"母を捨てた凍夜" 第2話
姑は最まで、はる子に謝の言葉をにしなかった。
1988、姑がくなった、はる子は仏壇のでをわせながら、複雑なを抱えていた。
しみがなかったわけではない。
けれど、胸の奥には確かにさな堵もあった。
これでしは楽になれるかもしれない。
はる子はそうった。
しかし、その堵はく続かなかった。
武志は元の国学に学した。
のでは、それが当然のように受け止められた。男なのだから学にく。男なのだからを継ぐ。男なのだから、の財産を受け取る。
誰も疑問をにしなかった。
学費は、茂の料とはる子が内職で稼いだおで賄った。
夜、事を終えた、はる子は裸球ので内職をした。封筒を貼り、部品を袋に詰め、細かい作業で目を疲れさせながらも、を止めなかった。
机のに銭を積み、学費の封筒に入れるだけ、はる子はしだけ息をついた。
「武志が困らないように」
それが、はる子の願いだった。
方、由紀子は学を卒業するとすぐに、元の縫製で働き始めた。
ある、はる子は由紀子に聞いた。
「由紀子、学にきたくないの?」
由紀子は針箱を片づけながら、静かに首を横に振った。
「いいの、お母さん。お兄ちゃんの学費、変でしょう。私が働くから」
由紀子の声はるく聞こえた。
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けれど、はる子には分かっていた。そのるさは、母を困らせないためのものだった。
由紀子は毎の料のほとんどをに入れた。そのから、武志の教科代や宿代が支払われた。
はる子は娘に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
それでも、何も変えられなかった。
それが当の族の形だった。
男を学にすために、娘が犠牲になる。
誰もそれをおかしいと言わなかった。
由紀子も、はる子も、黙って受け入れるしかなかった。
1990、茂が突然倒れた。
脳梗塞だった。
朝、いつものように聞を広げようとした茂のから、聞が滑り落ちた。はる子が振り返ると、茂は畳のに崩れるように倒れていた。
「あなた!」
はる子は鳴をげ、所に助けを求めた。
病院に運ばれたものの、茂の識は戻らなかった。3、茂は息を引き取った。65歳だった。
葬儀は慌ただしく終わった。
親戚が帰り、祭壇のがしずつしおれ始めた頃、遺産の話がた。
その、はる子は初めて、自分が族のでどのようなに置かれていたのかをいらされた。
茂が残したと貯、わせて約2億円相当の財産は、全て男の武志に相続されることになっていた。
「お母さんは、これから俺と緒に暮らせばいいから」
武志はそう言った。
はる子は、畳のに置かれた類を見つめたまま、何も言えなかった。
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20、姑に仕えた。
娘を犠牲にして、息子を学にした。
夫を支え、を守ってきた。
それなのに、自分の元には何も残らない。
「お母さん、いいよね」
武志にそう言われ、はる子はさく頷いた。
「ええ。母さんは丈夫よ」
その声は、自分でも驚くほどかった。
けれど、文句は言わなかった。
母親とは、そういうものだとっていたからだ。
武志は学卒業、方公務員として働いていた。そして幸子という女性と結婚した。
幸子は背がく、きれいな女性だった。なりもっていて、結婚式のにはくの親戚が「派なお嫁さんだ」と褒めた。
しかし、はる子はその目の奥に、どこかたいものをじた。
「お義母さん、これからよろしくお願いします」
幸子は丁寧にをげた。
言葉は礼儀正しい。
けれど、その声には温かみがなかった。
はる子はさなを覚えたが、すぐに自分に言い聞かせた。
息子が選んだなのだから。
武志と幸子は、やがて2の子どもに恵まれた。孫の顔を見るたび、はる子はしだけ幸せをじた。
さなを握り、柔らかい頬に触れると、今までの苦労がし報われるような気がした。
しかし、幸子の態度はににたくなっていった。
「お義母さん、費をし負担していただけませんか」
「お義母さんの、いくらもらっているんですか」
幸子は、はる子を族としてではなく、計を圧迫する老のように扱った。
武志は何も言わなかった。
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