"消えた五輪候補" 第7話
審査員たちに礼し、演技を始めた。
平均台にがる。
最初の技は成功した。
次の技も成功した。
子の体はリズムに乗っていた。痛みを忘れるほど集していた。
最の技。
バック転からの着。
子はんだ。
空で回転し、へりる。
その瞬、首に激痛がった。
体がぐらつく。
それでも子は歯をいしばり、必にバランスを保った。
なんとか着を成功させた。
審査員たちがメモを取っていた。
子は礼をし、退した。
を引きずらないよう、必にしながらロッカールームに戻った。扉を閉めると、ベンチに座り込んだ。
首の痛みは限界を超えていた。
涙がそうになった。
けれど、まだ泣くわけにはいかなかった。
結果はていない。
子はテーピングを巻き直し、氷でをやした。
しばらくすると、ゆかりがロッカールームに入ってきた。
「子さん、お疲れ様」
「お疲れ様」
「、丈夫? 最、し危なかったわね」
その言葉は、胸に刺さった。
子は何も答えなかった。
午1、すべての選の演技が終わった。審査員たちは別で協議を始めた。結果発表は午3の予定だった。
選たちは待で結果を待っていたが、子はロッカールームに残った。首をやしながら、ベンチに座る。疲れと緊張で、がぼんやりしていた。
そこに、斎藤コーチが入ってきた。
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「、しいいか」
子は顔をげた。
「はい」
斎藤は子の元を見たあと、静かに言った。
「よく頑張ったな。最、が痛かっただろう」
「丈夫です」
子は答えた。
斎藤はしばらく彼女を見つめた。
「結果がどうであれ、おは派だった」
その声は、いつもより優しかった。
斎藤はそれだけ言うと、ロッカールームをていった。
子は1残された。
午3まで、あと1半。
彼女は目を閉じた。
そして、いつのにか眠ってしまった。
疲れ切った体が、限界を迎えていたのだ。
午230分頃、子は誰かが自分を呼ぶ声で目を覚ました。
ロッカールームには誰もいなかった。
だったのかもしれない。
計を見ると、結果発表まであと30分だった。
子はちがり、ロッカーから荷物を取りした。支度をえ、待へ向かおうとロッカールームをた。
しかし、子が待にたどり着くことはなかった。
廊で、彼女はある物と会った。
それが、子が識を保っていた最の瞬だった。
午3。
待に集まった選たちのに、子の姿はなかった。
審査員たちが結果を発表しようと準備していたが、子が来ないことに気づいた。
斎藤コーチが選たちを見回した。
「子はどこだ」
誰も答えなかった。
ゆかりが言った。
「さっきまで、ロッカールームにいましたけど」
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斎藤はスタッフに確認を命じた。
スタッフがロッカールームへった。
しかし、そこに子はいなかった。
荷物も消えていた。
ロッカーも空だった。
まるで最初からそこにいなかったかのように。
斎藤は訓練センターを探させた。
体育館、シャワールーム、トイレ、倉庫、廊。
すべての所を調べた。
それでも子は見つからなかった。
午4、斎藤は警察に連絡した。
オリンピック候補選の1が、訓練センター内で姿を消した。
その報は、すぐにきな事件となった。
警察が訓練センターに到着したのは午5だった。
刑事たちは関係者全員から事を聞いた。
「最にさんを見たのはいつですか」
斎藤コーチは答えた。
「午2頃、ロッカールームで話をしました。そのは普通でした」
「その、誰か見たは」
刑事が選たちに尋ねた。
誰もをげなかった。
父の正司に連絡が入ったのは午6だった。
訓練センターからの話だった。
「さんのお父様ですか。実は、子さんが方になりまして」
正司は最初、が理解できなかった。
「方……どういうことだ」
「午3の結果発表に姿を見せなかったんです。それからずっと探しているのですが」
正司は受話器を握りしめた。が震えていた。
「すぐにく」
話を切ると、コートをつかんでをびした。
訓練センターに到着した正司は、警察に案内された。
刑事が状況を説した。
「午230分頃から3のに姿を消したとわれます。
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