"録音機が暴いた義実家" 第4話
涯孤独のとなった彼女には、お盆や正に「ただいま」と帰るべき実という所が、どこにもしなかったのだ。
だからこそ、7に私と結婚した、弓は誰よりもこのしい族のをの底からんでくれた。結婚式の夜、ホテルの部のいベッドので、私の胸に顔を埋めながら、弓は子供のように声をげて嬉し泣きをしていたのだ。 「たかし君のお父さんとお母さんが、私のことも本当の娘みたいに温かく迎えてくれて、すっごく嬉しい……。美穂さんも優しくて、私、ずっと1ぼっちだったから、やっと温かい族ができたよ……」
その純粋な涙の温もりを胸にじながら、私はこの笑顔を絶対に守り抜こうと、に固く誓ったはずだった。
その言葉通り、弓は私の実に対して、本当に献に尽くし続けてくれた。母の浩子の誕や母のには、必ず彼女の好みの束を選び、きの丁寧なを添えて送った。お盆や正に実へ帰るは、誰よりもく起きて台所にち、夜遅くまでちっぱなしのまま、親戚たちの接待や量の皿洗いを笑顔でこなしていた。
特に、弓の優しさが現れていたのは、昨、父の雄が軽い疾患で2週ほど入院したのことだった。弓は誰に頼まれたわけでもないのに、本へって塩分控えめのシニア向けレシピ本を何冊も買い込んできた。
広告
そして、退院したの父の体を気遣い、毎週末、作りの減塩おかずを何種類もタッパーに詰め、で1かかる実へと自らハンドルを握って通い続けていたのだ。
さなナナを連れてのの運転と、の込んだ料理の準備。それは、決して楽なことではなかったはずだ。それでも弓は、私に対して切の愚痴をこぼさなかった。実に着くと、母の浩子は私の顔を見るたびに、弓のを両で包み込み、げさなくらいの謝の言葉をにしていた。 「ゆみさんのおかげで、お父さんの血圧もすっかり定しているわ。ゆみさんは本当に気が利く、私たちの自のお嫁さんよ」
同居している妹の美穂も、台所で弓の横に並び、のいい笑顔を振り撒いていた。 「お義姉さんの料理、本当に美しいです! 私にも作り方を教えてくださいよ」
私はその温かい景を見るたびに、の底からし、目を細めてんでいたのだ。 「弓、本当にありがとうな。俺の族とこんなに仲良くしてくれて、俺は本当に幸せ者だよ」 私が助席の彼女に向かって無邪気にそう言うたび、弓はしだけはにかむようにして笑い、静かに答えていた。 「うん……私の方こそ、本当の族ができて幸せだよ」
私は、弓のその言葉の裏にある痛みに、何ひとつ気づいていなかった。自分の母親は優しくて素直なであり、妹は当たりの良い子で、妻はいやりに溢れている。
広告
嫁姑問題など、うちの族には無縁の綺麗な話だと、本気で信じ込んでいたのだ。
しかし今えば、あの私の「族みんなで仲良く」という、独りよがりで押し付けがましい理の言葉こそが、弓を実に縛りつける呪いの鎖になっていたのだ。
孤児として育ち、族のぬくもりを誰よりも渇望していた弓。そんな彼女にとって、私がぶ「族の平穏」を、自分ので壊すことは何よりも恐ろしいことだったに違いない。もし、自分が義理の族から酷いいじめを受けていると打ちければ、する夫をしませてしまう。夫と母親を対させてしまう。自分がさえすれば、この平な常は守られる。夫の笑顔を奪いたくない。
弓はきっと、毎のようにそう自分に言い聞かせ、たった1で暗ので耐え忍んできたのだ。夜の洗面所で、声をさずに泣き崩れるまで、彼女は私のためにをすり減らし続けていた。それに気づかず、脳気に「良い族だ」と笑っていた自分が、今はたまらなく憎かった。
私はなんて愚かで、無責任な夫だったのだろう。弓を番守るべきが、実という処刑台へ彼女を連し、番追い詰めていたのだ。 「……パパ、おに着いた?」
