"赤いドレスの代償" 第22話
「あのふざけた女が……! 俺を騙して、俺の会社のまでの男に貢いでいた挙げ句、逃げようとしたのか!」 健は両で顔を覆い、畳に爪をてた。
「でも、美さんが本当に恐ろしいのはここからです」 私はさらにたい事実を彼に突きつけた。 「警察の取り調べに対し、美さんは泣き崩れながらこう供述しているそうです。『私は悪くありません! 帳簿の改ざんも現の引きしも、すべて社である健に命令されてやったことです! 社が奥様にられずに財産を隠すために、私を脅してやらせたんです』とな」 「う、嘘だ! あの女が勝にやったことだ! 俺は何も命令してない!」
健は顔を真っ赤にしてちがろうとしたが、に力が入らず、無惨に畳のを転がった。 「俺が命令した証拠なんてどこにもない! あの女の嘘だ!」 彼が必に叫ぶ姿を見ろしながら、私はい溜め息をついた。 「本当に似た者同士ですね、あなたたちは」
私の静かな声に、健の叫び声がピタリと止まった。 「自分が追い詰められたら、平気でパートナーを犯罪者に仕てげ、すべての責任を押し付けて自分だけ逃げようとする。あなたが私を借の連帯保証にして、すべてを押し付けようとしたのと同じように、美さんもまた、あなたを代わりにして逃げようとした。
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ただそれだけのことです」
健の顔からみるみるうちに血の気が引いていく。彼はようやく、自分がどれほど恐ろしい沼にを踏み入れているのかを理解し始めたのだ。 「警察はすでに、あなたの会社の裏帳簿や資の流れを完全に把握しています。美さんの供述が嘘であったとしても、社であるあなたが横領や資隠しに気づいていなかったとは考えにくい。さらに、私に無断で実印を使い、融資の契約を偽造した、印私文偽造の証拠も、すでに弁護士を通じて警察に提されています」
「て、提した……?」 健の唇がガタガタと震え始めた。 「待ってくれ、弓、嘘だろう……? 警察に証拠をしたって、それじゃ俺は……俺は逮捕されるのか……!?」 「当然です。会社の横領、文の偽造、そしてに対する詐欺。これだけの証拠が揃っていて、警察がかないはずがありません。あなたはもう、逃げることはできないんです」
その瞬、健の張り詰めていた虚栄の糸が、完全にプツりと切れた。彼はどさりと畳に膝をつき、そのままつんいになって私に向かってすり寄ってきた。そして私の元にすがりつき、額を畳に激しく擦りつけた。 「弓! 悪かった! 俺が悪かった! 俺が全部違っていた!」 それは、今までは妻を「ただ飯い」「役たずの専業主婦」と見し続けてきた男の、あまりにも無様でれな座だった。
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「許してくれ! 警察に言うのだけは待ってくれ、頼む! おが被害届を取りげてくれたら、偽造の件はどうにかなるはずだ! 美には騙されていたんだ、俺は本当はおだけをしていたんだ!」 涙とで顔をぐしゃぐしゃにしながら、健は必に命乞いをした。 「おにはお袋が残してくれた5000万円があるじゃないか! そのおで会社の借を返してくれ! 佐藤会にも頼んでくれよ、おがをげれば会だって借をチャラにしてくれるはずだ! 俺たち、26も連れ添った夫婦じゃないか、なあ、頼むよ、弓!」
彼から発せられる言葉のすべてが自分勝で、計算く、そして絶望なまでに醜かった。自分の罪を棚にげ、私がにした義母の遺産と佐藤会との繋がりを利用して助かろうとしているのだ。私はすがりつく健のを、たく、そして静かに振り払った。 「ふふ……」 私は彼の言葉を反芻するように呟いた。 「あなたが私を『妻』だとったことが、この数で1度でもありましたか?」
健ははっと息を呑み、顔をげた。私の目にはもう、彼に対するもけも1ミリたりとも残っていなかった。ただ、傍のを見るような、たく乾いたがあるだけだった。 「をして寝込んでいる私に『寄りの世話もできないのか』と吐き捨てた夜。
私が内職をして買った菜々のオルゴールを『ゴミだ』と言って蹴り壊した夜。
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