"消えた退院前夜" 第2話
麻酔が切れるとし痛みがあったが、それも予の範囲内だった。翌にはベッドので体を起こせるようになった。
面会に来た恵子さんが、配そうに母のを握った。
「お母さん、丈夫?」
「ええ、丈夫よ。もうほとんど痛くないわ」
子さんは娘をさせるように笑った。
3目、4目と、子さんの回復は順調だった。廊をゆっくり歩けるようになり、事も普通に取れるようになった。同じ病の患者たちともしずつ話すようになった。
隣のベッドの女性は、よく孫の話をした。
「うちの孫がね、この、幼稚園で絵を描いたのよ」
子さんはそれを聞きながら、目を細めた。
「うちはまだ孫はいないんですけど、いつかそんな話ができるかしら」
病院の常は穏やかだった。
朝6に護師が体温と血圧を測りに来る。7に朝。8頃に医師の回診。午は検査やリハビリがあり、午は自由になる。患者たちはテレビを見たり、本を読んだり、廊を散歩したりして過ごしていた。
527。
退院予定は3の530だった。
子さんはすっかり元気になっていた。
本さんが病に来て、カルテを確認しながら笑った。
「田さん、本当に順調ですね。あと3でご族の元に帰れますよ」
「ええ。く帰りたいです」
子さんはそう答え、窓のに目を向けた。
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病院の裏の公園では、初の々が柔らかく揺れていた。
午、誠さんが面会に来た。
「もうすぐだな」
誠さんはベッド脇の子に腰かけ、妻のを握った。
「ええ。のこと、丈夫だった?」
「ああ。恵子がいろいろやってくれている」
「あの子に負担をかけちゃったわね」
子さんはし申し訳なさそうに笑った。
夕方には恵子さんも来た。母娘は退院の予定を話した。
「お母さん、退院したらしばらくゆっくり休んでね」
「ありがとう。でもあなたの就職活の方が事よ」
「丈夫。面接は来週だから」
2は穏やかに笑いった。
午7、面会が終わった。
「じゃあ、お母さん。また」
「ええ、気をつけてね」
恵子さんは病をた。廊を歩きながら、なんとなく振り返った。窓際のベッドに、母の姿が見えた。子さんはベッドに座り、何か本を読んでいた。
その姿が、恵子さんが最に見た母の姿になった。
その夜、子さんはいつもよりくベッドに入った。同の患者に「今はし疲れました」と話していた。
午9、消灯になり、病のかりが落とされた。本さんが最の見回りに来た。
「田さん、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
子さんのか細い声が聞こえた。
午10、病院は静かになった。廊にはなく、ナースステーションでは夜勤の護師たちがカルテを理していた。
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4部の患者たちも、それぞれ眠りについていた。
窓のには静岡の夜景が広がっていた。灯がぽつぽつとっている。穏やかな5の夜だった。
誰も、それが子さんの最の夜になるとはっていなかった。
528午6、病院に朝が来た。
廊の窓から淡いが差し込み、夜勤けの護師たちが各病を回り始めた。体温測定のだった。眠そうに目をける患者もいれば、すでに起きてテレビのスイッチを入れようとしている患者もいた。
3階の4部に、本さんが入ってきた。
「おはようございます」
いつものるい声だった。
本さんは体温計と血圧計をに、隣のベッドの患者から順番に回った。隣の女性、向かい側の若い女性、その隣の男性。それぞれの数値を確認してカルテに記入していく。
最に、窓際の子さんのベッドへづいた。
「田さん、おはようございます」
返事がなかった。
本さんはし首を傾げた。
「田さん?」
もう1度、しきな声で呼んだ。けれど、やはり返事はない。
本さんはカーテンをけた。
ベッドは空だった。
布団はきれいにえられていた。枕のにも、ベッドのにも、の気配はない。本さんは瞬、目を疑った。
「田さん……?」
病を見回した。子さんの姿はなかった。
最初に考えたのは、トイレだった。
「トイレかしら」
本さんは病をて、廊の先にあるトイレへ向かった。個を1つずつノックした。
「どなたかいらっしゃいますか?」