部座席から聞こえた、ナナの眠そうな声で、私はハッとに返った。いつのにかは、見慣れた自宅の駐に滑り込んでいた。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
福嫁の逆転茶屋
江戸の日本橋にある茶屋「泡雪屋」の若旦那・宗介は、店の立て直しのため、評判の商人・泉屋五兵衛の娘を妻に迎えることになる。 宗介が望んでいたのは、江戸でも噂になるほど美しい姉・お花だった。美しい女将がいれば、傾きかけた店にも客が戻る。そう信じていたからだ。 しかし、五兵衛が宗介に差し出したのは、お花ではなく、ふくよかで目立たない妹・福だった。 祝言の日、客たちは陰で笑い、宗介自身も心のどこかで落胆を隠せなかった。だが、福が作る菓子と入れる茶は、少しずつ泡雪屋の空気を変えていく。 派手ではないのに忘れられない味。人の心の奥にしまわれた記憶を呼び起こす菓子。福は、宗介が見落としていた“商いで本当に大切なもの”を静かに見せていく。 やがて泡雪屋は、思いがけない形で評判を取り戻していく。 なぜ、泉屋五兵衛は美しい姉ではなく、福を宗介に嫁がせたのか。 そして若旦那が、かつて落胆した嫁に深く頭を下げることになった理由とは――。嫁姑|夫婦1.9萬字5 23 -
完結第14話
35万円の空冷蔵庫
大晦日、妻の弓が35万円かけて用意した正月料理が、冷蔵庫から一つ残らず消えていた。 持ち去ったのは、夫・健一の母と弟。松阪牛、タラバガニ、有名料亭のおせちまで奪いながら、彼らは笑ってこう言い残す。 「明日はカップ麺でも食べてなさい」 20年間、“長男の嫁”として姑に尽くし続けてきた弓。いつか本当の家族として認めてもらえると信じ、理不尽な仕打ちにも耐えてきた。 しかし、その夜、健一は知ってしまう。食材を奪っただけでは終わらない、母と弟が5年前から隠し続けていた金の秘密を。 元日の新年会。食卓に並んだのは、豪華な料理ではなく一箱のうどんだけ。 だが、襖の向こうには親戚たちが集まり、20年間隠されてきた佐藤家の本性を静かに聞いていた――。兄弟姉妹|夫婦2.1萬字5 1318 -
完結第13話
十六歳の毒薬花嫁
江戸中期、奥州郡山の大店・高野家には、余命三月と告げられた若旦那・湊がいた。 歩くこともままならず、医者からは「春までもたぬ」と見放された男。誰も嫁ぎ手など現れないと思われたその家の門を、ある冬の朝、十六歳の娘・凛が一人で叩く。 「三月なら三月、三日なら三日でも構いません」 そう言って自ら若旦那の嫁になった凛だったが、彼女には誰にも明かしていない目的があった。 苦くないはずのない薬。帳簿に増え続ける不自然な数字。井戸へ捨てられた父の形見。 病とされていた若旦那の命、罪人にされた父の名、そして大店に二十一年隠されてきた嘘。 十六歳の娘が嫁いだ本当の理由が明らかになる時、高野家の運命は大きく変わり始める。夫婦2.0萬字5 15 -
完結第14話
銀行にいた偽妻
60歳の斎藤かよ子は、夫・剣一を大阪出張へ送り出したはずだった。 しかし午前11時17分、銀行から一本の電話が入る。 「ご主人が、奥様と同じ名前の若い女性と一緒に来店されています」 その女性は、かよ子の名前を名乗り、住所や生年月日、家族の情報まで正確に答えていた。しかも夫は、その女を自分の妻として銀行に紹介し、かよ子名義の資産に関わる重要な手続きを進めようとしていた。 ただの浮気ではない。夫は、かよ子の服装、癖、署名、人生の記録までも利用し、“もう1人の妻”を作り上げていた。 37年間信じてきた夫が、本当に奪おうとしていたものは財産だけだったのか。 そして、何も知らない妻を演じ続けたかよ子が、最後に銀行で見せた反撃とは――。人生逆転|夫婦2.1萬字5 624 -
