みかん小説
本棚

"十年目の数珠" 第7話

しかし、その取引を裏付ける確な類はなかった。

のせいで80万円を失ったと主張していた吉田が、失踪わずか2かでそれを回るを得ていた。

佐藤警部は、この点にもい疑いを持った。

さらに決定だったのは、俊の部で見つかった跡鑑定だった。

には、誰かに許しを求める内容とともに、「田」という名かれていた。

当初、俊いたものとわれていた。

しかし鑑定の結果、跡は俊のものではなかった。

警察は吉田の跡サンプルを確保し、照した。

結果は驚くべきものだった。

跡と吉田の跡には、かなりの部分で致が見られた。完全に同じではなかったが、いたり、わざと崩したりしたような自然さがあった。特定の文字のき順や形は、吉田の癖と同じだった。

佐藤警部は、ようやく全体の輪郭が見えた気がした。

は犯ではない。

本当の犯は別にいる。

数珠を俊の部に隠し、疑いを僧侶へ向けようとした物。

あの夜、田のことで言い争っていた物。

吉田茂だった。

199511、平成711

警察は吉田を緊急逮捕した。

名古の自宅から連された吉田は、最初はく否定した。

「私は何もしていない。田さんの失踪とは無関係だ」

彼はそう繰り返した。

数珠を俊の部に隠したこともない。

広告

あの夜、田論してもいない。

しかし佐藤警部は、1つずつ証拠を提示した。

女性信者の証言。

198512自然な入

の部から発見された跡。

吉田の顔からしずつ血の気が引いていった。

に佐藤警部は尋ねた。

「なぜ、数珠を俊尚の部に隠したのですか」

吉田は沈黙した。

弁護士は、これ以話すなと止めた。

だが吉田は首を振った。

い沈黙の、彼はゆっくりいた。

19851016、夜11頃。

吉田は眠れずにた。そこで田と会った。田もまた、眠れずにていた。

2は本堂の裏き、話をした。

吉田は、80万円を返してほしいと求した。田が紹介した取引先のせいで損をした。自分も困っている。責任を取ってほしい。

しかし田は、同じ答えを繰り返した。

「私も被害者です。責任は取れません。もありません」

吉田はった。

は事業をしている。寺に来る余裕もある。それなのに、なぜ80万円を返せないのか。

問い詰めると、田はついに本当のことを話した。

自分の会社は倒産寸で、への返済も滞っている。

むしろを貸してほしい。

その言葉を聞いた瞬、吉田のりは頂点に達した。

自分に損をさせた相が、今度はを貸してほしいと言っている。

論は激しくなった。

が吉田を押した。

吉田も押し返した。

広告

その瞬、田がもつれた。

ろへ倒れ、を岩にぶつけた。

鈍い音がした。

はそのままかなくなった。

吉田は慌てて田の肩を揺さぶった。

「田さん」

返事はなかった。

脈もじられなかった。

んでいるように見えた。

吉田は恐怖に震えた。

事故だった。

だが、誰が信じてくれるだろう。

のことで言い争い、その直に田んだ。自分が殺したとわれるのはらかだった。

吉田は、とっさに隠すことを決めた。

の遺体を、寺から1kmほどれたへ運んだ。何度も休み、息を切らしながら、暗いを引きずっていった。底の岩の隙に遺体を隠し、の枝とで覆った。

戻る途、田の持ち物のに数珠があることに気づいた。

捨てるだけではだった。

そこでい浮かんだのが、俊だった。

に田と話していた。朝にも田とすれ違ったと証言する能性がある。もし事件になれば、疑いを向けるには都がよかった。

吉田はこっそり俊の部へ入り、に数珠を隠した。

そして、自分がいた許しを求める緒に入れた。

に俊が疑われるようにするためだった。

翌朝、吉田は何もなかったように振るった。

を探すふりをし、捜索にも加わった。

さらに、朝4半に寺の裏で田らしきを見たと嘘の証言をした。

皆の関を、田が自分からへ入った方向に向けるためだった。

吉田は10、その秘密を抱えてきた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: