"消えた退院前夜" 第11話
「本護師を脅した」
「はい。彼女の過をっていました。の病院で投薬ミスをしたことを。だから、それをばらすと言って従わせました」
「投与した量は?」
「通常の3倍です」
「それが危険だと分かっていましたか」
黒田職員は黙った。
黒田警部補はもう1度聞いた。
「分かっていたんですね」
「……く眠るだけだといました」
「その、夜2頃に病へった」
「はい。田さんはく眠っていました。呼吸はしていましたが、識はありませんでした。子に乗せてへ運びました。誰にも会いませんでした」
「なぜへ」
「に隠すつもりでした。薬が切れれば目を覚まして、助けを呼ぶだろうと……」
「そして朝、確認した」
黒田職員は顔を覆った。
「もう息をしていませんでした。薬の量がすぎたんです」
取調に沈黙が落ちた。
黒田警部補は静かに言った。
「あなたは殺すつもりはなかったと言う。しかし結果として、田子さんはくなった。あなたは遺体を隠し、カルテを改ざんし、8かも遺族を苦しめた」
黒田職員は声をげて泣き始めた。
「怖かったんです。もうここまで来たら隠すしかないとって……」
「カルテの修正は?」
「翌、本に頼みました。投薬記録を消すように」
「本さんも従った」
「はい。彼女も共犯になってしまったから」
黒田警部補はいため息をついた。
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117。
黒田警部補は田を訪れた。
誠さん、恵子さん、久志さんがリビングで待っていた。3とも、何かを察していた。黒田警部補の表を見ただけで、良いらせではないことが分かった。
「見つかりました」
黒田警部補は静かに言った。
3は息を呑んだ。
「ただし……遺骨で」
その言葉を聞いた瞬、恵子さんが崩れ落ちた。久志さんが慌てて支えた。
誠さんはきもせず、黒田警部補を見つめていた。
「どこで」
「病院のです」
「誰が」
「病院の職員です。薬剤課の黒田という女性職員です」
誠さんはその名を聞いたことがなかった。
「なぜ……」
「薬品の横流しを目撃されたためです」
黒田警部補は、できる限り言葉を選びながら経緯を説した。薬品庫で見られたこと。眠導入剤を過剰に投与されたこと。倉庫に運ばれ、そのまま命を落としたこと。カルテが改ざんされ、8か隠されていたこと。
誠さんは黙って聞いていた。恵子さんは泣き続けた。久志さんは拳を握りしめ、唇を震わせていた。
「お母さんは、何も悪くなかったのに」
久志さんの声は震えていた。
黒田警部補はくをげた。
「申し訳ございませんでした。もっとく見つけられていれば……」
誠さんはしばらく何も言わなかった。
やがて、静かに首を横に振った。
「いえ。見つけてくださって、ありがとうございました。
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これで妻も、ようやく帰ってこられます」
その夜、子さんの遺骨が田へ帰ってきた。
さな骨壺だった。
誠さんはそれを両で抱きしめた。
「子……ただいま」
涙が止まらなかった。
恵子さんは母の写真のに座り、何度も名を呼んだ。
「お母さん、お母さん……」
久志さんは黙って窓のを見ていた。声をせば泣き崩れてしまいそうだった。
8か、族はどこかできているかもしれないと願い続けてきた。けれど子さんはずっと、信じていた病院のにいた。
その事実は、族の胸をく切り裂いた。
19923、黒田職員の裁判が静岡方裁判所で始まった。
罪状は殺罪、体遺棄、カルテ改ざんに関わる証拠隠滅などだった。検察官は懲役15を求刑した。
法廷には、誠さん、恵子さん、久志さんが座っていた。3は黒田職員の顔をじっと見つめていた。
黒田職員は俯いたまま、ほとんど顔をげなかった。
検察官が事件の経緯を説した。薬品の横流し。目撃。封じ。過剰な投薬。遺体の隠蔽。カルテの改ざん。全てがらかにされた。
弁護は主張した。
「被告に殺はありませんでした。ただ眠らせておくつもりだったのです」
しかし裁判は厳しい表で言った。
「結果として被害者はくなっています。しかも遺体を隠蔽し、8かも放置した。これは極めて悪質です」
証として本護師も呼ばれた。
本さんは震える声で証言した。
「脅されて従いました。でも、それは言い訳にはなりません」