完結第10話
消された妻の逆転乾杯
夫の昇進祝いの宴席で、佐木美和は信じられない光景を目にする。 35年間連れ添ってきた夫・孝志が、120人の招待客の前で、若い愛人を「妻です」と紹介したのだ。 本当の妻である美和は、会場の端の席に座らされ、まるで無関係な招待客の一人のように扱われていた。夫からは事前に「今日だけは黙っていろ」と言われていた。 けれど、美和は怒鳴らなかった。 ただ静かにグラスを持ち上げ、夫と愛人に向かって乾杯した。 なぜなら彼女は、17年間にわたって夫が奪い続けてきた功績、不正に使われた経費、そして自分の名前を消された証拠を、すでに会長へ渡していたからだ。 祝福の拍手が響く中、会長がゆっくりと立ち上がる。 「佐木君。今の紹介で、最後の確認が取れた」 その一言で、夫の栄光の夜は、崩壊の始まりへと変わっていく――。夫婦|第二の人生|不倫1.4萬字5 834 -
完結第14話
身代わり妻の逆転帰還
夫の代わりに罪を被り、2年間刑務所で耐え続けた佐藤由美。 亡き父が残した会社を守るため、そして夫・健一を信じるために、彼女はすべてを背負った。だが出所の日、ようやく帰った家で待っていたのは、姑の平手打ちと、夫から投げつけられた離婚届、そして若い愛人の勝ち誇った笑みだった。 「前科者のくせに、まだうちの息子と暮らす気なの?」 すべてを失ったように見えた由美は、泣き崩れることなく、ただ一本の電話をかける。 刑務所で出会った一人の女性。亡き父が残していた最後の言葉。仏壇の下に隠されたUSBメモリ。 2年前の事件は、本当に由美の罪だったのか。 翌日から、夫と愛人、そして由美を切り捨てた家族の嘘が、静かに崩れ始める――。嫁姑|夫婦2.1萬字5 359 -
完結第10話
「子なし」離婚の大誤算
離婚届に署名した日、木村さゆのお腹には、まだ誰にも知られていない3か月の命があった。 夫・渡辺健二は初恋の女性との再婚に夢中で、離婚協議書には「婚姻中の子なし」と記されていた。さゆは妊娠を告げることなく、静かに名前を書き、夫の前から姿を消す。 それから10年。 さゆは一人で息子・陸を育てながら、写真館「時」を成功させ、母としても写真家としても自分の人生を築いていた。 しかし、陸の卒業式の日、思いがけず健二と再会する。 壇上で花束を渡す陸の顔を見た瞬間、健二は凍りついた。目元、鼻筋、横顔――そこには、10年前に自分が切り捨てたはずの結婚の答えがあった。 失われた10年は、金で取り戻せるのか。 父親を名乗る資格とは何か。 初恋を選んだ男が、初めて自分の過ちと向き合う時、さゆと陸が選ぶ未来とは――。人生逆転|夫婦1.5萬字5 192 -
完結第12話
午前3時の離婚届
午前3時17分。夫・俊介は帰ってこなかった。 その夜、日本へ戻ってきていたのは、夫の“初恋の女性”だと思っていた田中雪。彼女のSNSには、高層ホテルの夜景、二つのワイングラス、そして私が夫に贈ったはずの腕時計が写っていた。 3年間、木村家の嫁として髪も服も仕事も変え、良い妻になろうとしてきた私。けれど夫が本当に優しくしていた相手は、私ではなかったのかもしれない。 そう思った朝、私は義母に離婚届を差し出し、1億2000万円を受け取って家を出た。 だが数日後、夫は離婚届を握りしめ、泣きながら私を捜し始める。 初恋の女性、隠された写真、失くしたはずのブレスレット。 私たちの結婚は、本当に嘘から始まっていたのか――。嫁姑|不倫1.8萬字5 510