"消えた退院前夜" 第5話
「病のは?」
「までは見ていません。寝ている患者さんを起こしてはいけませんので」
黒田警部補は3階の32号へ向かった。
子さんが入院していた4部だった。ベッドにはまだ子さんの荷物が置かれていた。恵子さんが引き取りを拒み、「母が戻ってきます」と言ったためだった。
黒田警部補は窓をけた。には1階の根があり、そのに病院裏の公園が見えた。
「ここからりることは能か」
田刑事がを乗りして確認した。
「能ではありますが、危険です。術の患者が夜にここからりるとは考えにくいです」
「患者が病院から逃げしたいほどの理由があれば、能性はある」
黒田警部補は窓枠に触れ、を見た。
「だが、荷物を全て置いていくか。財布も保険証も持たずに」
田刑事は黙って首を振った。
2は病を詳しく調べた。ベッドの、ロッカーの、、カーテンのレール、トイレ。しかしがかりになるようなものは何も見つからなかった。
午10、黒田警部補は担当護師の本さんを呼んだ。
本さんは緊張した面持ちで会議に入ってきた。両を膝ので握りしめ、線を落としていた。
「本さん、27の夜のことを詳しく聞かせてください」
「はい」
本さんはさな声で答えた。
「消灯に田さんに声をかけました。そのはベッドに横になっていらっしゃいました」
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「様子はいつもと変わりませんでしたか」
「し疲れているようでした。でも、特に配するほどではありませんでした」
「そのは?」
「ナースステーションに戻りました。夜勤の主任の鈴さんと緒にカルテの理をしていました」
「何までですか?」
「午10頃までです。その、私は仮眠を取りました。鈴さんが巡回していました」
次に鈴さんが呼ばれた。
鈴さんは背筋を伸ばし、落ち着いた様子で子に座った。
「巡回の、32号は確認しましたか」
「はい。廊からドアの窓越しに確認しました」
「には入りませんでしたか」
「いえ。患者さんが寝ていらっしゃいましたので」
「カーテンが閉まっていたんですね」
「はい。ですが、の気配はじました」
「気配ですか?」
「寝息のような音が聞こえた気がしました」
黒田警部補は眉をひそめた。
「確実ですか?」
鈴さんはし線を落とした。
「いえ、確実ではありません。今えば、い込みだったかもしれません」
午、黒田警部補は田を訪れた。
誠さん、恵子さん、久志さんがリビングで待っていた。テーブルのには、誰もをつけていないお茶が置かれていた。
「お忙しいところ申し訳ありません。いくつかお聞きしたいことがあります」
黒田警部補は丁寧にをげた。
「527の夜、ご族の皆さんはどこにいらっしゃいましたか?」
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誠さんが答えた。
「私はにいました。午7頃に帰宅して、それからずっと」
「証できる方は?」
「恵子と久志がいました」
恵子さんが続けた。
「私は午6頃に病院へきました。母とし話して、7に帰りました。それからで夕を作りました。父と弟と3でべました」
久志さんも言った。
「僕もずっとにいました。学から帰ってきたのが午5頃です」
黒田警部補はメモを取った。そしてし躊躇してから、慎に尋ねた。
「失礼ですが、奥様との関係は良好でしたか?」
誠さんは驚いた表を浮かべた。
「もちろんです。何か問題があるとでも?」
「そういうではありません。能性を確認しているだけです」
誠さんはく息を吸った。
「妻とは結婚して20です。喧嘩らしい喧嘩をしたこともありません」
恵子さんも言った。
「両親はとても仲が良かったです。母はいつも父のことを切にしていました」
「奥様に悩みのようなものはありませんでしたか」
「悩みですか……」
誠さんは考え込んだ。
「恵子の就職活のことはし配していました。でも、それ以はい当たりません」
黒田警部補はちがった。
「ご協力ありがとうございました。何かいしたことがあれば、すぐに連絡してください」
誠さんはすがるように言った。
「必ず見つけてください」
「全力を尽くします」
その夜、警察署に戻った黒田警部補は、田刑事と2で事件を理した。
「族の証言は致しています。