の部は4部だった。窓からはの緑が見え、朝になると鳥の声が聞こえた。同のお寄りたちは皆穏やかで、はる子にも優しく声をかけてくれた。
朝7に起し、堂で朝をべる。午は体操やレクリエーション。昼はし休み、午には折りやのがあった。夜9には消灯。
規則正しい活だった。
けれど、はる子のはいつも寂しさでいっぱいだった。
族は誰も面会に来なかった。
入所して1ヶが経っても、幸子も武志も度も顔を見せなかった。話もかかってこなかった。
はる子は々、職員に尋ねた。
「息子は来ないの?」
その質問を受けるたび、職員の佐藤恵子は困った顔をした。
恵子は45歳。優しい声の女性で、はる子にもよく気を配っていた。
「きっとお忙しいんですよ」
恵子はそう慰めた。
けれどのでは、違を覚えていた。
族が度も面会に来ないことは、施設では珍しくなかった。けれど、それが当たりになってしまうことは、やはりしいことだった。
11になり、ようやく由紀子が面会に来た。
仕事を休み、バスを乗り継ぎ、3かけて施設まで来たのだった。
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はる子は娘の顔を見ると、涙を流した。
「由紀子、よく来てくれたね」
「お母さん、ごめんね。もっとく来たかったんだけど」
由紀子は母のを握った。
そのはたく、以よりずっと痩せ細っていた。
2は施設の庭をゆっくり散歩した。葉が美しい季節だった。赤や黄の葉がに揺れ、落ち葉がの端に積もっていた。
「お母さん、ここの活はどう?」
「うん。みんな優しくしてくれるよ。でも……やっぱり寂しいね」
はる子は正直に言った。
由紀子は胸が痛んだ。
「お兄ちゃんと幸子さんは来ないの? 話もないの?」
はる子はしだけ目を伏せた。
「忙しいんでしょう」
そう言って笑おうとしたが、その笑顔は寂しさを隠しきれていなかった。
帰り際、由紀子は財布から5000円を取りした。
「お母さん、これしだけど」
「由紀子、いいのよ。あなたも変でしょう」
「いいの。何か欲しいものがあったら買ってね」
はる子は娘の優しさに、また涙を浮かべた。
由紀子が帰った、はる子は1で部に戻った。そして窓のを見つめた。
の向こうに沈む夕が、部のを赤く染めていた。
12に入ると、施設の吉田は幸子に話をかけた。
施設費が2ヶ分滞納されていたのだ。
「さん、施設費の件なんですが」
吉田の声は抑えられていたが、表は険しかった。
話の向こうで、幸子は苛ったように答えた。
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「今ちょっと計が厳しくて。来まで待ってもらえませんか」
「困りますね。こちらにもルールがありますから」
「分かっていますよ。でも、こっちだって変なんです。お義母さんの、全部そっちに払っているんですから」
幸子の声はたかった。
吉田は受話器を握りしめ、ため息をついた。
このような族を、これまで何度も見てきた。齢者を施設に預け、あとはらん顔。面会にも来ない。それでいて、施設費は渋る。
吉田は複雑な気持ちになった。
しかし、そこで踏みとどまるべきだった。
施設として、入所者の命と活を守る責任があった。
だが、その責任は、やがて恐ろしい形で投げ捨てられることになる。
19961215の夜、幸子は再び吹荘に話をかけた。
その、話にたのは夜勤の職員、佐藤恵子だった。
事務には古いストーブが置かれていた。窓のは真っ暗で、たいがガラスをさく震わせている。
「はい、吹荘です」
恵子が受話器を取ると、向こうから女の声が聞こえた。
「あの、はる子の族ですが」
恵子はすぐにメモを取った。
「はい、何でしょうか」
「施設費、これ以払えません。お義母さんをそちらからしてください」
恵子はを疑った。
「え……でも、ご族が引き取りに来られないと無理です」
「私たちは忙しいんです。そっちで適当に処理してください」
「でも、それは……」
「いいからやってください。お義母さんの荷物も、そちらで処分して構いません」
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